40定期的に現れる緑色の者たち
「パプリカ村にようこそ、私が村長のイトウと申します。クエストを受けてくれたとの事で、しかも早速三体とは、ありがとうございます」
目の前の村長さんを名乗るイトウさんは少し疲れた様な顔をされている、目元にくまが見え少しふらついていた。……時折、側にいる女性が村長さんを支えているのが見える。
「……丁度、見つけたので先制攻撃が上手く決まりました」
「いやいや、こんなに若そうなのに。大したものだ」
「すみません。ちょっと参考に教えて欲しいのですが……」
「はい。何でしょうか」
「ええと、村には戦える人はいないのですか?」
「あぁ、はい。……若い者はある程度の年齢を超えると皆、大きい街へ行ってしまうのですよ、昔、攻撃魔法を私も使えたのですが年齢と共に威力も弱まり安定もしなくなってしまって。今じゃこの村で戦える者はいないのです」
「……そうなんですか」
「はい。しかもこういう形で依頼をして倒して頂いても定期的に何処からともなく現れるんですよ。奴らは…………もう繰り返しですね」
「なるほど、今回は後どれぐらいの数が確認されているのですか?」
「今回確認されている数は八体です。なので後五体だと思われます」
「依頼には根絶やしと書いてありましたが、あれはどういう……」
「あぁ、それはですね、言葉の綾と言いますか……いや、定期的に現れる奴らを調査して欲しいという意味も含まれています」
「なるほど」
「しかし、依頼料はそこまでお出しできません。ですのでもし、何か手がかりがあればという意味合いなのです」
「そうですか……解りました。ええと、ちなみにですが、此処は私たちが泊まれる所や食べる物などはありますか?」
「あぁ、村の近くで取れる物などでしたらご用意出来ます。泊まれる家も御座います」
「ちょっと、二人で考えてみますね」
「はい――――――よろしくいお願い致します」
夕顔ちゃんが村の長から色々と情報を引き出してくれつつ選択肢を考えてくれた。
とりあえず泊まれるなら何日かは此処に居ても良さそうだけど……。
私たち二人はは一旦外へ出て村の様子を眺めながらどう対応するか考える事にした。
「とりあえず泊まれる所とご飯は大丈夫そうだね」
「うん。そうみたいだね」
「多分、この様子だとそんなにお金は無いんだろうと思うの」
「あぁ、そんな感じだね。とりあえずのゴブリン五体はやっつけたいけど問題は調査だよね」
「そう。さっきみたいに先制さえ取れればまぁ、問題なく行けそうだねゴブリンは。でも調査は、んー。難しいかも知れないわね」
「うんうん。時間をどれぐらい掛けるかって話になるよね」
「そうだね。そこと後は調査した結果、他の敵と戦う事になるかも知れないという場合もありそうよね」
「あー。なるほどね、でも定期的に現れるって変だよね」
「うん。少し考えられるのは誰かが手を引いているとか、後は何だろうなぁ、わかんないけど理由があるかどうかに依って対処も変わってくるかもね」
「んー。何故定期的か、単純に考えると食べ物の為、これは目的かなぁ。そして何処からっていうのが原因って感じはするね」
「そっか、そんな線かも知れないわね。まぁ、とりあえず私は期限を決めて受けるのが良いと思うけど、朋ちゃんはどうかな?」
「うん。それで良いと思う。何日も結果が出ない物をやるのもアレだしね。んーと、三日から四日かなぁ、多くてもね」
「そんなもんだね。よし、三日にしよう。後は発展がありそうなら一日、二日ぐらい追加するって所にしましょうか」
「良いね。それで行こー。とりあえずは五匹を倒してからだけどね。まぁ、平行でも出来るけど」
「早めに倒せればそれだけ調査に掛けられる時間は増えるね。見つからなかったり倒せなくても三日で区切ろうね」
村ののどかに見える風景と、子供が数人遊んでいる光景を見ながら夕顔ちゃんと今回、何処まで対応するかを決めた。
雨は結局降りそうで降らなかったが黒みを帯びた雨雲が空には多く見られた。
「村長さん。良いですか?」
話し合いの結果とこれからを話に再び村長さん宅へ戻り夕顔ちゃんは話しかけている。
私は夕顔ちゃんの後ろにくっついている。
ぴとっとね。
ついでにお尻も触っておこうかしら。
好きでも駄目かな、どうかなぁ? スケルトンちゃんで夕顔ちゃんに試したら怒られるだろうなぁ。
さわさわと夕顔ちゃんの腰に手を当てていたら小さくひゃっ、て聞こえた。
何かそんな気分の日なんだよね。
仕方ないね。
「はい。決まりましたか?」
「ひ、ええと、あぁ、そ……うですね。期限を設けてその期間で対処させて下さい」
ふるふると震えながらも村長さんと話している夕顔ちゃんは私のさわさわを我慢している様だ。
「期限の方は何日程で…………」
「三日でお願いします。状況的に後数日必要な場合は追加で一日、二日ぐらいでどうでしょうか?」
「ありがとう。それで十分だよ。できる限りでお願いします」
