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19初めての強者リセルさんは朋ちゃん推しガチ勢

ふー『海月の水藻』に戻って来られた。受付のファーナさんにただいまーと声を掛けると今日も夕ご飯のチケットを貰えた。


残りは纏めて渡しておくからと同じチケットを計六枚貰った。一応チケットに有効期限は無いから、何時でも使えるよ。と教えてくれた。一旦お部屋に戻り一息ついてから昨日と同様『豊穣なる宴枷』に向かった。


あー。お腹減ったぁー。朝食べたきりだし、今日は何度、通りで買い食いしようかと思った事か。明日は我慢せずに通りで何か買ってみようかな。んー。今日のーご飯はなんだろな。


『豊穣なる宴枷』に辿り着き扉を開くと同時に、そう同時にリセルさんが現れた。どうする?



→逃げる(追いつかれる事必死)

→戦う(まず勝てない)

→魅了(む、MPとお色気が足りない)

→泣く(唯一、勝利出来るが、それは本当に勝利か? いや引き分けか負け)

→全てを受け入れる(菩薩の心よ)

→変身する(???)



何故か頭の中に変な選択肢が浮かび上がった。ひとつずつカーソルが動き何だろうこれと悩んでいると時間切れですと勝手に選ばれた気がする。


「いらっしゃい朋ちゃん! ずっと待ってたよー」


「重いよ…………菩薩様でお願いします」


「え? あぁ、メニューね…………そんなメニューあったかなぁ? ま、まぁまぁ、座ってー。奥の席取っておいたからさぁ」


「は、はい。今日もお願いします」


それは幸せの一つの答え。受け入れる。私は何かを悟った。しかしレベルは上がらなかった。


「今日もおすすめで良いかなー」


「はい。お任せします(全てを受け入れると幸せです)」


「今日のおすすめはねー。海サーモンとキノコのトマトクリーム風パスタにカナギル豚のドリアだよ」


「お、美味しそうですね。もう名前の雰囲気でわかりみ感じますです」


「うんうん。今日のもおいしいよー」


お店の奥の方に扉があり、そこの扉をくぐった先に席はあった。どうやら此処らしい。扉を見るとVIPと書いてある。


席に誘導されふかふかな椅子に座る私。私は昔話か何かの最後には食べられてしまうお話を思い浮かべた。流石に受け入れられないよぉ。


そんな心理状態の私をじっと見つめるそのお人はリセルさん。


「朋ちゃんはアイドルになると良いと思うんだ(真剣)」


「あ、アイドルって何ですか?」


「歌う人だよ」


「え……………………」


ご飯の前に腹ぺこの歌を私に歌えと? そんなご無体なぁ。


「良いと思うんだよなー。あぁ、ユニットも良いねー。うんうん。箱で推せるし。最低でも後二人欲しいなー」


「ゆ、ユニット? 箱? 後二人……」


合唱させる気なのかしら…………あの歌を。なんて恐ろしいことを考えるんだ、この人は。


「まぁ、考えておいてねー。朋ちゃん」


何をどう考えろと? これは姉さんに相談しないと。いやいや何だかお話が余り良くない方向に行っている気がする。話題を変えないと。


「あー朋ちゃんの事さぁ、姫様って呼んで良い? 良いよね!」


一人で独走しているよぉ。もう止められない。うーんと。


「え、えーと、リセルさんはあのお店が一杯並んだ通りの事知ってますか?」


「あぁ、ダイラックの中で一番栄えている通りだからね『クロシマメノウ通り』は」


「私、そこでお使いの目的である品物を探してるんです」


「あー。それが今回の目的なんだ。へぇー。どんな物を探しているの? 差し支えなければ教えて」


「それが、今日歩き回ったんですけど、全然売って無くて」


「へぇー。ダイラックで売ってない物って結構希少でね、必ず理由があるのよ」


「そうなんですか?」


「そうそう。単に希少過ぎて入荷されないとかもあるけどさ、此処は『自由都市エスタリアス国』の中でも商いに関しては玄関口とも呼ばれているからねぇ。何処の外国から来ようと一旦は此処を通過する。そういう風に出来ているって話は結構有名だよ」


