38好きだから、対等でいたいの
グラ子さんを二〇分ぐらい待ってからこの前も行った食べ物屋さん、でぃーえすなんとかへ私たちは向かった。
「今日も頼むわ、ユイリィ」
「はいはい、今日も三名で良いね?」
「うん。奥使わせてもらうわー」
私たちはグラ子さんに付いてこの前も来た奥の部屋へ向かう。
今日は比較的お店の方も混んでいるみたい。
この前見なかった店員さんとかも数人見えてお店を切り盛りしている。
私たちが席へ座ると同時に飲み物が用意された。
お仕事早っ。
「さて、でわ座ったばっかりやけど飲み物来たしとりあえず乾杯でなー」
「「かんぱーい」」
私たちは前回同様エクレアナッシュで口を潤す。
喉にスーっと染み渡るそれは砂漠の中でオアシスを感じる程の一杯。
砂漠は見たこと無いけどね。
「ふー。生き返る。生きてるねェー」
「あはは」
「そんなですか、グラ子さん」
「いやー。働くってのは大変なんやで!」
「そっかー」
「職場には人という魔物がおるのじゃー。もう何人も精神を病んでゾンビのようになってしまった人を見てるのじゃ」
「うっ、以外に冒険者ギルドはブラックですね」
「あー。今度はゾンビも良いかなぁ……」
「あは。半分は冗談やで、んで朋ちゃんゾンビも良いとは?」
「あぁ、コレです」
私は隣にスケルトンちゃんを呼び出した。
もう召喚時間は十秒代と中々な早さになってきている。
そろそろ手品師として行けるかも知れない。
「んなっ! ちちちょっと、朋ちゃんコレ大丈夫なの?」
「大丈夫だよね? 夕顔ちゃん」
「そうだね、今の所は大丈夫だったよ。でもグラ子さん美味しそうだから…………」
「あぁ……そうだね」
「おいおい。もし私が食べられたらとんでもない絵面になるで! のど越し丸見えやし。スプラッターまっしぐらや、塩とか掛けんといてな」
「「あははは」」
お料理が色々と届き出す。
グラ子さんは特に注文していなかったからもう顔パス過ぎるんだろうね。
「にしてもそれは…………召喚術か」
「うんうん。この前からずっと練習しててね。結構な感じで様になってきてるよ」
「マーメイドウルフ戦にも活躍してたね。スケルトンちゃん」
「うん。意表を突くって意味では中々なんだよ」
「なるほどなぁ。確かにいきなり隣に出てくるだけでもびっくりするで、あれや、初見殺しの技かもしれんの」
「コノ料理オイシソウデスね…………」
「「「ん?」」」
「あ、あれ今何となくさ……」
「…………もしかしてスケルトンちゃん話せるの?」
「……………………あ」
皆んなで注目しているとガラガラと崩れ落ちるスケルトンちゃん。
そろそろ食べようとグラ子さん。
「あぁー。んー。多分話してたよね。スケルトンちゃん」
「聞いた聞いた」
「まぁ、そういうこともあるかも知れんな、召喚術には使い魔ってあるし」
「あーなるほど。そう言われれば、そうですね、でもスケルトンちゃんが話せるとは思わなかったよ」
もう一度試しに呼び出したて聞いてみたがスケルトンちゃんは話してくれなかった。
あ、このお肉美味しい。
あのドレッシングが掛かったサラダも中々。
「タイミングとか、機嫌とか、何かのピースが必要なのかね」
「まぁ、今後もどんどん呼び出すから何かしら解っていくと思うよ、成長もしているし」
「…………突然人みたく肉が付いたり話し出したりしてみたり?」
「あはは、まさかぁーそこまでは……」
「……………………いや、あり得るよ」
「……………………デスね」
またスケルトンちゃんは話す。
しかも今回は会話内容を理解しての受け答え。
んー。
奥が深いね。
「これはもう確定的だね」
「うん。明らかにね」
「せやな」
その後グラ子さんにアスパラ村での出来事を話すとふんふん。
と聞いてくれるグラ子さん。
「そかー。そんなんだったのか。昨日サラダエクレアに重傷人が運ばれてそこでも話を聞いたんだけど話を聞く限りだとDランクぐらいの依頼度はありそうやわ、コレ」
