17私はエリート魔女子さん。純正でしてしかもロリ
最近街並みを見ながら考え事してたら目的地に着く事が多い気がする。いつの間にかギルドを通り越して、振り向くと食べ物屋さんを今通り越した所だった。
この辺からなんだけどなぁ。と思い見渡してみると確かにそれっぽい雰囲気? がある。入り口には宿屋の名前と値段が書いてある所もあるね。
全く情報の無い私は悩みながら歩いていた。そのまま十分程歩いて見て回っていると。
「ねーねー。お泊まり? この辺じゃ見かけないね、お姉さん」
誰かにそう話しかけられ振り向くと私ぐらいの大きさの女の子に話しかけられた。
「え、私? 私はお姉さんじゃ…………」
「この辺は宿屋が密集する地域だからさ、知らない人は大抵お客さんなんだよね」
「そうなんだ。確かに泊まれるところを探していたの。でも詳しくないから探してたんだ」
「やったぁ! 丁度良いから家においでよ。うち宿屋なんだ。私はパセリ。よろしくね、お姉さん」
「え、あ、うん。よろしく。私は朋といいます」
歩きながらパセリちゃんとお話したら、私よりも年下だった。だから私はお姉さん。うん。うん。良いね。お姉さん。
なんとなく強くなった気がした私は結構単純だった。パセリちゃんと話していたら何かに悩んでいた事も忘れちゃった。なんだったっけ?
てくてくと二人で歩きながら話していたら此処だよっと建物を指さし受付まで案内してくれた。
「いらっしゃい。あら、パセリ」
「姉ちゃんお客さん連れてきたよー」
「…………どうも」
「はい。いらっしゃい。あ、パセリ、裏で母さんの手伝いしてきて」
「うん。わかったよ。じゃあ朋お姉さんまたね」
「えーと、本当にお泊まりで良いの?」
「あ、はい。泊まれる所を丁度、探してて……」
「えーと、うちは一晩で三千クアレットから良いお部屋だと一万クアレットなんだけど」
「はい。お金はあります。あ、登録証にも入っているのでこれで大丈夫ですか?」
「おぉ。まだうちのパセリと同じぐらいなのにしっかりしてるわね。登録証もってるんだ。なら大丈夫」
「はい。この前、登録しました。ええと、お勧めのお部屋はお幾らぐらいですか?」
「そうだね。おすすめは五千クアレット以上なら何にも不便は無いと思うよ。以下だと夕ご飯、朝ご飯が付いてないとか、お部屋が狭めとか、床のスペースだけってのも、もっと格安であるにはあるけどおすすめまでは出来ないかな」
「じゃあ五千クアレットのお部屋でお願いします」
「はい。ええと、何泊、泊まる予定かな?」
「えーと、一週間ほどを予定してます」
「纏めて一週間泊まりでも良いかな?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、少し値引かれるから、三万三千クアレットだけど良いかな?」
「はい。それでお願いします」
「じゃあその銀盤に登録証をかざしてね」
その後、受付のパセリちゃんのお姉ちゃん、ファーナさんと色々お話できた。何処から来たの? と聞かれて魔女の住処からです――と話すと「うわ、エリート魔女子さんだ」といわれた。少し引いている気がする。「…………本物、初めて見た。よろしくね」と。私も少し引きスペースが広がった。これは心の距離。その後すぐ縮まったからいーの。
「魔女の住処って、どんなイメージなんですか?」と気になって聞いてみると。
「…………ある意味一つの権威なんだよね。歴史的にもこの国との関わりも含めて、歴史にも出てくるし。時代によっては人々から非難をあびた事もあったみたいだけど、今では勇者とかと並ぶ概念に近い何かなんだよね。あとは碧と朱の勇者への盾」
「何か、凄く詳しいですね。以外に私、魔女の住処の事知らないかも…………」
「学校へ行くと教科書にも出てくるからね、現党首はメルヴィッセ。悠久の魔女と言われている使い手だね。彼女も歴代の魔女の中でも強いらしいね」
「へぇー。姉さんそんな凄いんだ。あ、碧と朱の勇者って何ですか?」
「あー。うーんと、ちょっと私から説明するには解釈が変わるから、もっと詳しい人かお姉さんに聞いた方が良いかも。善悪がねー」
「そうなんだ。色々有り難う。ファーナさん」
お話している所にお客さん来たから、この辺で聞くのを止めておいた。お部屋は二百十号室と二階の奥の方だよと教えてくれた。
二階に上がるとお部屋は結構ある。私は二百十、二百十と呪文を唱えながら部屋を探す。なんだ一番奥じゃない。
預かった鍵を使うと結構、綺麗で使い勝手の良さそうなお部屋だった。えー何か、良いお部屋。良く解らない罪悪感を感じるのは何故だろう。
……それは私が小心者だから。多分。大体広さ六畳程の広さで縦長のお部屋、お風呂も簡易的だけど付いている。
……水と、お湯…………は魔法の護符が十枚在る。えーと、使わなくてもお湯出せるけど、使っても良いのかな、これ。
護符は上位版で念じただけで誰でも使える。魔石だと簡易版でマナを込めないと使えないんだよね。
