16気を付けてね。朋ちゃん。愛してるよ。
目が覚めた。何時もと違う場所。あぁ、姉さんの部屋…………何かくさい。あ、お酒のにおい。姉さん飲み過ぎ。よいしょっと、駄目だ、動けない。
姉さん離してよもー。柔らかい姉さんにきつく抱きしめられている。でも姉さんは何時も暖かいなぁ。ぽよぽよしてるし。まぁ私と同じか。あーこれ、どうしよう。
このまま一日終わっちゃうかも。姉さん沢山飲んでたし、私はつまみにされていたし。あぁーでもお酒くさい。この臭いに絶えられるかしら私。
姉さんはよく寝ている。ぐーぐーだよ。やっぱり起きそうも無い。もー良いや。もう一度私も寝てしまおう。まだ朝、早いから大丈夫。うん。二度寝に決定。おやすみー。
「ぐう…………」
『此処は、そうか俺の中だ。便宜上だと俺は何になるんだ? 本体を動かしている奴は穂美香なのか? 俺は穂美香の中に閉じ込められているのか? ……何か違うな、感覚的に。此処はやはり俺の中だな。間違いない。でも、あぁ、そうか、煩悩さんと同じ感じになっているのか……でもだとすると、何も出来ないぞ、俺は。あの鍵が掛かった扉を開けられれば変わりそうなんだが開かない。あれ反対側から誰かが壊した様な感じがする扉なんだけどなぁ、やっぱり鍵が無いと開かないのかもしれない。鍵は何処だ一体。
本体の様子をさっきから見ていたけど状況も良く解らないんだよね。……此処は何処なんだろう。あの時。―――――――――ああああ。あっ……そうか、俺は負けたんだ、穂美香と一緒に。でも俺は満足した。時代のしもべを使えたことに満足してしまった。残念ながらあれは奴の勝ちだ。そうか、負けた俺は今こうなっているのか、まだまだ状況が掴めない。もう少し様子を見ているか、って目の前に綺麗なお姉さんいるなぁ。というか、一緒に寝ているのかよ。やるじゃんか、俺。でかした。凄いぐらまーだなー。エロいなー。いーなー俺。しっかしどういう状況よ、これ』
そのまま寝ていた私。ふと目を開けるとねえさんと目が合った。
「あれ、おはよう。朋ちゃん」
「ん。おはよう、ねえさん。よくねたよ」
「…………あぁーったま痛い。うぅーん。もう朝?」
「どうだろ? もうお昼、回っていると思うよ。私も二度寝しちゃったから」
外の日差しというか、此処の天気は何時も同じ。暖かな日差し毎日一定の日差しが降り注いでいる為、外を見ても大体の時間すら解らない。
「あー。昨日は飲み過ぎたよー。酔い覚ましに何か作ってー朋ちゃん」
「はいはい。直ぐ作るから、頑張って起きてみてね。姉さん」
「わかったよ、おやすみ朋ちゃ…………すやー」
「姉さん、寝ないでー。そろそろ支度しないと私お使いに今日行けなくなるよー」
私の言葉にガバッと姉さんは勢いよく起きる「あー。そうだった。よし、仕度もしないと。……起きようか、朋ちゃん」
朝ご飯という名のお昼を作りねえさんと食べる。軽めなパンと卵料理と飲み物を私は用意した。
「うー。もう当分飲まない。今日は朋ちゃんが出発したらまた寝る」
「昨日もよく飲んでたね。何か良く解らないこと一杯話してたよ。姉さん」
「……………………覚えてないから忘れて朋ちゃん」
「うん。私も殆ど理解出来なかったから大丈夫だよ」
「それは良かった。あー。パンも卵も美味しい。私は生きてるぅー」
姉さんは何かに悩んでいるのかもしれない。この時ふと思った。今度、聞いてみよう。うん。
「……さてと、朋ちゃんの出かける用意もできたし。忘れ物もないし。バッグを背負ってミサンガ付けたし、お守りも付けたね?」
「うん。首に掛かってるよ。四角いのとお守りの両方」
「おっけ。あ、あとはエッタに手紙、これ渡してね」
「あ、うん。解った。会えたときに渡すね」
「うんうん。それで良いよ」
「じゃあ姉さん。行ってきます」
「うん。行っておいで」と言うやいなや私を強く抱きしめた「気を付けてね。朋ちゃん。愛してるよ」
「うん。大丈夫。姉さんの召喚いれば怖い物無いよ、ってまだ酔ってるの?」
「……………………そうだね。じゃあ大丈夫だ!」
「うん。じゃあ行くね」
少しかみ合わない会話をしてから、家の扉を出ると何時もと違い姉さんは私をずっと見送ってくれた。なんとなく大げさだなぁとか思った私は子供だった。
この前変なことをしていたカエルの家庭菜園を通り抜け六本木さんを目指す。私は何かに違和感を感じながらも悩んだ。
「うーん。何か変だなぁ…………」
何かが何時もと違う。そんな感じ。なんだろう? と考えていて一つ気づいた。姉さん。丸を作ってなかった……様な?