「私たちはまだノーランクですよね? グラ子さん」
「んー。まぁ初めのランクは基本は数をこなす、まぁ、規定回数は十回なんやけど、今回は残りの依頼消化でFランクに申請しとくわ。うん、もしかしたら通るから」
「ということは、ひーふーみーと後六個ですね」
「…………いや、アーマーナイトは外すから後五個やね、今回ので戦闘系一つやってるし残りは採取やお使いとかでも普通にランクは上がるけどなー」
「そうなんだ」
「ランク毎に幾つかの規定があってな、上に行くほど難しくもなるけどな」
「なるほどねぇーでも、朋ちゃんは残りの依頼もこなしたいんだよね?」
「うん、そうだね。私の目的は少しでも強くなる事が一番の近道だから……」
「…………そっか、おっけ。このまま進みましょう」
「そいえばさっき言い忘れたし処理もまだやけど今回の依頼は結構、報償出てたでー」
「おおー」
「お幾らぐらいですか? グラ子さん」
「んーと、一人。一万五千C(クアレット)やな。主な名目は緊急対応とマーメイドウルフへの尽力料などやろなー。通常のコボルト達だけだったら多くても九千Cって所だと思うで。アスパラ村の感謝の証かな」
「おおー。ありがたやありがたや。宿代で結構掛かっているからね」
「夕顔ちゃんは宿代一日、五千Cぐらい?」
「私は一ヶ月単位で借りているからもう少し安いかな。三ヶ月と半年とかだったらもっと安くなるんだけどねー」
「あぁ、なるほど、そういう節約も出来るね」
「グラ子さんは実家ですか?」
「うちは姉様と同居やね」
「あー。私、少しだけ会った。クールビューティーな人だよね? グラ子さん」
「…………せやね。うちは姉様には頭が上がらん。我が人生に於いて借りっぱなしや」
「へーそうなんだー。なんとなくグラ子さん結構やり手にも見えるから意外だなぁー」
「うちは基本、引きこもりの駄目人間やさかいなー。働きたくないんよ、ほんまは」
「でも働いてるの?」
「まぁ、生きるためなのか、習慣なのか流されてなのかもうよう解らんてな、でも一つ解っているのは、
この先も人生は長い。何事も無ければなって、うちの話は置いといてや、次や次っ。ほんまにゴブリン行くんか?」
「あー。うん、駄目もとでね。駄目だったら夕顔ちゃんに全て任せる。私はその辺で七色の虹を作っているから、夢が壊れるまでにお願い……殲滅して」
「えー。それは厳しいなぁー。私は朋ちゃんほど攻撃魔法に威力無いから多分、ゴブリンでも一体倒すのもやっとだよ、ごぶごぶだよ。結局ね、時間が掛かっちゃうのよ」
「夕顔ちゃんは中級魔法は覚えたのか?」
「…………一応。でもまだ安定しないのよ。発動しないとか嫌だし、暴発とかしたらそれだけで戦況壊しかねないよね」
「次はもしかして難題なのかも知れないんやな、そんな感じだと……」
「いっそのこと目をつむってってあれ、もしかしたら私、目を瞑っても戦えるかも……」
「え? どういうこと、朋ちゃん」
「あ、ん、何かね今日のマーメイドウルフの朝からね、視野が広いというか、何か周りが見えてるの」
「えぇ? 何かの達人みたい、それ」
「せやな、剣術でそんな感じの技あった様な気はするけどなー」
「うーん、でも仮にこれでもゲロゲロしちゃう様だとお手上げだけどね」
「もう出たとこ勝負で行こっか、朋ちゃん」
「そうだねー。それも良いかも」
「良くないってそれは、相手はあのゴブリンやで? 何ならお持ち帰りされて、あんなことやこんなことされてまうでー」
「「…………それは絶対にヤダ」」
「あはは。被ったね、夕顔ちゃん」
「うん。ゴブリンと言えば良くある話だからねー。まぁ、でも私たち魔法使いなんだから結構遠くから適当に狙うのもありな気はするけどね」
「そうだね。私と夕顔ちゃんだと、どうしても不意打ちされるとね。一番良いのは先制の遠くから、なんだよね」
