29動く二人の奏でる音は
「あんなのが一杯いたら嫌だね」
「それは、もう一生のトラウマになるから止めてー」
「うっ、気持ち悪い。おええ…………」
私もこの前のゴブリンをまた思い出してしまった。
あれは風が気持ちの良い丘の上。
ほのぼのとした風景。
そんな中に突く臭い。
ツンとしたそれは見る者と一致する――――。
そして嗤い。
玩具を、食べ物を、人、私を見る目、あの目、駄目だ…………まだ無理。
「と、朋ちゃん大丈夫?」
「う、んん。だい、大丈夫。お水飲む…………」
あー。
私は早くコレを克服しないといけない、強くならないと。
私、これ克服しないとゴブリン倒せないかも…………。
「どう? 落ち着いた? 朋ちゃん」
「うん、もう平気。すーはー、ふー、うん行ける。……よし、午後も頑張ろう」
それからお花摘みを再開した私たち。
先ほどのスライムは現れない。
順調に摘み摘みして問題なく終わった。
「そろそろ良いね」
「うんうん、次はしーの実に行こう、夕顔ちゃん」
森林の中に入ると少しヒヤッとした。
日が当たらないからね、お空の日差しも少ししか入ってこられない、ひんやりひんやり。
でもちょっと視界も悪くなるし、さっきのスライムとか出てきたら怖いよね。
なのであんまり森の奥、深くは入らない。
目の前に出口のように見える日差しが届いている範囲でしーの実を探した。
しーの実はしーの木から出来る実で似ている実でドングリもある。
調理方法に依ってはドングリも食べられるとは思うけど、そのまま食べるとしたら、しーの実の方がまだ美味しい。
多分何かをこの実から作ると思うんだけど何を作るんだろう?
魔女の住処にもしーの木は何本かあったなぁ。
「結構落ちているね、朋ちゃん」
「そうだねー、でもどれぐらい持って帰るとか特に無いから、時間で切り上げた方が良いのかも知れないね」
じゃーあと一時間ぐらいにしよう、と決めた。
多分此処でも鐘は聞こえるとは思うけど、夜になったら怖いからねっ。
そのまま今日届けても良いし。
まぁ、明日でも良いか。
私たちは黙々と木の実を拾った。
「ふぃー。そろそろ終わりにする? 朋ちゃん?」
「んー。そうしようか」
時間は過ぎ少し風が出てきた。
もう後一、二時間すれば結構暗くなってくるかな。
私は大量の木の実を袋一杯に持っている。
それは夕顔ちゃんの方も同じみたいで、もう二人とも動くと木の実の音がガサガサと鳴る鳴る。
鳴るついでに二人でガサガサと音を鳴らし合って笑った。
「今日の獲物はたいりょうです。夕顔たいちょー」
「……うむ。毎日これぐらいの木の実を手にすることが出来れば我が国は安泰なのであるー」
「あはは、誰、誰?」
「知らないよー。森の番人かなぁー」
「少しドングリとかも混じっちゃったかも」
「そうだね、私の方もそんな感じだよ。そろそろ戻ろっか」
足下に落ちていた小枝をパキパキと踏みながら森林から出ると、うーん。
丁度良い暖かさ、結構森の中は寒かったのかも。
出てみて気がついた。
二人とも動く度にガサガサと音を奏でている私たちは森の音楽隊。
でもちょっと五月蠅いかも。
誰も踊りには来ない。
スライムくん。君は来ないでね。
あとあとゴブリンさんも絶対に来ない様にね。
お姉さんこと私との約束だよ。
帰り道は順調に順調です。
えっとね、今さら気がついたんだけど、おやつ食べ忘れちゃったよ。
東門に辿り着いた所で鐘が鳴った。
ダイラックの鐘の音とはまた違うんだよね、ここの鐘は。
もしかして、街ごとに違うのかな…………。
行きと同じ門番さんに、気を付けて行ってきました。
と話すと「お花は摘めたかい?」と聞かれたので、一杯摘んできましたと笑顔で答えたら難しそうな顔で「済まない、俺が悪かった」と謝られた。
んー世の中はとても難しいみたい。
後で意味が解った私はこの門番さんを紳士な門番さんと心の中で呼んでいる。
煩悩さんとはえらい違いだよ、まったくもう…………あれれ? 何があったんだっけ? 忘れちゃった。
……いや、思い出せないかなぁ?
「さて、このまま届ける? 夕顔ちゃん」
「うーん、冒険者ギルドにも行かないとだから、しーの実は明日にしよっか。ガサガサの音は凄いけど」
「そうだね。……とりあえず冒険者ギルドに行ってグラ子さんに話してみようよ」
そんな感じで冒険者ギルドへ。
冒険者ギルドの中へ入ると時間帯なのか、結構混んでいた。
多分、依頼達成とかの手続きが夕方は多いのかな?
私たちは五番カウンターへ行き、二人とも席に座りボタンを押した。
確か、これで良いはず…………。
すると数分後にグラ子さんは現れた。
此処まで小走りで来たみたい。
少し息を切らしてひーふーしているよ。
……結構遠くから走ってきたのかしら?
「ひぃ、ふぅ。んんっと、お待たせー、お二人さん。依頼の方はどうやった?」
「はい、此処にあります」
袋一杯に詰まったロレンの花をグラ子さんに三袋分渡すとグラ子さんは、おお。一杯だねと受け取ってくれた。
「ほな依頼は完了やね、ちと待ってやー」
グラ子さんは何かの操作をしているのか、ピッピッと音が鳴っている。
よく見ると、反対側にも登録証をかざす機械がありそこで何かの操作をしているのかしら。
「よっしゃ、これでええよ、順番でそっちの銀盤に登録証をかざしてーな」
私たち二人は頷くと言われた通り順番に登録証をかざす。
かざし終わるとどこからともなく、あ、目の前の銀盤? から「お疲れ様でした。これで依頼完了です」
と何か、無機質な声が聞こえた。
グラ子さんは一袋千クアレットやから、一人千五百クアレットや。
調べたかったら、銀盤で調べてーなと話している。
「しーの実はどうだった?」
「はい、一杯ありました」
グラ子さんにしーの実の入ったガサガサと音の鳴る袋を見せて、渡しに行くのは明日にしようか悩んでいる事を伝えた。
「結構集めたな、しーの実。んー今日は時間も時間だし、こっちでそれ預かるで、明日また私に会いに来てや、それで渡しに行ってよ」
「ありがとう。ちょっとコレ一旦でも持ち帰るのは…………とか思ってて」
「これだけあると音が凄いからね、結構重いし」
グラ子さんに大量のしーの実を渡すと「ちょっとまっててなー」とそれを持ち、ふらつきながら何処かへ行ってしまった。
数分後、戻って来ると、グラ子さんはおつかれさん。
これで今日は終わりやね、また明日来てなと私たちに話した。
「なーなー二人とも、この後一緒に、夕ご飯でも食べに行かへんか?」
「うーんと、夕顔ちゃんどうする? 時間あるかな?」
「私は大丈夫だよ、行こー」
「じゃあ一緒に行こう」
グラ子さんからの食事のお誘い、ちょっと臨時収入みたいなのがあったから、今日はおごるでーと話している。
今日はもう仕事終わりやしちっとまっててなーと言って帰る準備と身支度をしている。
その間、周囲をみていて思ったんだけど、私たちって結構、見られてる?
うーん。
浮いてるだけかな、ぷかぷかと。
ご拝読頂きありがとうございました!




