47戦いを終えて
「おまたせ。朋ちゃん……」
「ゆ、夕顔ちゃんー。会いたかったよぉー。わーん」
そこには凄く急いで来てくれた様子の息を切らせて肩で息をしている。
待ちに待ち焦がれた夕顔ちゃんがいた。
ゆっ、夢じゃ、無いよね? ホントに……夕顔ちゃん、夕顔ちゃんだぁー。
「随分と、待たせちゃったね。ごめんね」
「うぅー。辛かったよぉー。プリンスちゃん強いよー」
「うわー。またアイツ来てるの? あぁ、あそこで……あれ、大分、よろけてるね」
「ググ、クソッ。何時か、嫁にしてヤル……」
「あっ。逃げた…………」
他のゴブリンもそれを期に一斉に逃げ出した。
声が聞こえる方を見てみると冒険者達が凄い数、何百人いるんだろ。
追撃するぞーと言う声がそこら中から聞こえる。
そんな中、知った顔が見え、目が合った。
「ふー。無事やった様やの。良かったな、夕顔ちゃん」
「うん。良かった。間に合った」
「グラ子さん…………何か、こんな所まで出てくるなんて、ありがとー」
「せやで! 引きこもりの私がこんな遠征かなりのレアやねんから。頑張ったんやでーホンマに……あ、あかん、姉様が呼んでる。ほなまた後でな」
グラ子さんが向かう先を見るとクールビューティーなグラ子さんのお姉さんも来ていた。
「朋ちゃん。……結構無理したんじゃ無いの?」
「うん。ちょっとしちゃったかも……」
夕顔ちゃんが回復魔法を掛けてくれた。
身体の擦り傷とかが治癒されていく。
「私も気が気でなかったよ。やっぱあのプリンスちゃんがアレだったし、凄い数のゴブリンだったし」
「あ、村の人は無事かな?」
「うん。途中で会って、サラダエクレアへそのまま向かってもらったよ。これから此処はゴブリンの住処調査の拠点となるんだってさ、国の偉い人も動いてくれたみたい」
「流石、夕顔ちゃん。信じてたよ!」
「うん。私もだよ!」
がっしと夕顔ちゃんと抱きしめ合った。
私も頑張ってたけどホント、心細かったんだよ。
ゴブリンだし。
もう後は他の人に任せよう。
今の私ではプリンスちゃんは倒せない。
もっと強くならないと…………でもプリンスちゃん強すぎ。
あれ反則じゃないの? まったくもう。
その後夕顔ちゃんとも話して今晩一晩だけ泊まってから明日クールビューティーさんに報告を入れて、グラ子さんも帰るって言ってたから一緒に帰ろうって感じになった。
あーもう。今日も、くたくただよ。
全てアイツのせいだ、今度会うときまでに絶対に倒せる様になっておくんだからね!
今日はもうお終い。
お風呂に入ってから夕顔ちゃんと一緒に寝た。
おやすみ私、また明日。
「高等魔術の一部までが開放されました」
『ふー。中々の接戦だったな。手を出そうか出すまいか、悩み所の場面が結構あったけど、手を出さなくて良かった。成長度が違うからな、修羅場をくぐると……』
『んー。多分ゴブリンプリンスちゃんの方が強かったのかね。朋ちゃんより。でもそういう事もこれからも結構あるだろ。そんな意図を感じるし』
『次は勝って貰いたいね、圧倒的な力の差で。あー圧倒的って言うとおばちゃんを思い出すな。もう懐かしいレベルの昔話に感じるぜ……元気にしてるかな』
『そいえばログに高等魔術が開放って出ていたな。どれどれ…………おー。色々増えてるな。練習しとくか。良いね、やることが増えたよ』
『でも、最近何か視線を感じるんだよな……誰かに見られてる的な感じ。俺は朋ちゃんや夕顔ちゃんを見てるのに対してその後ろから俺までも見られている感覚なんよな』
『気配も薄いけどある。誰かね、一体……恥ずかしがり屋さんだなぁ……もう』
『そろそろ来そうだけどな…………待ってるかね』
深夜、丑三つ時に差し掛かる頃――――――――
「すーすー。ネズミが一番、うしさん二ばん。あふぁー三番は誰だっけェ? すやぁー」
「うふふふ。今ならなんとー、さんじゅうえんのお買い得だよ、わーいありあとー。ん? えんってなーに?」
たーたたか、たんたたた、たーたん。
とビルの上まで外から登らなければいけない気がする音楽がお外で鳴っている。ヘリはまだなのー? ふぁーむにゃむにゃ。
朋ちゃポイントを手に入れました。
Tポイント(朋ちゃんポイント)を使用しますかY/N
『来たか。今回は何があるかねー』
朋ちゃんの身体的大ダメージを一回だけ肩代わりする(エリクサー的な何か。他にも使えるかも)
朋ちゃんに話しかけることが出来る。睡眠時ね(一日三分間ぐらい)
朋ちゃんの思考を誘導する(口八丁で捌け。上手くいけば誘導成功)
朋ちゃんとレトロゲームを楽しむ二(おじさんとムーン○レスタでもどうだい?)
