36私が魔女だから
「おはよう朋ちゃん」
「おはよー。夕顔ちゃん」
「昨日はよく眠れた?」
「うん。良い夢も見てバッチリだよ」
「へェー。どんな夢」
「もう忘れちゃったけど、きっと良い夢だったよ」
「そうなんだ。じゃあ今日は頑張らないとね!」
「うんうん」
朝ご飯を宿で食べてから二人して出かける準備に部屋へ戻り準備万端。
なんとなく部屋でスケルトンちゃんを生成し行ってきますと声を掛けた。
「さぁて、行きますかねー」
「行こう行こうー」
先ずはコボルト退治。
場所は南の方角にあるアスパラ村。
南門から外へ出てどんどん南へ向かうよ、大体三時間ぐらい。
慣れてきたら何か乗り物とかあると便利かも。
姉さんは召喚術で大きい鳥とか、虎とか馬とかたまに使っていたね。
でも姉さん自身が空を飛べたからたまにしか見なかった。
私も早く古代召喚術で私を乗せてくれる子を作れる様にならないと。
……スケルトンちゃんにはまだまだ頼めない。
私のお尻で潰した様な絵しか見えないからね。
とっても恥ずかしいから、それ。
「後一時間ぐらいかねェー」
「そうだね。そろそろもう一度休憩しよ、夕顔ちゃん」
「うん、良いね。あ、あそこの木の木陰にしよう、朋ちゃん」
今日は比較的良い天気でこれからもう少し暑くなりそう。
あちらの街でお昼でも食べて午後からになりそうだねとお茶しながら夕顔ちゃんと話す。
確かメェメェがメェされただったっけ? 何だっけ、忘れちゃった。
どれぐらいの数がいるのかグラ子さんに聞いてみたら、多くても二桁行くか行かないか位じゃ無いかなって話してくれた。
コボルトの習性でそこまで多くの集団行動はしないという話みたい。
変異種も今まで見られたことは無い。
コボルトに近いオオカミ系の動物には変異種は良く見られるらしく、あの災害レベルBの漆黒灰色オオカミとかも変異種の上位。
変異種の恐ろしい所は通常の常識が通じない所にあると魔女の住処にあった本で読んだ。
……出会いませんように。
「そろそろ行こうか朋ちゃん」
「うん。行こう!」
再び私たちは出発し村を目指した。
進む途中で数人の旅商人とか普通の旅人に出会うが、こんにちはーとかの軽い挨拶ぐらい。
私たちの旅も順調に進んだ。
そろそろかなぁと進んでいると、木で出来た看板があり、此処を曲がるとアスパラ村と書かれている。
もうすぐみたい。
進んでいくと、人の叫ぶ声が少し離れた所から聞こえた様な気がした。
「夕顔ちゃん!」
「うん、聞こえた気がする。急ぎましょう!」
私たちは足を速め尚且つ警戒を怠らない。
夕顔ちゃんに私が補助するから朋ちゃんは好きに動いてと指示を貰った。
私は夕顔ちゃんを信じて道を進む。
人が叫ぶ声がどんどん近づいている、もうすぐだ。
道が終わり、村に着くと人々が交戦している。
木々で出来たバリケードが見えその向こうに数十体のコボルトが体躯に合わない大きめの太い棍棒を持ちバリケードを壊そうと振るっている。
対する村人は大体二十人程見えるが老人が半分ぐらい。
女性も少し見える。
バリケードの後ろにある大きい屋敷に他の人は避難していると思われた。
「夕顔ちゃん、行くね!」
「この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。ファイア」
私は呪文を走りながら詠唱しバリケードの端から越えようとしているコボルトに狙いを付け魔法を放った。
私の手から具現された大きめのソレはグングンとそのスピードを早めて対象に向かい、その横っ腹に当たる。
突然意識していなかった方向からの攻撃に他のコボルトも村人もこちらを見る。
「っサラダエクレアからクエストに来ました。加勢します!」
夕顔ちゃんが村の人に対して大きな声で意志を表示してくれた。
私は再び別の獲物を選びながら呪文を練る。私は呪文を詠唱しなくても発動することも出来るが、詠唱した方が精度が上がる。
なので人の多い所では打ち損じたくないので詠唱する様に教わっている。
姉さんの教えは偉大だ。
そして基本四種は始まりの文言が同じなので覚えるという概念もほぼ無い。
語尾を入れ替えるだけ。
次のコボルトに狙いを定める様に私は呪文を詠唱する。
「この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。アイス」
私の手から発せられた水と氷の入り交じる線アイスは対象のコボルトに勢いよく当たる。
これで二匹目。
先ほどのコボルトも戦闘不能になっている所を村人が、トドメとばかりに木の棒で殴っているのを目の端で捉えた。
私の勢いは止まらない。
次に狙いを定め詠唱。
「この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。サンド」