「そうね、それが理想。でもこの前のマーメイド戦を見る限り朋ちゃんは近接も行けそうな感じだったよ」
「うん。姉さんの修行で結構鍛えたんだけどあくまでも避けるとか避けるとか重視なの。そこからゼロ距離で魔法を放つのはもう混戦ぐらいだろうね。形振り構わない時とかね、近接での魔法攻撃は結構リスクもあるから、早く上級四種を覚えないとなぁ…………」
「ん? 上級四種を覚えると解決するの?」
「あぁ、んとね、上級四種をある程度物に出来ればね、剣術を始めなさいって姉さんに言われててね。えーと、コードの神様が喧嘩しないようにタイミングをずらせば大丈夫って言ってたから……」
「んー。そうか、朋ちゃんはコードを二つも持っているのか?」
「んーとね、実は三つ……」
「え? なにその勇者? いや魔王か? あー。そっか、何か何処かで聞いたことあるで、コードの神様が同時に鍛錬を積むと喧嘩するって、でもあれってことわざの話かと思っていたよ。え、じゃあ順番通りにすればコード三つを物に出来ると?」
「理論上は出来るらしいよ。でもコードはまだ良く解らない所が多いから慎重にねって姉さんが言ってたよ」
「一つも持っていない人の方が遙かに多いのになー。良いなー朋ちゃん、うちも持ってたら引きこもり生活に色を添えるのになぁ」
「どんなコードが欲しいんですか? グラ子さん」
「せやなー。んー錬金術ぅーとか、ええかもなー。あ、それか魅了で男の人を貢がせるーとかもええのええの」
「うわ、方向性が駄目な気がする、戻って来て! グラ子さん」
「あははは」
その後もグラ子さんと夕顔ちゃんとお話しながらご飯を食べた。
解ったのは皆んな悩みが色々とあるんだなぁって事だった。
皆んなでデザートも食べ終わりお会計はグラ子さん持ち、いや、ギルマスからまだまだ預かってるから大丈夫や、と話している。
その後この前と同様に夕顔ちゃんは私に先返ってて、ちょっとこの前の事グラ子さんに話したいからと二人、夜の街へと消えていった。
うわ、なんだか大人。
お子様な私はもうおねむ。
早く帰って寝ようっと、大人の女性になる日は遠い、あふぁ。
おやすみみんなまた明日。
◇◇◇◇
「また此処でええかー?」
「はい。何処でも」
直ぐそこのエメラルド茶屋へ私たちは向かった。
「んー。今日は何にしようかなー。夕顔ちゃん決まった?」
「えーと、私は……フェアリーの泉って飲み物にする」
「んーじゃあ私はミスティックドラッグティーにしとくわ」
店員さんへ飲み物を頼み待つこと数分後、私たちの飲み物が届く。
グラ子さんは眠そうにあくびを何度もしている。
「今日は眠そうですね。グラ子さん」
「ん、あぁ、今日も結構忙しゅーてな、明日も早いからなるたけ簡単にな」
「あ、はい。すみません。ええと、朋ちゃんなんですが、魔女だったんですね」
「あぁ、そやなぁ。彼女は有名人やね、まだ見習いだけど将来確実に歴史に名を残す人物になるだろな」
「…………ですね」
「どうやった? 朋ちゃんの実力は。私も見たこと無いから知りたかったんだ」
「うーん。色々と凄そうなんですけど、一番気になったのは成長速度で次に気になったのは切り替えの早さかなぁ」
「ほうほう。それは随分と…………見えてるね」
「そうですか?」
「んー。普通は魔法使いなんだから、魔法が凄いとか……あるやん」
「あぁ、そうですね。それはそうなんですが、人の本質はやっぱり人そのもののって感じです」
「本質、ね。……朋ちゃんと一緒におって何か、掴めそうか?」
「それは、はい。多分、私も引っ張られるか、引き上げられるとは思います。でもそのスピードに私の実力は付いていけないかも知れないかなぁ。私が朋ちゃんのブレーキになるのは目に見えているし」
「夕顔ちゃんは真面目やなぁー。彼女はそれでも助かっていると思うで、夕顔ちゃんの存在にな。夕顔ちゃんは朋ちゃんの事を好きだから、対等でいたいという気持ちも分かるけど」