「なるほど。そうなんですね、まだ届いてないのかなぁ…………」


「因みにどんな物を買いたいの?」


「あぁ、えっと、水母の骨っていう骨とハーストイーグルの爪という爪です」


「…………何処かで聞いたことあるんだけどなぁ、二つとも。でも忘れちゃったわ。何故聞いたことがあるのかが不思議なぐらいに私は詳しくないんだけどね、その手の話に」


「そうですか」


「でも、思い出すかも。少し思い出してみるから明日も来てよ」


リセルさんは妖艶な笑みを見せながら私にそう話した。



美味しい食事を食べて宿へ帰宅。今日の反省をしてみることにした。うーん。実際まだ此処へ届いていなければ何処にも売っていないのは道理だよねぇ。


どういう風に探すのが効率が良いのだろう。あの『クロシマメノウ通り』って。実際広すぎるのよね。一日掛けても全部は私には回れそうも無いよ。


うーん…………あ、そうか。「少し大きめの繁盛しているお店に聞いてみようかなぁ」私は言葉に出して考えを纏めた時窓の外からバサバサと何かの音が聞こえた気がした。


その後は直ぐに眠くなり私は寝てしまった。すやすや。



『ふむ。なるほどな。状況がなんとなく分かってきたぞ』


『えーと。今の時点で俺に出来ることは無いな。うん』


『しっかし、一つだけ謎があるんだけどなぁ…………。俺一体どういう力でこの視点を得ているんだろう?』


『意識を向けるとそっちの方角を見えるし、意識すれば自分の姿も見える。これどういう仕組みなのかね、これだけは分からん』


『かといって意識を向けないと何も見えないんだよな。不思議ぃ』


『俺から見た自分、というか、朋ちゃんはなんだろ、俺の中の女の子成分が開花しているというか、多分、俺が女の子として育ったらこうなる、という状態なのかね。きっと……』


『まぁ、自分、可愛いよね。自分を愛でる言葉ってあったっけ? 知らんな。今度作るか?』


『でも言葉使いとか、思考の様子がおかしいんだよなぁ、何故か』


『まぁ、姿は穂美香の子供の頃そっくりだから身体は穂美香の物なんだよなぁ。えーと、じゃあ穂美香自身は何処に? って話になるよな、これは』


『やはり、現時点で俺に出来ることは……さっきのおもちゃで遊んでることぐらいかな。仮想空間みたいにして使えているし、経験値みたいな物も入っている様子もある。これは何時か役に立つだろう。俺は寝なくても良い状態みたいだし、暇つぶしの代わりだ』


『もっと情報を集めて、更に今できることを確認しておこう。とりあえず愚痴は一旦、回収出来たし。悪いけどな』


『しっかし、悪あがきが凄いから全部は吸収出来ないなこれ。くそー。あいつ俺に何か隠しているぞ。そこまでして隠したい事って何だよもうめんどくせえ』



「ん。んん?」


「ああ、朝だね」


朝日が窓から覗いている。今日はよく寝られた気がする。うん。体調も良いよ。


「よしっ!」


今日は何するんだったかな…………。聞き込みとうーん、冒険者ギルドにも行かなきゃ。


エッタさんに姉さんからの手紙、届けなきゃだね。後、何か有ったかしら?



今日も昨日と同様に朝ご飯は此処『海月の水藻』にて食べてから『クロシマメノウ通り』を目指した。

ファーナさんは今日も忙しそうに受付全般のお仕事をしている。いってきますーぐらいの声かけしか出来なかった。


忙しそうだと話しかけるタイミングを考えちゃうよね。


通りに辿り着くと今日も此処は人が多い。一体毎日みんな何を求めているんだろう?


まぁ、私もお探し物中だけどね。とか考えながら今日は『しずき通り』と隣の『緑一色通り』をまずは昨日と同じように見て回ったが、そうだとは思っていたけど、やはり無かった。仕方が無いと思いつつ大きそうなお店に聞いてみることにした。