朋ちゃんの中に隠れている子をあぶり出す(まだ隠れていたいんだってさ)
朋ちゃんと夕顔ちゃんにASMRで癒やしてもらう。
朋ちゃんと○○さんごっこをする(スタンダードはお医者さん)
○○○○ちゃんのコンポーネントを生成していく(エンドコンテンツ。異世界へ旅立たせろ)
『今回はーっと、何々、んーと、あぁ、気になってたのがあるな。やっぱ誰かいるんだな。でももう少し待つか。選べるけど…………今回はコレだな』
『ぽちっとな』
『これで少しは憂いが無くなるな。でも気になる文言だな、肩代わりって……ですよねー的な感じだろうな。まぁしゃーない。宿主状態だし仕方ないね』
『何か他にも気になる物が追加されたな。そう、ごっこ遊びだいや違うだろ。エンドコンテンツ…………本当に生成出来るのか怪しいな、課金しろとかじゃね最終的には』
『しっかし、夕顔ちゃんまで出張かよ。その内グラ子さんとかも出てくるのか? 企業の様な努力が凄いね』
『とりあえず魔法の種類が増えたし遊んでるかねー』
「こけーこっこ。クッククーデレデー。あふ。ほえ? もうあさぁー」
「すやすや、朝ごはんはたまごかけ、あれぇ。ご飯がないよぉー」
んー。よく寝た。
昨日も結構、頑張ったからぐっすりだった。
夕顔ちゃんはまだ隣で寝ているよ、お腹が空いているのかしら……。
今日はええっとね。帰るんだっけ。確か……。
「ふぁー。あ、どもちゃんおはよぉー……」
「夕顔ちゃんおはよ。まだ眠そうだね……」
「うん、もう少し……」
「先に起きてるね」
「ふぁい……」
朝ごはんー。
皆んな避難しちゃってるから今日は何も無いんだよね……。
グラ子さんに相談してみよう。
てくてくと外に出て村の様子を見ていると誰もいない。
皆んな避難しちゃってるから今、此処に残っているのは冒険者ギルドで調査の仕事関係を受けた人だけなんだよね。
昨日までは結構な数の人がいたんだけど、夕方過ぎにサラダエクレアへ帰っちゃったんだよね、殆ど。
グラ子さんは村長さん宅の一室に泊まるって言ってたかな。
村長さん宅の入り口をノックすると中から声が聞こえた。
あいてるでーって、グラ子さんだね。
「グラ子さんおはよー」
「おー朋ちゃん。おはよう」
「えっと、朝から相談なんですが……」
「ん、どしたん?」
「朝ご飯が無くて……」
「…………あー。そかそか、村の人、皆んな避難してもうたからなぁー。わぁった。いま丁度作ってるから十分待っててや、用意するわ」
「ありがとうございます、あ、私も手伝います……」
「ええからええから、その辺座っててや」
グラ子さんはキッチンへと行ってしまった。
此処からだと微妙に見えない。
時折、何かを調理する音が聞こえる……多分料理も上手そう。
食べるのも大好きみたいだし。
「んー」
「出来たでー」
「おおー流石グラ子さん」
「まぁ、姉様が持ってきた食材だから、んー。口の方を合わせたってや」
「へぇー。いただきますね」
「入れ物は使い捨てだから捨ててーな」
「はい」
「ああそうやわ。二時間後に此処にもっかいきてな、昨日の事話してーな、それからサラダエクレアへ一緒に戻ろう」
「はい。わかりました。では、二時間後に……」
昨日は大変だったなぁー。
グラ子さんから聞いた話だと結局、冒険者ギルドから依頼された強めの傭兵さんが二百人来ていて、ゴブリン達を追撃で一千体程倒したみたいだし。
崖の所、入り口が狭くて詰まってたって話は面白いよね。
でもそこでの反撃が強くなってそんな結果って感じみたい。
