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14私の心の奥に棲まう者たち

「まずは此処、魔女の住処の外周をランニング。目標三〇週。その後、スクワット千回、腕立て三百回、腹筋三百回…………あれ? これ男の子脳筋用だわ。その三分の一で良いわ! 頑張れ朋ちゃん」


「えー。そんなに出来るかなぁ?」


私は渋々姉さんが言ったメニューを体操着でこなした。息を切らしながらだけど以外に出来るもんでまだお昼前だった。でももう足が痛い腕もお腹も汗も凄っ…………もー疲れたよ。


「とりあえずこのメニューを毎日一ヶ月ね。それと剣術の基礎、言わば捌きとか身体の動かし方ね。午後は座学とかかな」


久々に走った気がする。運動は運動で楽しい。身体動かすのは嫌いじゃ無い。でも流石に疲れたよ。汗もかいたからシャワーをすぐ浴びてさっぱり私。


そのあとご飯を食べてから少し休憩。午後は座学などなど。


「この前、朋ちゃんにスキルや才能の話はしたと思うけど、その後図書館で調べた感想は?」


「うん。やっぱり直感が大事っぽいね。私は古代召喚術にする」


「そう、そっかー。うん、うん…………それは、私も嬉しいわ。それを選んでくれて、ありがとう。朋ちゃん」


姉さんは何かを考えているのか、感慨深く頷くと私にありがとう。と言った。


私はどういう事なのか解らず姉さんに尋ねた。


「その魔術は昔の偉人も召喚出来る可能性があるの。恐らく、これは運命ね」


「昔の偉人?」


「まぁ、でも朋ちゃんがそれを出来るようになるにはある程度は極めないと無理だろうから、数年から数十年。とっても楽しみにしてるわね、朋ちゃん」


「良く解らないけど、姉さんが喜んでくれるなら、私も嬉しい」



「……さて、おさらいがてらもう一度行くわね。まずは剣術。まぁ、この前話した通りだし、図書館で調べた事以上の事は特にないだろうけど、魔法が使える人が更に何かを求めるならこれを求めるのは悪くない。なぜならば、応用が利く。戦いの幅がもの凄く広がる。手数も増える。良いことしかない。昔いた黒の勇者と呼ばれた者は手が付けられないくらい強かったらしいわよ。その後魔王になったみたいだけど…………」


「他にも有名なところで斧や弓、刀や矛に槍とか。色々あるけど大概の武器は此処に当てはまる。

そりゃ使う武器が変われば熟練も違うよね、なんだけど。一つを極めると大概他の武器も精通してしまうみたい。まぁ、しっくりくるのは一つでしょうけどね。朋ちゃんへのお勧めは魔法をある程度使える様になったら、この剣術も取り入れる。その後に次に説明する高位魔術展開が良いんじゃ無いかなぁー。って事で次は高位魔法展開」


「……魔法に関わらずだけど、簡単に言うと難しい魔法は発動させるのも難しいよねって話でこの高位魔法展開があると発動をスムーズに出来る。他にも時間短縮、多重詠唱、制御強化、触媒いらず、自動詠唱とか付与させたりと使い勝手がかなり良くなる。更に魔法を理解し生み出せるとも聞く。新たなスキルを作成出来るかもしれない。勿論魔法の段階も魔法以上だとこの高位魔術展開が必須になる。前回も言ったけど、『下級魔術→魔術→高等魔術→魔法→→大魔法→→→戦略魔法→→→→→極限魔法→零魔法』と

こんな感じなの。過去には魔法も高位魔術展開もエクスパ止まりでも戦略魔法を極めた人もいたらしいわ」


「……因みに私は戦略魔法を一応使えるわ、なんとかね。私は悠久の魔法使いという二つ名でも呼ばれているけど、大魔法を超えた辺りから二つ名で呼ばれる事が多くなるわ。人にもよるけど。因みに数え方があって、下級魔術が『一』で魔術が『三』。魔法が『七』大魔法は『十』戦略魔法は『十四』極限魔法は『極』最後に零魔法は『ゼロ』という感じね」


