39残念な私と残念なタオル。
「こけこっこ? すぴぴぴーすやー。んっ…………ふぁ」
「うーんん。朝だね、うん。元気だよ。今日は、えーと…………あ、ゴブリンだった。うん、不元気だね、不調かな、どーだろう」
顔を洗って身支度済ませ、朝ご飯、何時もの場所に向かう私。
夕顔ちゃん発見。
元気をたっぷり補充であります。
「おはよー」
「お、来た来た、おはぁー」
夕顔ちゃんはもうご飯を済ませたみたい、私が食べているのをなんとなく大っきめの目で眺めながら時折お話をする。
もぐもぐ。
図書館はとりあえずランクが上がってから対応するからもう少し頑張ってや。
とのグラ子さんのメッセージを夕顔ちゃんは教えてくれた。
んー、とりあえずは召喚術は大丈夫そうだから今すぐ必要な調べ物は無くなっちゃったんだよね、実は。
強いて言えば古代召喚術で召喚出来そうな者達の名前とか姿とか生態かなぁ。
うん、それは知りたい、やっぱ行かなきゃだね。
「ねぇねぇ。朋ちゃんは学校、魔術のスクールへ行く予定はあるの?」
「ええと、あぁ、スクールは…………うん。行ってみたいね」
「来年度に?」
「ううーん。まだあんまり考えて無くて、確か大きく二つあるんだよね? 魔術のスクールは」
「そう。私が調べた限りでは良いのは王都にあるスクールとパスタメールにあるスクールでね、甲乙は付けがたいみたい」
「うん。私もそこまでは聞いた気がするね」
「私は調べた限りだとパスタメールにあるスクールが私には良いかなと思ってて今悩んでるの」
「んーと、何が違うの?」
「大きくは学べる物なんだけど、王都の方は精神系とか、まぁ、騎士とかも含めたね。僧侶、司教、牧師とか、聖騎士などが強いみたい。そしてパスタメールは剣士や、魔法剣士、格闘、弓とかの狙撃系、あと召喚術も一応こっちの方が優れているみたい、そこまでの差は無いらしいけどね」
「へぇーそうなんだ。じゃあ行くとしたら私はパスタメールかなぁ」
「…………そうだよね。うん。ありがと」
「夕顔ちゃんはどっちに行きたいの?」
「んー。私はまだ悩んでる。昔からパスタメールを目指してはいたんだけどね、あの観測者、見えるスキル絡みでね」
「そっか。一緒出来ると良いね、決まったら教えてよ」
「うん。解った」
ご飯を食べて夕顔ちゃんと今日の予定を話し合った。
次のゴブリンはサラダエクレアから南東の方角。
依頼内容は確か…………メモあった。ええと、ゴブリン退治。
村の家畜を毎日の様に攫っていってしまう。
女子や子供といった力が無い者も時折攫われる、もう限界だ。
根絶やしにしてくれ。
ん。根絶やし、んん。良いね。
そうしよう。頑張るゾ。うっぷ。吐きげ。ふーはーひー。
「だ、大丈夫? 朋ちゃん」
「うん、大丈夫っ。すーはー」
「じゃあ…………用意して三十分後に行こう」
「おっけ、じゃあ三十分後に」
これと、これかな。
うん、用意出来た、後は気持ちの用意だけ。
すーはー。すーはー。
あ、そろそろ行かないと。
えいっ。
とスケルトンちゃんを生成し、行ってきます。
スケルトンちゃんに、おっきい丸を作って貰った。
よし、行こう。
一階の受付で今週分の宿代を払ってから夕顔ちゃんと合流。
では行きましょう。
ゴブリン退治の村、名前はパプリカ村。
サラダエクレアの街から南東へ大体二時間ちょっととの事。
メインの道からは少し外れる為、昨日も使ったアスパラ村へとも続く道。
南への道からの途中で東へ逸れて向かう私たち、休憩も忘れずに挟む。
メインの道はサラダ街道という道らしく南下して行くと次の街ナッツターキーという街があるらしい。
今回はゴブリンが五体から多くても十体はいないんじゃ無いかって話だけど、前回みたいな事もあるから油断は禁物。
私はきっと油断している余裕すら無いと思う。
最悪ずーっとげーげーとならないとは言い切れない。
なので今回は夕顔ちゃんと話し合った結果、私は後方からで夕顔ちゃんは少しだけ私より前というフォーメーションに決めた。
ホントにどーにもならなかったら二人して戦線離脱。
そこまでは一応視野に入れている。
今回は私が足を引っ張る確率が非常に高いのだ。
でも逃げたくない。
ゴブリンから、そりゃもう殲滅したい。
でもまだ厳しいかもしれないね。
あの嗤うかお。かお。かお。うん。ホント無理。
「すーはー。ふぅ…………」
「…………大丈夫? 朋ちゃん」
「うん。大丈夫。もうばっさばっさとちぎっては投げで行くよ私は」
「あはは、なにそれ?」
「あははは。私も知らないや」
もう大分村まで近いはず。
さっきまで晴れていたんだけど少しずつ、そう、少しずつ雲行きが怪しくなってきた。
これはもう、舞台が整いつつあるね。