「解りました。よろしくお願いします」
「では、休める所へ案内します――――ノエル。案内とかを頼む」
「はい。お父様。では冒険者様、ご案内致します」
案内してくれているノエルさんは村長さんのお孫さんで、私たちより二つ年上の十六歳との事。
十六歳といえば学校が行ける年齢ということで聞いてみたら村も人手が少ないとかで大変だから一年遅らせるって話してくれた。
大体この世界では六割から七割方の人が学校に通うみたい。
学校とスクールって何が違うんだろって夕顔ちゃんに聞いたら一緒だよって教えてくれた。
そーなんだね。
こちらです――――と案内されたその家は結構大きめだった。
ノエルさんのお父さんとお母さんが使っていたらしい。
けれど二人はこの村にいないみたい。
……何かありそうで悪いし怖いから聞けなかったよ。
「この家は結構大きいんです。二階と三階もあるんですよ。手入れは時折しているので大丈夫だと思います」
「へぇー結構なお家ですね二人じゃ大きいかもね」
「そうだね。二階部分まででも十分過ぎるね」
「一通り揃っているとは思いますが、何か必要な物があったら私に聞いて下さい。あ、ご飯は三食で一階のこの辺に毎日用意しておきますね。一応お昼は持ち運び出来るようにしておきますので。食べ終えた物とかはこの辺に置いて頂けたらこちらで回収しますね」
「うん。大体解ったよ、ありがとう。ノエルさん」
「そうだね。短い時間かもだけど、よろしくね。ノエルさん」
「……いえ、こちらこそよろしくお願いします。助けてくれるだけでもとてもありがたくて……」
「ええと、村の被害は結構……酷いんですか?」
「…………はい。こんな小さな村だと一人に何かあるだけでもう。農作物や家畜などの被害も甚大で、私の幼なじみも…………」
「……ごめんなさい。辛い事を思い出させたみたいね」
「いえ…………」
「夕顔ちゃん。何とかしようね」
「うん。そうだね。…………ノエルさん。後は任せてください」
「はい。お願い……します」
私たちは一息付いてから情報収集する事にした。
初めに村長さんにどの辺で良く見かけるかを聞いてから、他の村人にも何か気になったことなども含めて聞いてみた。
すると、特に関係なさそうなお話から、ちょっと気になる事まで色々あり、私たちは集まった情報を精査する事にした。
「結構色々な事聞いたけど、これの中から必要な情報を探すのが大変そうだね」
「そうなのよね。とりあえず今日は村の周辺をマッピングも兼ねて捜索してみる? 朋ちゃん」
「んー。それが良いかも知れないね。それで戻って来てから情報を整理しようか」
「じゃあ用意して行こうか」
「そうだね、とりあえず行ってみよー」
一旦、精査することにしたけど後回し、先ずは村周辺を廻ることになった。
そして結果から言うとゴブリンには会えなかった。
ん、違うか、発見できなかったね。
にっくきゴブリン明日こそ。
とそんな感じでお借りしている家へと帰宅。
一息付いてから、備え付けのお風呂にお湯を張る。
此処も簡易魔石が置いてあるけれども使わずとも私はお湯は出せるので使わなかった。
「お風呂、お湯貯めたよー。夕顔ちゃん、先にどうぞー」
「ん、良いの?」
「うん。お先にどうぞっ。暖まってきてね」
「じゃあ、お先に入らせて貰うね…………今度一緒に入ろうね、朋ちゃん」
「…………えー。恥ずかしいよぅ」
「あは。私も恥ずかしいしー。ふふん」
「あー。でも姉さんとは良く入ってたなぁー」
「んと、メルヴィッセさん?」
「そうそう。あー。姉さんに会いたいなぁ」
「…………ホームシックかな?」
「…………あぁー。そうだね。それだねうんうん。はぁーどうにかしないと…………」
「…………何か困っているの? 朋ちゃん」
「……え、あ、うん。んーと。あ、夕顔ちゃん先に入って。んと、今度話すから、ね」
「うん。じゃあお先に――――」
そういえば、夕顔ちゃんにはまだあの話はしていなかったかな。
んー、どおしよ。話したら巻き込んじゃうかなぁ…………。
といっても数年は先の話だし、下手すると数十年以上先。
はぁー。
先、長いなぁ…………。
「姉さん…………」
もー私に何かさ、凄い力があれば良いんだよ、何か出てよ、ポンとさ。
簡単にさ。
でもあの時は何かあったんだよね。
あのゴブリンの時。
カナメも居てさ、……えいっと。
スケルトンちゃんを出して聞いてみよう。
「ねーねースケルトンちゃん。私、どうすれば良いのかなぁ?」
「……………………」
「はぁー」
スケルトンちゃんは私を励まそうとしているのか目の前で踊っている。
ロックだ…………って、何も命令してないんだけどなぁ。
ふぅー。
……きっとこの世の中は思った以上に謎だらけなのかも知れないね。
皆んなが何かを隠している、うん、そっか。
そう考えた方が自然なのかな? 単に私が知らないだけって事も一杯ありそうだけどね。