「まぁ、数字に全てが影響されている訳では無いのだけれども、この数字が大きい、イコール魔法に長けているとか、純粋に強いとかね。数字の測定は、まぁ良いか。このスキルを現在コードに持っている人物を貴方以外に私は知らない。仮に持つ者がいたら、その者は魔法を極められるかもしれないわね」



「…………あの夢の攻撃とかも出来るのかしらね…………。ロマンを通り越してチートよ」



「そして古代召喚術。私が会得している召喚術との大きな違いは何か? って話から始めましょうか、まぁ、諸説あるのだけれど」




「遙か昔、なのかしら、約千年程前にとある召喚術師がいたの。その者は紆余曲折はあったにしろ、召喚術を極めたらしいの。でも何かに絶望して魔王となったって話なんだけど、魔王はそれまで使われていた召喚術を封印したの」


「……封印によりそれまで使われていた召喚術は使えなくなり、代わりに今、使われている召喚術が産まれたの。それから魔王が封印した召喚術の事を古代召喚術と言い、新たに産まれた召喚術がそのまま言葉としても召喚術に収まった」


「そして数百年前から、魔王が封印した召喚術の封印が解けてきているらしく、それと同時にその才能を持つ人々が出てきたの。封印が解けてきているというのを、有名な力のある召喚術師が何らかの方法で調べたらしんだけど。イメージ的には何か封印された岩に御札が貼ってあってそれが取れかけているんじゃないか? ってある意味笑い話なのよね、これ」


「…………昔、子供の間で御札を作ってハゲの人の頭に封印! って貼る遊びが流行って大変だったらしいから。まぁ、そんな感じで封印から漏れている何かにより古代召喚術が使えるのではというのが今の通説。しかし、何故、魔王がこの召喚術を封印したのか、その理由も意味も誰も知らないわ」



「さてと、続いてはー。うーんとあ、まず初級として下級魔術から行きましょうか。この前みゃー子先生のぬいぐるみに魔法をイメージしてもらったけど、そのイメージを具現させます。でも朋ちゃんは資質、魔女のスープの影響もあり下級とはいえ威力は多分、高等魔術に匹敵します。んー、もっとかも……。なので初めにすることは制御させること。つまり魔法に器用になるって事かなぁ?」


「一番簡単なのは使い続ける事。これは身体も頭も勝手に覚えるわね。という事で『ファイア、ウインド、アイス、サンド』の四大元素の魔法をマナが切れるまで使ってね。あ、まだ自分のマナがどれぐらいあるか解らないだろうから、この特殊な砂時計をあげるわ。この砂時計は使用者のマナ残数が砂の欠片として解ります。使い方は朋ちゃんの可愛いおでこに砂時計のおしりをくっつけるとセット完了。こんな感じかな。魔法を使う毎に砂は下に落ちるから、ギリギリまで修行しましょう。あ、因みに使い切ると魔力酔いを起こすからもれなく気絶もするよ。では、頑張ってね!」



下級魔術の特訓が始まった。午後は座学だけかと思ってた私はもう結構疲れているみたい。体力とマナの関係は無いのかしら?


とか考えながら魔法を放つ。標的はみゃー子先生。先生、大丈夫なの? あ、ぬいぐるみね。ぬいぐるみでも大丈夫。みゃー子先生だからと姉さんは変な事を言っている。私が一人前になるまでに、このみゃー子先生はどれだけの魔法を受けるのだろう。私もうみゃー子先生に足向けて寝れないよ。


私がそんな事を思っていたのだが、この子はそんな単純なぬいぐるみでは無かった。そう。この子は私の魔法を受け続けている。でも今の私はそんな事に頭は回らない。姉さんも教えてくれない。そう、この子は最終兵器なのだった。そんな馬鹿な。


魔法を唱えていて不思議に思うことがあった。単純なんだけど、術者は何故火に焼かれないの? 燃えないの? とか冷えないのとかとか、姉さんに聞いたんだけど「うーん。考えたこともなかったわぁ」という。私も考えるのを止めた。それは脳筋への第一歩。


うーん。最近何だか思考がおかしい。私、最近? いや昨日から? あれれ、本人が気がつくのだから相当だと思うんだけど理由は解らない。もうすぐ頭にお花が咲くかもしれない。