通りの中で一番大きそうなお店一つずつ聞いて回ってみようまずは『緑一色通り』から。


「すみませんー」


「えー。はい。お嬢ちゃん、どうしたんだい?」


「えっと、水母の骨っていう骨とハーストイーグルの爪という爪を探しているのですが、此処にはありますか?」


「……………………。えーと、あぁ。そう。『此処には無いよ』お嬢ちゃん。済まないね、他を当たってくれ」


「…………そうですか。分かりました。ありがとう」


一件目は無かった、でもお店の人、少し……気のせいかな? 次にいってみよー。


続いて隣の『しずき通り』で一番大きそうなお店の人に声を掛ける。他にお客さんも多くてお店の人も大変そうだけど話しかけると私に答えてくれた。


「此処にはないねぇ、他探してみてくれ」


うーん。何か変だよう。なんだろうこの違和感。


まぁ、次行こうか。とばかりにその他の通りの大きい店舗に聞いてみたが帰ってくる答えは殆ど同じ。


感じる違和感も同様とこれは何かあるのは明白ですよ!(名探偵)



でもどうしたら良いのかな? これはもしかしたら違和感で済まない問題な気もする。うーんうーん。と悩んだが答えは出ないから、『パプリカ橙大通り』の露天で買ったメラッピ鳥の卵焼きと一角牛の串焼きを食べてから早めに冒険者ギルドへと向かう事にした。


これは一週間此処にいても買えないかもしれない。という不安が私を襲ったが、もしかしたら私が思っているよりもレアな商品なのかもしれない。


という考えも思わずにはいられなかった。でもあのお店の人の態度というか、違和感、変だなぁ。あ、あれ? しかも私、誰かに見られている?


って思って振り返り周囲を見渡すが特に何も無かった。気のせい、かな? 特訓で姉さんに追いかけられるとか追いかけるとか探すなどをしていたからか少し感覚が鋭くなった筈だけど、違ったかな? でも最近何処かでバサバサという音を良く聞いている気もする。


冒険者ギルドに着いて扉を開けるとやはりギルドから出てきた人とぶつかった「ああーごめんね。可愛いお嬢ちゃん」


その人はそのまま行ってしまう。もう運命通り越してるよね? この所行。


姉さんの特訓をくぐり抜けた私にぶつかる人。もうそれは故意にぶつかっているとしか思えないよ?



中に入ると比較的人は少ない。この前のゴブリン騒動の時はぎゅーぎゅーだったけど今日は空いていて快適。えーと、そうだ、エッタさんだ。んー。あ、シーラさんいるから声を掛けよう。


手が空いていそうな時を見計らいシーラさんに声を掛けた。


「こんにちは」


「あ、朋ちゃんおひさぁ」


「ちょっとエッタさんに姉さんからのお手紙渡したいんだけど、今日いるかな?」


「あー。今日は隣街まで出かけているみたいだから遅くなるって聞いているよ」


「あぅ。残念」


「ここ一週間程は結構忙しいみたいで中々会えないかも」


「そっかぁー」


「良ければ私、預かるけど、どうする?」


あぁ、んー。預かり物を預けてしまうのは心苦しいけど一番良い気もする。


「じゃあお願い。シーラさん」


「うん。任されたよ。朋ちゃん」


最近街の様子はあれからどう? と聞くと、あ、うん。最近は結構平和だったんだけど、ここ数日なんとなく不穏な空気が流れているね。とシーラさん。


「不穏?」


「うん。なんとなくのカンみたいなものも含まれているんだけど全体的にざわついているって言うのかなぁ……」


「ふーむ。何かあるのかね」


「うん。嵐の前の静けさって言う奴だよ。きっと」


「そんななんだ」


「そうだね。何かは分からないけど、上の人はきっと把握してるね」


周囲の混雑具合などを見ながらシーラさんにお話してみたけど余り長くは悪いので切り上げて帰る事にした。


「じゃあまたくるねー」


「うん。お手紙は責任を持って渡すから、安心してね」


「ありがとー。シーラさん。また、あ、明日も来られたら来るね」


「うんうん。またねっ」


徐々に人が増え始めた冒険者ギルドを出て少し早めに『豊穣なる宴枷』へ行く事にした。んー。リセルさん思い出すと良いなぁ。


ちょっと手づまりだね。あ、図書館で調べてみるのも良いかも、今からだと遅いか、明日にしよう。


他に良い手は無いかなぁ…………。明日で半分だ。もう少しで姉さんに会える。もう少し頑張ろう。


ギルドからの道のりはなんとなく重く感じた。


「「「いらっしゃーい」」」


『豊穣なる宴枷』に着いて扉を開くとそこにリセルさんはいなかった。あれ?


何時もなら直ぐにでも駆けつけてくれそうなリセルさんだがどうかしたのだろうか?



ご拝読頂きありがとうございました!

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