42ゴブリンに連れて行かれた者達の末路
「あふぁー。もう掘れないよぉ…………ん。朝だね、何か夢見た気が…………うん。忘れた」
「すやすや…………」
「…………隣に夕顔ちゃん。んー何の夢だったかなぁ……」
しばらくすると夕顔ちゃんも起きてきた。
朝ご飯を食べて今日もごぶごぶ退治に、彼等に手は抜けない。
もう性分だね。
考えただけでこみ上げる何かを抑えるのが必死。
用意も完了。
今日も何時もの何処にでも溶け込めそうな村人の様な洋服に身を包み魔法使いなのに杖すら持たない私。
夕顔ちゃんは持っているんだよなぁ、杖。
姉さんは当分要らないよって言ってたからさ。
……でも形も大事な気がする私は誰が見ても村娘A。
まぁ、良いけどね。
夕顔ちゃんに今日何か夢を見たんだけど忘れちゃってって話したら、あー。
私も私もーって、夕顔ちゃんも夢を見たみたい。
夢って何で忘れちゃうんだろね、とっても気になるじゃないの。
「そろそろ行こっか、朋ちゃん」
「うん。用意は出来てるよ」
村を出て聞き込みからの情報を元に洞窟へと向かう私たちゴブリンバスターズ。
彼等に必殺を届けます。
そんな気分で進む進むーかなめだよ。
鼻歌も欠かさない、いや欠かせないと危ないからね。
洞窟までの道は無く途中からは草地とかちょっとした森をガサガサと掻き分け進む私たち。
大体二十分ぐらい、方向だけ気を付けて進むと大きめの崖の前まで辿り着く。
おかしいなぁ? 今日何か変かも……。
今日なんだけど私は今までの道筋で三回も石に躓いている。
うーん、どおしよ。
……気を付けるしかないか。
えーと、何だっけ、風の知らせ、運が悪い日とか、多分、今日は何かがあるのかも知れないね。
でもなんとなくーで今日は止めようとは行かないかなぁ。
ホントはそういうカンみたいな物は信じた方が良いって姉さんは言ってた気がするけど。
んーどおしよ……。
やっぱ不安が募ってきた。
後で夕顔ちゃんに相談してみようかしら。
崖の方を見ると確かに大きめの穴がぽっかりと空いていて、如何にもって感じの場所。
ごぶごぶが居なくても何か絶対に居そうな場所。
これはヒットかな。
先方している夕顔ちゃんと顔を合わせて頷く。
とりあえず洞窟を観察出来るポジションに着き様子を伺う事にした。
さて、鬼が出るか蛇が出るか…………。
あれ?
突然大きな音が耳元で聞こえた気がして、振り返ると。
◇◇◇◇
「ひっ…………」
「…………と、朋ちゃん」
私が振り返ると後ろで朋ちゃんが倒れている。
いや、正確に言うとお持ち帰り寸前みたいな状況。
私たちは不意打ちを食らった。
勿論敵はゴブリン……の筈だったんだけど。
見たことが無い姿に何かを、とても見るからに禍々しい物を纏っている。
そして頭に何か…………。
あれって……王冠?
「ゲッ。俺の嫁テニイレタ。オイ、ソコの人間。お前も俺の嫁にナルカ? クックック……」
「…………ゴブリンキング」
「――――ハッ。俺はプリンスダ。キングナンテ俺より弱イゾ」
「…………そんな、嘘」
「気が向いたらコイ。オマエも嫁にしてヤル……」
「…………この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。アイス」
私は咄嗟に魔法を唱え禍々しい緑の自称プリンス目掛けて氷の魔法を放つ。
「ア? ツメタぃじゃねーか。フン。そんなモンか。ニンゲンよ。バァックショーイ。オー寒さむ、後で熱い熱い風呂だな、嫌いだけどヨ!」
……効いていない。無傷?
――――ど、どうしよう、朋ちゃん。
ああぁ。
泡吹いてる……朋ちゃんにも当たっちゃうし。
でも倒さないと!
「すーはー。………………紡ぎしマナの根源により解放せし更なる力よ、我を媒介としその威力を顕せ。アイスボルト!」
私が使える最大威力の魔法。
中級魔法のアイスボルトを唱えた。
私にはまだ過ぎた魔法。
安定して打てないけど此処は使うしか手が無い。
詠唱に構築も成功。
方向も良い。
具現化に成功。
よし、運も良い。行ける! 私が唱えた最高の呪文アイスボルトは敵ゴブリンプリンス目掛け凪り走る。
氷と雷がせめぎ合い螺旋を描き混じって進む。
甲高い音と共に目標に向かって。
距離はとても短く、私とゴブリンプリンスの間はおよそ二、三メートル程だろうか。
こんな近距離の敵に安定しない高火力な魔法を放つ事に対し私は少し怯んでいる。
でもヤルしか無いんだ!
そして。
私の必殺の呪文が命中した。
「…………チッ。腕イッポンカ。ピリピリと。ヤルナ、オマエ。気が変わっタ。オマエも嫁にスル」
ユラリとした動きからの敵ゴブリンプリンスはとても早く下腹部に衝撃を受けた。
「…………ごめん、朋ちゃん。駄目だった」
「オマエ、二人目ナ……」
意識が飛びそう……お腹を殴られ私は直ぐに捕らえられた。
布のような物で猿ぐつわされ、詠唱を封じられた状態で汚れている何かを頭から被せられる。
何も、何も見えない。
怖い。
……………………。
………これからどうなるのだろう?
朋ちゃんさえ目覚めれば。
……何か、どうにかしないと。
でも私に今、何が出来るだろう。
私は朋ちゃんみたく無詠唱は出来ない。
……この精神状態で無理矢理呪文を唱えて発動するとはとても思えない。
…………詰んだかも。
でも……足掻かないと。
冒険者になった時、ギルドの研修に参加した時の教えによりピンチの時こそ足掻けと教わった。
諦めるなと。……絶対に。
……何か、私には何があるのだろう?
この状態で。
朋ちゃんは大丈夫かな? あぁ、私は…………朋ちゃんに何もしてあげられない。
…………無力だ。
グラ子さん、こんな時………………どうすれば良いの?
私は多分担がれて何処かに連れて行かれている最中。
足掻け! 早く、何か、考えないと。
……………………。
ああ考えが纏まらないよ。
朋ちゃん、誰か、助けて。
…………でも、そうなんだ。
私は知っている。
ゴブリンに連れて行かれた者達の悲惨な末路を…………。
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