……毎日お水をあげなきゃ。いやいやいやおかしいでしょ。



「じゃあ今日はどうしようかしら、魔法の方は順調そうだし…………。あぁ、この世界で生きる事について話そうかしら」


朋ちゃんは何のために生きているの? ちょっと難しいし意地悪な質問かもしれないけど、考えてみてね。


「…………うーん」


「人に依って目的も日常も違うの。好きなことをして生きている人もいれば、嫌々生きている人もいる。目的を持って、夢を掲げて、未来を夢見て、生きている人もいる。毎日に不幸を感じて生きている人もいる。病気や怪我で苦しんで堪え忍んで生きている人も勿論いるの。あ、でも特に答えは無いから感じるままに考えてみてね」


「……………………私は、きっと何か目的があるみたい。何かは解らないけれど、私の心を突き動かしている何かがあるの。村のみんなは魔族に殺された。生きている人もいるみたいだけど、目の前で私を庇って何人もの人が死んだ。復讐かな、とも思ったけど違うみたい。それは手段。……でも目的が解らないの。喉の此処まで出かかっている気もするんだけど、解らないの。ねぇ、どうしたら良いかな? 姉さん」


「ううーん。そっか、トラウマになっているのかもしれないわね。でもそれ以外にも朋ちゃんは持っているのよね。で、調べたんだけど、解らなかったのよね。……私も。幾つかの朋ちゃんを形成する文言は解るんだけどね。これ、私が教えて良い物か解らないけど、念のため話しておくわね」



『煩悩さん。穂美香ちゃん。ルカニー。お母さん。兄妹。時代のしもべ。本体はもうすぐ目覚める。血が混ざる。トミエクマ。大魔王。妹ちゃん。後ろには必ず奴がいる。勇者はゆっくり溶けている』



「まだ幾つかあるんだけど掬いきれなかったわ」


「それは、何で解ったの、姉さん」


「記憶の残滓を掬って貰ったの。私の師匠の師匠に当たる人にね」


「それが、私の記憶?」


「うん。朋ちゃんの心の深層に落ちていた記憶。朋ちゃんが意識すらしていない物。その更に外側にも幾つかあるんだけど、届かないし掬えなかったみたい、頑丈な扉の鍵も少し壊したって言ってたけど、あ、変な記憶は省いておいたわよ」


「なんとなく全てに思い当たる気もする。でも解らない。うーん、ありがとう。姉さん」


「別に急ぐ必要は無いわよ、ゆっくり、ゆっくりと進んでね。貴方にはまだまだ時間はあるわ。目的を見つけなさい」


「うん…………」


「ちょっと話を変えてさ、とりあえずこの世界ではある程度の年齢にもよるけど、働いたり、魔物を倒したり、冒険をしたり、商いをしたりと、経済を回していたり、……まぁ、働いているの。朋ちゃんが始める一番手っ取り早いのはこの前作った冒険者ギルドの依頼を受ける事。それだけでとりあえずはお金が稼げて生きられる。姉さんとしては学校にも行って欲しいかなぁー。色々学べるし。後は、敵の話かしら…………」


「敵って、魔物の事?」


「そうなんだけど、違うのよ。何時か朋ちゃんも自分で気づくけれど、人間の敵は人間なの。どの時代もね。唯、誰かが悪意を持って行っている事と、悪意もなしに行われていること、色々あるんだけど、難しく考える必要は無いの。危害を加える人は基本的には敵。理由はあっても関係ないの。貴方が誰かの犠牲になる必要も無い。朋ちゃんは優しいから話しておくわね。でも貴方が困った時は必ず誰かが助けてくれる筈。それは信じて生きてね。…………人は一人だけど、一人じゃ無いの。良い魔物はいるし悪い魔物もいる。良い人もいるし悪い人もいる。力を振るうときは躊躇しないで。後は自分で判断しなさい」


「――うん。解ったよ。姉さん」


「後は…………ジョセフは、自分で見つけなさい。前にも言ったけど。一応、生きている筈だから」


姉さんは今日の最後の話でそういった。

ご拝読頂きありがとうございました!

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