48がぉーと言う生物
お世話になったパプリカ村を出た。
私は大変みたい。
そういうもんかなぁ?
……確かに今回は苦手なゴブリンを相手に結構、なかなか、いや凄く頑張った。
って思うけど……あれだけ苦手だったゴブリンに対して、なんで突然大丈夫になったのかは私も良く解らないんだよね。
こみ上げる胃液のような感覚はあったけど抑えられた。
吐くほどに苦手だったのにね。
でもそれはそれで自信になった。
怖いものを、苦手を克服出来た気がする。
あれだけ無理ゲーしてたのになぁ。
ホント不思議だね。
「しっかし、二人とも持ってるなぁー。マーメイドウルフの次はゴブリンプリンスかぁー。次はドラゴンか何かやないん?」
「いやいや、グラ子さん、そんなフラグみたいに言うの止めて下さい。その種は人間の手に余ります。ねェ朋ちゃん?」
「ドラゴンかぁー見てみたいなぁー。強いんだろうねー。がぉーとか言いそうだし、ああああ、これかぁ、これが姉さんの言ってたロマンだ! そうだよロマンなんだよ夕顔ちゃん!」
「がぉーは言わないんじゃ? それはおとぎ話とかにある怪獣って奴じゃない?」
「せやな、がぉー言う生物見たこと無いわ、うちも……。ホントにいるのかね、そんな生物、猫とかはシャーとか、いうでな」
「何かがぉーじゃ可愛いよ、朋ちゃん。でもドラゴンにロマンっていうのは少しは解るかなぁ」
「いやいや、目の前にドラゴンおったらちびるで! ロマン所じゃ無いで! 美味しく食われるで!」
「人も食べちゃうのかなぁ、ドラゴンって。それは怖いなぁー」
「食べられちゃうのは嫌だよね。火とかも吹くみたいだし」
「この世は弱肉強食なんやで! 良く聞く話でな、動物とか魚とか見て美味しそうって思うかって事やねんて。勿論、調理前やで」
「あぁー。そういう事ね。確かにそう思う人はいそうだね」
「えぇー。そうなの? ……でもそれが生きるって事なのかもって考えるとそうかもって思っちゃう」
「だから男にも気を付けなー。美味しく食べられちゃうでー。男はみんなオオカミだからってオチやね」
「今回ので私は狼よりゴブリンの方が怖いんじゃないのかなって思ったけどね、何か酷いことも一杯言ってたし……」
「そうだね。私も結構な事、言われた気がするよ。爪立ててやるーって。だから男はみんなゴブリンじゃなくて良かったよ」
「そいえば朋ちゃん。ゴブリン大丈夫だったん?」
「うん。何故か大丈夫だったよ。私にも良く解らないんだけどね。気持ちが悪くはなるんだけど抑えられたの」
「へェー。あんなにゲーしてたのに」
「……単純に慣れた、とかも考えられるで」
「どうなんだろうね。でも当分ゴブリンはいいよ。プリンスちゃんには何時かリベンジしたいけどね」
「…………別に負けては無いんじゃないの?」
「ん。そうなんだけど、しっかりと勝ちたかったんだ。これは私の欲かも……」
「そういうのもええな」
「ふーん。私はもうアイツと会いたくない。一瞬でも絶望してしまったし、今、此処にいるのが奇跡の様にも考えられるもの。災害レベルA+だよ?」
「そう考えちゃうとそうなんだけどね。負けてたら嫁にされてお尻を引っ掻くっていわれたし………」
「あは、なんやねんそれ……」
「やだやだ。これだからゴブリンは……」
そんな感じで道中はお喋りが止まらない。
気がついたらもうサラダエクレアが見えていた。
うーん、着くのが早くない?