こちらの被害も三十人ほどが何らかの怪我をしたみたいで、五人が結構強めの怪我、命には別状無かったみたい。
これは勝利。
大勝利なんだろうけどね。
腑に落ちないのは私がプリンスちゃんを仕留められなかったからかなぁ、やっぱ。
「よっと……」
家に戻って扉を器用に開けた私。なお両手は塞がっている。乙女の秘密だよ。
「あ、朋ちゃん……何処へ行ったのかと思ったよー」
「夕顔ちゃん起きたね。もう一度おはよう」
「あは、おはよう」
「えっとね、ごはんが無かったからグラ子さんに相談したら、朝ごはん作ってくれたよ」
「わー。それはそれは。おなか空いたー」
「うん。食べよう」
グラ子さんの作ってくれたお料理を夕顔ちゃんと召し上がった。夕顔ちゃんは白米を見てごはんだ……と何故かびっくりしていた。
「でもたまごが無いよう…………」
「たまごが欲しかったの?」
「そうなんだけど、中々上手くはいかない物なのね……」
「材料はグラ子さんのお姉さんが持ってきた物なんだってさ、だから口の方を合わせたってやーって言ってたかな?」
「あはは似てる似てる。ふーん。そうなんだ……白米が結構この辺では珍しいから少しびっくりしたよ」
「そうだね。私も年に数回とかだね白米は。姉さんが赤飯っていう朱色のごはんを作ってくれたこともあったなぁー」
「あ、何か聞いたことがあるね、…………祝い事とかで食べるんだよね、風習みたいなもんだっけか。あれは確かあずき色だよ」
「なるほどー。そいえば小豆も入ってるもんね」
他には何かの漬け物とか焼いたお魚とかを夕顔ちゃんと美味しくいただいた。
お腹も一杯、ご馳走様でした。
「後一時間ちょっとしたらグラ子さんの所へ集合だって」
「一時間かぁ。うん解ったよ」
お腹も一杯だったので私も夕顔ちゃんも結局その場から動かずに休憩していた。
もうそろそろ行かないと。
夕顔ちゃんがコーヒーを入れてくれて、飲んだら支度して出ようってなったんだけど…………。
「黒いよぅ……夕顔ちゃん。みるくは?」
「うん、もう無かったんだ。村の人もいないからさぁ……」
「お砂糖は、入ってるの?」
「一応入れたよ」
子供な私は恐る恐る口を付け少し飲んでみた……。
「うぇぇ。苦いよぅ……夕顔ちゃんみるく……」
「えー。無いんだよ」
「ぐぬぬ……」
「お砂糖もう少し入れてあげる」
「うん。ありがと」
私はちびちびと我慢して大人のコーヒーを半分だけ飲んだ。
中々上手くはいかないね。
さぁて、そろそろ行かないと。
夕顔ちゃんと二人で少しお掃除をしてから家を出た。
そして、この数日間だけでもお世話になった家にお礼を言った。
気持ちの問題みたいなものかなぁ、私自身のね。
村長さん宅に行くと外でグラ子さんが待っていて、遅いから迎えに行こうかと思っとったでーとの事。
グラ子さん物真似の経験値が少し増えた。レベルは3だよ。
「あ、ごめんなさい。ちょっとお掃除に時間掛かっちゃった」
「あぁ、そかそか。ならしゃーないな、姉さんが待ってるからちょっと話そか」
「はい――――お願いします」
「夕顔ちゃんからは昨日聞いたから、補足があったら付け加えてーな」
「はい。解りました」
「ほな行こか……」
グラ子さんに案内されるまま村長さん宅へ。
夕顔ちゃんと入るとクールビューティーなグラ子さんのお姉様がリビングで何か書類に目を通している。
「いらっしゃい。待ってたわよ。朋さん」
「え、あ、はい……」
「そこへ座って……。夕顔さんもどうぞ」
「はい――――昨日は迅速な対応をしていただきありがとうございました」
「良いのよ。寧ろこちらこそな感じだから、今回のは。報告してくれてありがとう」