手からは砂の混じった大きめの岩が対象めがけて飛んでいく。
コレをみた人は何故か皆んな驚いている様で「うぉー」とか聞こえる。
確かにあんな大きな岩が凄い早さで飛んでいるのはある意味恐怖かもしれない。
あの岩は人間の手で持てる重さを超えている。
そんな物が飛んでいること、ソレ事態がおかしいのだ。
その岩はまたもや対象に。
綺麗にとはとても言えない、汚くぐしゃっとぶつかる。
多分色々潰れているかも。色々と……。
私はすかさず獲物を探す。
もう私の目は猛獣のソレと何ら変わらないかもしれない。
異変を察した敵の何かは一声吠える。
すると敵コボルトは一斉に逃げ出した。
私は追い打ちを掛けようか悩み夕顔ちゃんを眼を滑らせて見た。
「朋ちゃん、終わり。……一旦整えよう」
夕顔ちゃんは指示をくれた。
うん、終わりにしよう。
私は一息大きく息を吸い自分を落ち着かせる、そして私たちはそのまま村人の手助けに目を向けた。
戦闘終了。
「ありがとう。本当に、何て言ったら良いか。…………ありがとうございます」
アスパラ村の村長を名乗る人物とその村の人々、ほぼ全員と思えるぐらいの人数が私たちの目の前でお礼を言っている。
先ほどまで夕顔ちゃんの魔法による治療は役に立ち、中軽傷ほどの人達は快方に向かっているみたい。
それ以上のけが人も大怪我の人も三人出てしまっていたらしく、夕顔ちゃんが応急処置を施した。
その後直ぐさま村にある馬車でサラダエクレアの街へと向かった。
村長の話によるとコボルト達は先週ぐらいまでは何時もと同じ、一日から二日にかけて、村で飼っている鳥や山羊、馬や牛などの家畜を一、二匹程攫っていたらしい。
大体、日に一匹。
それが四日前から……そして突然何も盗られなくなった。
村の住人全員で何かあったんだろう。
まぁ、とりあえずは良い事だと喜んでいたのが、昨日の夜。
突然大きい犬が現れて、その犬が村の中で家畜を襲いだし残虐の限りを尽くしだした。
村の住人は恐怖の余り皆で避難したのだが、他の住人の投げた石などが切っ掛けとなった様で村人まで襲いだした。
その大きい犬、調べによると変異種マーメイドウルフが、ひと鳴きすると、数日間現れなかったコボルトが大勢現れて、同じように家畜を襲い更に人まで襲いだした。
村人の避難は済ませておいたので大惨事にはならなかったが、数時間前から避難していた此処村長宅に
まで狙いを付けられた。
家の半分以上はバリケードでなんとなく防護出来ていたのだが、残りの部分を守る人達が大怪我をしてしまったらしい。
「とりあえずは何とかなったわね」
「夕顔ちゃん応急お疲れ様。私には出来ないから誇らしいし羨ましいな回復術」
「朋ちゃんも…………ちょっと後でゆっくり話しましょう。貴方は規格外です」
「ええと、規格外?」
「とりあえずこれからどうするか村長に話しに行きましょう。朋ちゃん」
「あ、うん。そうだね」
村長は色々と忙しいみたいだけど私たちが会いに行くと直ぐに話を聞いてくれた。
「とりあえず、今更ですけど、私たちはサラダエクレア街の冒険者ギルドからクエストでやってきた冒険者です。私が夕顔で隣が朋ちゃんです」
「わざわざありがとうございます。……今回あなた方がいなかったらこの村は最悪、無くなっていたかも知れません」
「間に合って良かった。そして今回の依頼なのですが、どうしましょうか」
「こちらとしては引き続き助けて欲しいのですが、依頼内容が変わってしまいますよね…………」
「そうですね。マーメイドウルフがいるらしいと聞きました、確か変異種マーメイドウルフは災害レベルE指定だったはず」
「はい。村の詳しい者に先ほど確認しました。その様に聞き及んでおります……」
「習性はその集団ないし少ない数の群れに入り込みその者たちを先導する。……だったと思います」
「…………ではあのコボルト達はそれが原因であんな風に凶暴化したのでしょうね」
「恐らく……。朋ちゃん、この依頼引き続き受ける?」
「んー。私としては受けたいかな。……このまま終わりでは寝覚めが悪くなるよ、夕顔ちゃん」
「おっけ、継続しましょう。すみませんが村長さん、寝る場所と食事などこちらでお世話になれますか?」
「それはもう、ご用意させていただきます。…………よろしくお願いします」
村長さんの用意してくれた場所は村長宅の隣の家。
今の家を建て替える前の家みたいで空き家との事。
私たちは用意された豪華な食事を村長さんの家でたらふく食べた。
もう入らないよぉ……デザート以外。
食後も少し村の人と世間話をする。
皆んな私の魔法が気になっていたみたい。
色々と褒められ感謝もされた。
魔法は私が魔女となる証。
「ふー。お腹いっぱいだね、朋ちゃん」