まだ十分ぐらいしか歩いてない気までするね、それは言い過ぎかな。
とりあえずサラダエクレアに着いて初めに冒険者ギルドへと向かった。
グラ子さんに一応報告入れるから付いてきてやーって感じで。
多分今日は何も無いけどって話してたね。
ギルドに着き定位置の様な五番カウンターへと向かう。
グラ子さんはギルドマスターへ報告しに行ったみたい。
しばらくするとグラ子さんは戻ってきた。
少し長かったなぁ。
「ギルマスから幾つか指示貰ったから話せる所だけ話すわ」
「うんうん」
「えっとな。とりあえず、今回の報酬についてはギルドの規定により最高報酬が出る事になったんや。でもこの最高報酬ってのは微妙な所でな、ランクに付随するんよ」
「…………なるほど」
「んでな、朋ちゃん。と夕顔ちゃんはまだランク外やねん。まぁ、そこはってな感じでFランクの最高報酬と同じだけでも微妙なので付加価値を付けるとの事やで」
「付加価値、良いね何か美味しそう……って事は今回のはやっぱり結構な難易度になっちゃったの?」
「せやな。なんせゴブリンプリンスやからなぁ…………災害レベルはA+だから、もうそれだけでAランクはあるんや。今回の依頼はな……討伐出来なかったとしても村人に被害無しの功績は大きい。てなかんじで計算した結果、一人十万クアレットとなったんや。それと図書館の閲覧。ランクをC以上の所までの閲覧を可能とする。そいでランクはFに昇格。更に基本Eランク以上からの初級ダンジョンへの道の開放の推薦状と…………わーった。ふかひれ食べに行こう」
「わーい。美味しそう。知らんけど……」
「知らんのかい! うちもやけど」
「うちの偽物がおるで! それも二人もや! もう誰が誰やか解らんやねんかー」
「「あはははは」」
「ねんがんの図書館開放だ。これで召喚出来る子が増えるかも!」
「宿代の心配が当分は無くなった。しかもFランクとダンジョンまで!」
「「ありがとうグラ子さん」」
「いやいや、うちは何もしてないし、今回はそれ位の功績やったんや」
「……ちなみに討伐してたらどうなったの?」
「あー。それは気になるね……」
「…………それな。うちも知らんのやけど今までの規定とかに合わせると安くても二百万から三百万クアレットぐらいの価値はあると思うけどな。多分それぐらいの価値。お金でも中々買えない物とか権利とかまで貰える可能性もあるけどな」
「なるほどねー。逃した魚は大きかったか」
「実際どうだった? もう少しで倒せそうだった? 朋ちゃん」
「んんー。多分厳しかったかな。私ももう限界だった。夕顔ちゃん達が後少し来るの遅れてたら、私はお持ち帰りされていたかも知れないし……」
「そかー。ギリギリだったんやな」
「あれは恐怖だよ……」
「ゆ、夕顔ちゃんがトラウマになってる……」
「あの絶望は恐らく本のせいでもあるんだよ」
「あ、それってアレやろ? ええと……『ゴブリンに捕まった者達』やろ?」
「それってこの前、大人な夕顔ちゃんが話していたやつだ!」
「う、うん。それだよ、グラ子さん」
「あの本はベストセラーやからなぁ……あんなにピーなのになぁ……」
「グラ子さんも読んだことあるの?」
「そりゃーうち大人やし……」
「……ねぇ、どんな話なの?」
「こんな所で話せるかー!」
周りを見ると皆んな聞き耳を立てている気がした…………。
……そうだねこんな所で話す内容では無い様だよう。
その場を離れる様に私とグラ子さんと夕顔ちゃん皆んなでさっき話をしていた、ふかひれって料理を食べに行った。まぁ確かに美味しかったけど、んー。私にはまだ早い味だったのかも知れないよ。
その後お開きとなったんだけど夕顔ちゃんはグラ子さんに話があるらしく夜の街へと二人で消えていった。二人ともおとなだ……私はもうおねむ。