そういえば名前、聞いてないなぁ、今更聞くのもアレだし、うーん。
クールビューティーさんで良いか、やっぱ。
「では、始めましょうか…………朋さん」
「はい。よろしくお願いします」
夕顔ちゃんと別れた所からで良いのかな? って思ったけどこの村に着いてからの話を聞きたいとの事で私が記憶している時系列順にこの村での活動を報告した。
あの崖に行って気絶した辺りも話したけど気絶中のことは夕顔ちゃんに補足して貰った。
でも私では無い私が動いていた所に関しても夕顔ちゃんに話して貰って、私がその時の記憶が無い事を更に話した。
その後入り口を封鎖して次の日に夕顔ちゃんと別れてからの出来事を話した。
「ふぅー」
「……大体ですけど、こんな感じでした」
「……………………分かったわ。身体も大丈夫そうだし、もう良いわよ。……あぁ、近いうちにまたギルマスに呼び出しを受けるかも知れないから。心構えだけしておいてね。ギルマスの事、苦手そうに見えたから」
「あ、あぁ…………はい。何故か、緊張しちゃって……」
「そうね……今度は私か、私の妹が一緒にいてあげる。……それなら良いでしょ?」
「はい――――お願いします」
「後、ゴブリンプリンスの事だけど、過去に討伐完遂。記録されているのは二回。災害レベルはA+指定。まぁ情報も少ないからなんとも言えない所も多いんだけど特別変異種ゴブリンプリンスと呼称されていて、強さだけは間違いないわ。災害レベルB-指定のゴブリンキングよりかなり格上。そう記録されているの。だから、色々な物が無事だった事に対して喜びなさい。あなたはそれらを守れたのよ」
「――――そ、そうなんだ。…………そう思って良かったんですね。何だか…………うん。良かった」
それとあまり詳しいことは話せないんだけど、崖の入り口は調査次第ではあるけれど魔法による封印が施される可能性が高いわね。
入り口には魔法による隠蔽と別の空間に繋ぐという魔法が設置されていたの。
なので恐らくあの崖の先にそんな地下集落や街は存在しない。
他の所にある街と唯繋がっているだけ。
なのでその辺の結論付け次第でこの村がどうなるかも決まるわね。
「へぇー。そんな事もあるんですね」
「過去にも結構あるわよ。ダンジョンが絡んだり迷宮が絡むと多いと言われているけどね。まぁ、出来る話はこれぐらいかな。とりあえずはサラダエクレアへ戻るでしょ?」
「はい。これから戻ります」
「妹もよろしくね。威勢は良いけど非力だから」
「…………そやで」
グラ子さんに何時もの勢い威勢が無い。
蛇に睨まれたカエルという例えが浮かんだ。
はわわわって感じになってる……。
「はい。こちらこそなので助かります」
「うん。じゃあまた何かあったら、ギルドでね」
「はい。よろしくお願いします」
「それはこちらこそよ」
グラ子さんが荷物持ってくるから外で待っててやって感じで夕顔ちゃんと外で待ってから再びグラ子さんと合流。パプリカ村を出てサラダエクレアへ向かう事となった。
「ふー。これで出張も終わりや、家に帰って姉さんもいないし引きこもるでー」
「…………グラ子さんってホントお姉さんに弱いですね」
「色々あるんや、人生で歴史なんや。積もり積もったもう抗えない何かがそこにはあるんや……弱いどころではないで」
「大変そうですね、グラ子さん」
「いやいや、大変なのは朋ちゃんの方やで……」
「それはそうだねー」
「…………そうなんだ」
「これだから無自覚な子は……でもそんなだからええんや、応援したくなるんやで」
「………………」