「う…………それは、そうかもですけど…………」
「言い方を変えよか、馬車には手綱が付いてるやろ、あれはブレーキやね」
「…………はい」
「要はな、一番大事なのはバランスなんや。まぁ、うちの言葉をどう夕顔ちゃんが捕らえてもええけどな、どんなに早い物でもバランスは取っている筈だよ。空を飛ぶ鳥とかもピューって早いけど何処かにぶつかるとか見ないやろ。それに勝ち負けでも無いしな」
「なるほど、なんとなく解ります」
「せやなぁー。ま、そこまで考えんと良いんでないかな、一生一緒におるわけでもないやろ?」
「あ、あぁ、そうですね。でも私も同じ魔法使いとして生きていけるのか、ちょっと考えてしまって」
「そこはしゃーない。彼女は魔女。別格や、同じ目線で見るのはええが夕顔ちゃんは夕顔ちゃんやで、でも彼女の隣で胸を張って居たいのなら何か、考えるのは良いかもしれんな、唯の形だけどな。形が大事な事もあるし、ま、それを考えるのは良いかもな」
「…………そっか、形ですか。そう考えれば良いんですね」
「せやな。でも夕顔ちゃんに聞いた話で考えるとやっぱ好きにしたらええんとちゃうかなぁ」
「そうなんですか?」
「勝ち負けでも足し引きでもないしなぁー。まぁでも他者を見て自分が解る事も悟る事も良くあるもんや………………何か、急いでいるん?」
「いや、そういう訳では無いですけど……」
「だったら尚更。良い機会と思ってや、まぁ色々とやってみてな。朋ちゃんの事、好きやろ?」
「そりゃー。…………そうですけど。……グラ子さんも好きですよ」
「ならそれでええよ」
「そうなんだ? 簡単ですね」
「だからそうなんだって、夕顔ちゃんは重いなぁー」
「うっ。そんな事…………無いと思うけど」
「でもそんな夕顔ちゃんもうち好きやでー」
「もう。グラ子さん、その言い方はズルいですよ」
「大人の女はズルいもんやで、パッシブで夕顔ちゃんも身につけてや」
「うー。でもそんなにグラ子さん私たちと年齢変わらないでしょ」
「せやな。知らんけど……っと、そろそろ帰ろで、夕顔ちゃん」
「はい。ありがとうございました。グラ子さん、少し、考えてみます」
グラ子さんに帰る間際に図書館の話を聞いた。
明日朋ちゃんに話さないと。
そして別れた帰り道、私は先ほどのアドバイスを考えていた。
好きにしたら良い。
そういう物なのかなぁ? 確かにちょっと気負い過ぎたのかも。
でも魔法に関しては…………厳しいなぁ。
うーん……朋ちゃんに無い物は。
回復か…………。
そうだねぇ、確かに私はよく考えると回復魔法の方が得意な気はする。
精神系の魔法とかもね。
ん、一応候補に入れておこう。
朋ちゃんは学校に行くのかな……明日聞いてみよう。
「むにゃむにゃ…………」
「あん。うふふ……」
「お客さん? そこは違いますよ……」
『絶賛夢見中だね、朋ちゃんはどんな夢を見てるのかなぁ…………』
『しっかし、いやー。良い買い物だった。意識を飛ばすと結構な遠くまで見えるし意識次第で全方向も見えるのう』
『視覚的情報は偉大だな。見て楽しむ、うんうん。素晴らしい。しかもズームまで、この没入感たまんね』
『次は匂いが欲しい。この状態、匂いは解らないんだよなー。くんくんしたいお』
『ってよ、確か意識を同調できるって朋ちゃんポイントであったよな、確か。よく考えたらヤバい。感情移入しまくるかもしれんし感じまくりだ』
『きっと未来の映画館ではそうなるだろうな。4Dとか5Dのその先。一体何Dだよ同調は』
『行き着く先は永遠に夢を見せてくれる代物か、怖いね。夢から覚めなければそれも終着かよ。エンドルフィンまじ凄』
『……もしもこの世の中に神様がいるのなら、んー。まぁ、俺なら全ての生き物と同調するかもしれんな。それは多分、死ぬ程に気持ちが良い何かかもしれない』
『逆も又しかり。恐ろしや恐ろしや』
『とりあえず現状の出来ることを増やして行かないとなぁ…………』