あんまり長い時間起きてられないんだよね、昔から。
仕方ないね。
久々に宿へ帰ってお休みだよ。ふぁー…………。
◇◇◇◇
「んじゃ、何頼む?」
「ええと、今日は……イチゴナッシュで」
「ほな私はオレンジナッシュにしよかな…………」
「今日は何時も行ってたお茶屋さん休みでしたね」
「うん。何か近いうちに閉めるって聞いた気がするで」
「そうなんですか、結構流行ってる様に見えたけど……」
「せやなぁ……他の理由も考えられるからまぁ、何とも言えないかな。…………今日はどうしたんや?」
「ええと、何時も通りというか、今回も結構、私…………自信無くしちゃって。朋ちゃんにはやっぱり助けられて、敵には全然魔法効かなくて。何も出来なくて……どうすれば良いのだろう私、って思っちゃってグラ子さんに相談したくって、すみません…………」
「まぁ、今回のは話した通りでもあるんだけどな、ゴブリンプリンスや。相手が悪い。この国の上位、数パーセントやね、相手になる猛者は。……きっと今回のクエストを生き残る事が出来たのは恐らく数人から数十人程度だと思うで……二人で相手したんやからの。…………そういう意味では運が良かった。そういう事なんやで」
「そうですね。確かに今回ゴブリンプリンスに捕まった時……絶望しました。もう私、終わりなんだって、こんなにあっけなく終わりって来るんだなぁって……。確かにあの本の影響もあるけど。でも、あの本の内容は限りなく真実ですよね?」
「そやな……私もそう聞いとる。ほぼ毎日、代わる代わるやね。あれはきっと生き地獄や、死んだ方がマシって言葉も出とったしな。絶望の果てを知ることが出来るらしいな」
「そんなの、知りたくない」
「だからゴブリンは特に怖いんやで……簡単には死ねない。まぁ、実際の所は知らんけどな……」
「私は……朋ちゃん程の魔法の才能が無い。これは……事実です。もしも、朋ちゃんとこれからも一緒に冒険していくならって考えた時。私、このままで良いのかなって思っちゃって」
「…………夕顔ちゃんはやっぱ真面目やなぁ」
「っ、そうですよっ。仕方ないじゃないですか、そう考えても」
「そりゃ、そうなんだけどな。んー。そっか、夕顔ちゃんの中で結構、朋ちゃんが大きくなってるんだろうなぁ……」
「存在が大きいし、大きく見えます。あれだけ凄いと自分との比較もしちゃうし……」
「そか…………。まぁ、魔法使いの分野で朋ちゃんに対抗するのは正直難しいと思う。でもな、夕顔ちゃんに出来て朋ちゃんに出来ない事もあると思うで」
「…………確かに朋ちゃんは回復が使えないって言ってました。魔女の弊害みたいな感じで話してました」
「そういう事なんやで。後は今回は倒せていたみたいだけど、ゴブリンはまだ苦手やろなぁ……」
「………………」
「人間は得手不得手あって当たり前なんやで、でも得意な事もあるはずでな、夕顔ちゃんはまだ得意な事が見つかってないだけかもしれんし」
「……そうかもしれませんね」
「誰もが自分のスタイルってもんを時間を掛けて確立していくって古参の戦士が言ってたで…………足掻いて行くしか無いなぁ」
「自分のスタイル……確かに、朋ちゃんは魔法が得意な筈なんだけど、古代召喚術をメインにしたいって話していたかも……」
「夕顔ちゃんも自分のスタイルを探すとええかもしれんな…………」
グラ子さんに相談に乗ってもらい少しすっきりした気がする。
私が魔法使いを目指したのは多分、家族の影響。
回復魔法は偶々隣のお姉ちゃんに教わったもの。
他には観測者……学校に行ってからって思ってたけど、少し観測者を練習していこうかな…………もしかしたら、道が見えるかも知れないし。
そうすれば、自分でスタイルも選べるよね。
そうだよね、こんな感じで行ってみよう、後は…………真面目すぎる、か。そっかー。