大丈夫。
うん、自分に言い聞かせる。
あの時は凄く晴れた昼下がりだった、曇りや雨の方がまだマシ。
あの時の事を思い出さないからね。
もう私はゴブリンの事しか考えていない位にぐるぐると。
いやいや違うでしょ。
駄目だよそれは、うん。切り替え切り替え。
いけるいける。あれ、夕顔ちゃんが何か言ってる、叫んでる? ん、どしたの? 私はだいじょ――――
「と、朋ちゃん。敵、ゴブリン、あそこ…………」
「いやいや、おえええー」
「と、朋ちゃん大丈夫?」
もう条件反射。
私は駄目みたい。
全然、あの緑色の奴、気持ちが酷い。
全然だいじょばないよぉ。
おええええ。
肉眼で見てしまったよ。あの動き。緑。かお。えぐ。
「ふぅふぅ。無理ん。んーとどうするんだっけ。えーと、はぁはぁ……」
そう。私は深呼吸後に勢いよく目を閉じた。
もう目に凄く力入れた。
グッと。
そして呼吸を整える。
すーはー、とりあえず目の前にスケルトンちゃんをえいっと。
うん。大丈夫、次はええと音が聞こえる。
夕顔ちゃんの魔法詠唱の声と魔法音。
敵はあっち。うん。感覚で解る。見える。あの忌まわしい敵が……。
「夕顔ちゃん。私、撃つね」
「あ、おっけ。敵は正面。三体だよ、先制攻撃で私の魔法がヒットしてうろたえてるよ。いっちゃえ朋ちゃん」
「この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。アイス」
私の魔法は構築され射出。
正面に生成されたスケルトンちゃんの頭を擦りながらその先へグングンと進む。
そして命中、したかな?
「夕顔ちゃん、どうかな?」
「良いよ、一体にヒット。戦闘不能。あと二体だよ」
よしっ。行ける。私は見えてない。ん、見えてる。
この調子。
周囲が少しひんやりとしている感覚があるよ。
「この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。アイス」
夕顔ちゃんの魔法詠唱が聞こえる。
同じ方向に撃つよと一声掛けてから、私は感覚を修正し夕顔ちゃんの放った方向へ意識を集中させ詠唱。
「紡ぎしマナの根源により解放せし更なる力よ、我を媒介としその威力を顕せ。アイスボルト」
私の現在最高威力の中級魔法アイスボルトを放った瞬間、目を開けてしまった。
私の放つ魔法はギザギザに、斜め前へと動きを早めバリバリと音を立てながら進む。
目標目掛けて。
そして着弾とばかりに敵二体にヒット。
感電しながら凍る敵の低い断末魔が私の耳を突く。
そして私はイメージしてしまった。
「おっけー。殲滅だよ、流石は朋ちゃん」
「うげー」
「あぅ。朋ちゃん…………」
夕顔ちゃんに暖かいタオルを渡された私。
ごめんね。
今わたし、鼻水とか涙とかピーとかで酷い状態だよ、きっと。
後で洗って返すよと言ったら大丈夫だよと優しく声を掛けてくれた女神さま。
全然だいじょばないよ、それ。
でも誘発させたのは私の言葉。
ごめんね夕顔ちゃん。
そして残念なわたしとタオル。
その場で少し警戒しつつ態勢を整える。
村に着く前に敵に遭遇した。
もうすぐ村なのだろうか? 私は極力見ないように。
そして夕顔ちゃんは倒した敵ゴブリンを再確認してくれている。
そのまま更に進むと木で出来た看板があってその先に柵がで周囲を囲っている区画と入り口みたいな場所に男性数人、誰かが立っている。
槍や剣の様な武器を持っていたり、鍋とかフライパンみたいな調理道具を持っている人も中にはいた。
村の人と思われる中の一人が少し遠くから話しかけてきた。
「おーい。そこにいる人。今その辺にゴブリンいなかったか?」
「はい。今、倒しましたよ。私たちで」
「おおっ。本当か」
数人の人達が倒した事を話すとザワザワしている。
「ええ。三体いましたね。直ぐそこの林の中で凍ってますよ」
「…………というと、魔法か?」
「そうですね。ええと、申し遅れました。私たちは冒険者ギルドからクエストで来た者です」
「おお。それはそれは、助かったよ、今日は朝からこの辺をうろついてて見かけたら大きな音を出して威嚇してたんだ」
「あぁ、なるほど、それで鍋とか、フライパンとかですか?」
「そうなんだよ、意外にいい音出るんだぜ、コレ」
鉄の棒でフライパンを叩いている村の一人。カーンカーンと確かに結構響く。
「歓迎するぜ、魔法使いさん」
「よろしくお願いします。私は夕顔と言います。こちらは――――」
「朋です。よろしくお願いします」
簡単な挨拶を済ませると村長の家に案内された。
村長さん宅のリビングへと通され目の前に村長さんと思われる人物と結構若そうな女性が村長さんの後ろに控えている。