…………あれー。見逃しただけかなぁ? それとも酔ってたのかなぁ…………うーん。気のせいだよね、きっと。
六本木に辿り着いた。私は思い出したように木々の近くのお花に魔法でお水を作り出しお気に入りの六本木さん近くのお花にお水をあげた。
そうそう、姉さんが言ってた気がした。お水をあげてねって。
――――――――こんなもんかな。お水をたっぷりとあげた後何時ものように魔法仕掛けのギミックに番号を打ち込む。
すると何時もは目の前の空間から風が吹くのに今日は何故か無風だった。構わずに私は足を一歩前に出し、空間へ入った。
空間の中は色が、えーと、紫色かな? 色が凄い見える。
「何だろう、これ…………」
何時もは何かが見えるとある程度の距離が離れて見える気がするんだけど、色が、空間を紫色が覆っていた。
臭いなどは特になく色が見えるだけ。うーん。何かが起きているのかなぁ。
そのまま私は何時ものように適当に前へ進むとふわっと暖かな日差しに触れる。あ、外だ。今日は早かったね。一瞬だよ一瞬。……珍しい事もあるもんだ。
さてさて、ダイラック目指しますよー。
結構良い時間に出てきたから今日はもう宿屋を見つけてお終いかな。結局、姉さんに頼まれたお使いは水母の骨とハーストイーグルの爪。後はゴブリン襲撃のイベントがあったから、その系のレアな物があったら何か一つ買ってきてという微妙なもの。そういえばこの前の冒険ギルド凄かったなぁ。
イベントってあんな感じなんだ。凄いって思ったもんね。私も何時か参加してみたいな。早く強くならないとね。
ダイラックの通用門に到着し門番さんにギルドの登録証を見せると私の顔を覚えていてくれたみたいで直ぐに通してくれた。
前回来た時から結構時間経っているんだけどなぁ。ふむむー。でも簡単に入れて時間も得したね。
そういえば、宿屋ってどの辺にあるんだろう。うーん、あ、掲示板、案内板だっけ? あぁ、そうだ案内板だった。
見てみると冒険者ギルドから食べ物屋さんが多く並んだ通りの先辺りが多いみたい。
よしっ。とりあえず行ってみよう。私は結構怖がりな方なんだけど、姉さんと出会ってから少し、恐がりじゃ無くなった気がする。
悩んだらとりあえず行動という姉さんは眩しく見えた。なんて強いんだろう、と。唯単に考えるのを止めた様に見えることもその後多かったけど。
でも私にとって姉さんはこれで良い、こうであれ。という生き方のような何かを教わったと思う。私は恐がりだ。でも慣れていないもの全てに怖いのかな?
――とか、色々当てはめてみたら解った。納得した。あぁ、私、小心者なんだって。
でも、少しずつでも。自分を変えたい。確かにそう思ってたんだけど、最近なんか変なのよね。私の中に知らない常識のような行動原理というのかな。
経験則が、近いかなぁ? ……それによって考えが決まる様な。何か、そんな感じ。別の誰かが、私の中にいる様な感じ。直ぐそこに。
……これは、どうなんだろう? うーん。考えても解らないから今度、姉さんに相談してみよう。
ご拝読頂きありがとうございました!