うんうん。良いね。前向き前向き。と思わないと寂しくなりそう。でも一週間だし、頑張れ私。
その後、受付に行くと、ファーナさんに何か渡された。
「これは夕食チケットだよ。此処の通りを少し戻ると食べ物屋さん一杯あるから、大体のお店で使えるから、一応目印があって、これ」
ファーナさんは両手にフォークとナイフを持ったわんぱくそうな男の子の絵を見せてくれた。「まぁうちでも使えるけど……」と話しながら。
「この絵が飾ってあるところは提携してるから、チケットも使えるし、割引も効くよ。是非行ってね。お勧めは『豊穣なる宴枷』
ってお店が此処からちょっと歩いた左手にあるよ。ウエイトレスでリセルって子がいるから、もし行ったら私から聞いたって話してみてね」
「うん。ありがとう。行ってみるね」
「リセは魔女オタだから良くしてくれるよ。あっ、いけない。此処の宿屋の名前、言ってなかったね。此処は『海月の水藻』っていう宿だよ。今更だけど。
「あー。そういえば今更ですね。……んんと魔女オタって何ですか?」
「…………えっと、うんと、えーまぁ。何というか魔女がというか、魔女の生態がいや、生き様か? そう、うん。魔女が好きなんだ」
「そうなん……だ?」
魔女オタ…………何だろう、私、何か凄く知っている気がするんだけど、オタ…………。でもわかんない。本能は私、これ知ってるよ! って。
ワクワクしているもう一人の自分がいるみたいな感覚? うーん。なんだろ? でも魔女が好きって面と向かって言われたらちょっと、あ、いいです。
って素で引き答えしちゃいそう。あれ、まただ、何か、自分の思考の感覚が変なんだよね、最近。なんていうか、考え方と語彙が。
「だからって訳でも無いけど、ご飯も美味しいしお勧めだよ」
ありがとうとファーナさんに伝えて私はお勧めのご飯屋さんを目指す事にした。
さっきパセリちゃんから聞いたこの辺一帯は宿屋街と言うらしく三十件近くの宿屋さんが並んでいる。右も左も何処も宿って口ずさんでたね。さっき。
段々と見慣れては来てるんだけど、やっぱりこの街、人が多い。私が知っているのはサーリスト村しか比較出来ないけどもう人多い。
姉さんと買い物で他の街にも幾つか行ったけど、これほどでは無かった気がする。そういえば街の名前は忘れちゃったなぁ。
あ、あれかな? えーと『豊穣なる宴枷』って書いてあるね。初めて入る所はちょっとドキドキするけど行ってみよう。
扉をくぐるとドアに鐘の様な物が付いているのかカラン、カランと音を立てた。その大きくも無い音にすら私はドキドキしている。
「「「「「いらっしゃいー」」」」」
入るやいなや、数人のお店の方に声を掛けられた。多分私、身体ぴくってなってたかも。
中の様子、雰囲気を見ているとウェイトレスさんの一人が声を掛けてくれた。
「いらっしゃいー。えーと、お客さんはうち初めてかな?」
「は、はい。そうです。えっと、おすすめされて来ました」
「おっ。良いねー。誰にお勧めされたの?」
「はい。ファーナさんにあ、えーとリセルさんっていらっしゃいますか?」
「あ、リセルね、ちょっとまっててねー」
「おーい。リセー。お客さんだよー。ファーナさんからだよー」
「ういよー。あ、じゃこっち、頼んだ」「ういうい、任されたりー」
結構、お店の中は繁盛していてウェイトレスさんもみんな忙しそうにテキパキと動いている。そんな中、声を掛けられたリセルさんは私の前に来てくれた。
「はいはいー。お待たせー。えーと、宿のお客さんだね! ファーナにおすすめされた?」
「はい。えっと、これ…………」
私はファーナさんから渡された夕食チケットをリセルさんへ渡すと、うんうん。おっけー。何食べるー、あ、おすすめでも良い? と話してくれている。
「はい――――お願いします」
「うんうん。私はリセル。ファーナの、まぁ幼なじみかな。よろしくね」
「あ、はい。私は朋と言います。よろしくお願いします」
「ふーむ。パセリちゃんと同じぐらいかな? 一人でダイラックへ?」
「は、はい。えと、お使いで一週間ほど泊まる予定です」
「おー。そのお年頃でお使い偉いねェー。どの辺から来たの?」
「…………ま」
「ま?」
「魔女の、住処です」
「マ? …………えーと、ちょと、まてえっと魔女の――――住処。マジ?」
「は、えぁ、はい」
どの辺からと聞かれて少し迷った私は目の前の綺麗なお姉さんにどもりながら答えた。
「……………………うぉおおおおおー。純正でしかもロリかよ。リアルっ魔女っ子キタコレー。えーあーまじか、超まじかー。うおー。レア度高っけー。凄っげェー。ファーナでかしたああああ」
お店のお客さんとかみんなこっちを見ている。これは恥ずかしいよ。私はうつむきながらこれ、どうすれば良いの?
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