「うんうん、もうお腹ぽんぽこりん。狸と間違われたらどうしよー」
「あはは。こんな可愛い狸がいるもんですか」
「えへへー。夕顔ちゃんも可愛いよー」
狸の話でキャッキャした後、夕顔ちゃんと明日以降の事を話そうという流れになった。
「とりあえず、今日は凄く上手く行ったわ、私の中では満点だった。後は残りのコボルト達とマーメイドウルフね」
「そうだね、前もって聞いていた話だとコボルト達は多くても二十体はいないって話だったよね」
「ん。そうね、問題はマーメイドウルフの方かしらね、やっぱり」
「でも災害レベルE指定なら指定災害の中でも一番低いし、なんとかなるよ」
「私の知っている知識だと、マーメイドウルフはゴブリン三体から五体分ぐらいの強さって聞いたことがあるわ。多分、私の魔法だと五分五分ね……」
「……ゴブリンだけに?」
「そう、ごぶごぶ。……朋ちゃん此処にはツッコミ役のグラ子さんはいないわよ、残念だけど」
「あは。そうだね、まぁなんとかするよ。今日みたいに行けると私は戦い易いかなぁ」
「――――うん。解った、それはそうと朋ちゃん……何であんなに魔法が凄いのよ! ちょっと私に教えなさいよ!」
「え? あぁ、多分私が魔女だからだよ」
「……………………ええと? 魔女?」
「うん。そう、正確には魔女見習いだけどね」
「魔女ってあの…………昔話や教科書にも載っていたりというあの有名な?」
「そうみたいね、私は読んだことも無いけど。私は魔女の住処の見習い。そしてメルヴィッセさんは私の大事な家族」
「………………解った、うん。納得した。そりゃね、魔女の住処の人なんてこの国の人で知らない人はいないわよ」
「えぇ? ……そんなに?」
「そりゃそうでしょ。この国の歴史、生い立ちを考えればね。分岐点には必ず魔女の住処の魔女が絡んでいるの」
「……そうなんだ」
「そうなんだよ。あー、そっかそっか、グラ子さんめ。敢えて私に話さなかったなぁー。くぅー、見れば解る所か聞けば納得するよそんなの」
「そうなんだ?」
「そうなのだよ! んもう……」
「何か、ごめんなさい。……私、話し忘れてたね、そんなに重要かとか、解らなかった。あんまり話さない方が良いって何処かで聞いた気がするし…………」
「――――それは、そうかもだけど…………でもあんな魔法見れば、何あの大きさのファイア。他の魔法も私の扱う物との違いが、うーん。……三倍、いや、五倍ぐらい?」
「多分魔女の住処の影響と高位魔術展開が影響しているのかもね……」
「へ? 高位魔術展開ってま、ままままままま?」
「…………ち、ちょっと夕顔ちゃんだ、だだだ大丈夫?」
「んぐっ。すーはー。ちょっともしかして高位魔術展開をコードに持っているって言うの?」
「あ、うん。選ばないけどね」
「は? え? もう、訳が分からないよ。ちょっと朋ちゃん。く、わ、し、く教えて! 私のも話すからっ!」
そのまま私の現状のスキルを隠し事せずに夕顔ちゃんへ話した。
スケルトンちゃんもね。
夕顔ちゃんはスケルトンちゃんみたいな顔をしていた気がする。
隣に生成したら怒るかな? 今度しれっとやっちゃお。
夕顔ちゃんもコードとして秘術、観測者を取得していて真実が見えるって言ってたね。
今はまだこれは良いとか、良くないとか普通とかしか解らないみたいだけど開眼すると別の世界線が見えるようになるとか、理が見えるかもとかこの世界の真実に近づけるっていうスキルみたい。
何だか凄そうだけどね。
私の目は誤魔化せないわよ! 的な感じでかっこよすいー。
今度是非に言って貰おう。
私は痺れちゃうかもしれない。
もうビリビリだよ。
「はぁー。現実を受け入れるのがこんなに大変なんて、隣の家の箱入り娘的なお姉ちゃんの子供が誰の子か解らない時ぐらい受け入れられないわよ」
「その例えは微妙だね、面白そうだけど」
「あれはもうね、毎日が修羅場みたいに見えたわよ……もうドロドロ。周りにいる男性全員容疑者。私のお兄ちゃんとお父さんまでね」
「なるほど、それは怖いね、絶妙に…………でも面白そう」
「聞く分にはね。……あれは見てられなかったわ、でももっと恐ろしいのは私だけきっと数年後に見たら真実が解ってしまうって所ね」
「なにそれこわわ。あ、でも、真実が見えたわ! 私の目は誤魔化せないわよ! って言って欲しい」
「いや、そんな真実、暴けないわよ。……実際」
「だよね…………それが現実だね」
夕顔ちゃんの家庭環境が垣間見えてしまった。
私は高位魔術展開の事と古代召喚術、そして剣術(大)の事を夕顔ちゃんに伝えると、もしかしたら朋ちゃん。
魔王になっちゃうかもって。
何処かでそんな感じの事を言われた気がするけど、んー。
誰だったかなぁ? まぁ良いか。
ご拝読頂きありがとうございました!
少し長め。
次も長めです。




