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121終局と明日へ。

「時代のしもべ 発動しろ!」




言葉を発した直後。違和感が襲った。


俺の見える範囲の出来事が止まる。それは夢の中で何かを見ている感覚に近く。

意識的に腕を動かすと俺の身体は置いて行かれた。


意識、俺の意識の集合体が肉体から離れる様な、そんな感覚に瞬間――――俺は動いた。

目の前には俺の身体の方を向いている穂美香とその首筋を捉えるメテムルの爪がある。


俺は爪に手を伸ばしその鋭い爪をメテムル自身の首に向ける。

同時に違和感が俺を襲い時は動き出した。


「グギャー。ゲヘッ」

「あ、あれ?」


姿は見えないが穂美香の後ろからメテムルの声が聞こえた。


穂美香は何が起きたのか理解出来ていないだろう。俺の正面にはおっさんが物凄いスピードで迫る。

俺は再び躱そうとするが身体が重く動かない。そして無理矢理動こうとした所、足下が滑った。


「うわっ!?」

「つーかーまえーたー」


俺は気づかなかった。足下にも血が大量に滴り足を取られ迫るおっさんのタックルを躱せずに抱きつかれた。目の前にはおっさん。俺は逃げようと竹刀を捨て力を絞る。


「おにいちゃん!」


なんとか体勢を変え逃げようとするが逃げられない。

体勢は少し変わり俺がおっさんに背中を向ける様な状況。そしておっさんの腹から刺さる得体の知れない棒が俺の背中に刺さってくる。


「む……ぐっ…………」


穂美香が俺の目の前に来る。と同時に背中から声が聞こえた。


「必殺! お子様ランチ! これで、これでねんがんの異世界に…………」


おっさんの声が耳元で響く。

俺の背中に食らいついたおっさん。棒は俺にめり込み貫いた。


「ぐはっ!」


口から何か血の塊のような物を吐く。

少しぼやけた視界には穂美香が俺に回復をかけている様子が見えるが、その顔は焦りの色がうっすらと浮かんでいる。


「うわっ」


まだ背中の棒は止まらない。

更に押され少しづつ前に進み加速する。俺は穂美香と抱き合う様な形になる。


「おにいちゃん…………」


棒は止まらずに差し込まれ俺の腹を背中から貫いた。

そして今度は穂美香のお腹に刺さる。


「あっ……」


俺は穂美香の顔を見て声を出そうとするがもう声が出なかった。

意思疎通も出来ない。

おでこがぶつかるまで近づき目と目が合う。後ろからの勢いは更に加速。

床にはつま先しか付いていない。身体はもう半分ほど宙を浮いていた。


俺は結局、運命を変えられたのだろうか?


あのアイテム、時代のしもべは失われた訳では無かったんだな、ここに有ったのか。

という答えが解っただけでもちょっと満足した。


あのままだと恐らく俺は何もしない、何も出来ないを結果選んでいたと思う。

時代のしもべが有ったからこその選んだ末のこの展開となった。


しかし…………負けた。

そんな意識が朦朧とする中。

穂美香の後ろで「ケヒャッ グヘヘ グアッ」とか、声が聞こえた気がした。




「おにいちゃん」


わたしは目の前にいるおにいちゃんの顔を見た。

もう意識が無いのか呼吸が聞こえない。目を見ると瞳孔も開いている。


わたしも意識を保つのが精一杯の中「ケケ、ケヒャッ グヘヘ」

という声と共にわたしの背中に何かが取り付いた。


でももうそんな事はどうでも良かった。

おにいちゃんを守れなかった。守れなかった。守れなかった。

思ったら涙が出た。

涙を感じたらもう涙は止まらなくなった。


「おにいちゃん。大好き。ごめんね」


おにいちゃんを抱きしめて考えた。

わたしは何が出来たのだろう?


そう。次こそはおにいちゃんを護りたかった。

愛おしいと思った。悔しかった。


意識も限界に近く。あたまの中でぐるぐるとそんな感情が廻った。














――――――――静寂が支配していた。

壁には男女三人が旗に突き刺さり、その壁際にはモンスターが最後に突き刺さっている。


あれだけの戦闘が行われていたにも関わらず、結界のお陰か、今は壁に刺さった者達以外は不自然な物は無かった。


『終わったみたいデスね』


何も無い空間から現れた姿の無い者は壁に刺さる人を見る。


『スバラシイ! こうなるのデスか! この技、使った事無かったのデス! まぁワタシはこんな微妙な技ハ使いませんがネ!』


『シカシ良く、ココマデ上手く決まりましたネ! シカモ使い魔まで! これは芸術的四コンボデース! 飾って置くのも一興デスがそうも行かないのデス』


壁に近づき徐に棒を抜く。

ドサッと三人と一体は床に落ちた。


『アハハハハハ。まさか、この項目が埋まる日が来るとハ、あと三つ。成就の日も近い』


『デハ、約束デスから貰い受けまス』


中年の男に近づくと手のひらを頭に乗せ口を開ける――――――――。


『――――ゴチソウサマ』


「ふーん。貴方が後ろに居たのね」

『お早い到着デ』


「私が何を言いたいかは解るわよね? アーノルド」

『ええ、私も察しは良い方なのデ。ソウデスネ、感謝しまス』


「そんなのは良いから早く私の視界から、此処から消えて。今だけよ……こんな機会。そして次は無いし落ち着いたら狩るから。今回は因果律に配慮してあげる」


『…………ここで戦っても貴方から奪えるのは少しの時間だけデスネ。逃げるので追ってこない事を祈りまス』


「時間が勿体ないわ。消えなさい」

『……デハ』



「…………ここから始まるのね。朋、穂美ちゃん。行ってらっしゃい――――――――」


「あーあ。私も参加したかったなー。どんな世界に行くんだろ? というか、やっぱり何かヘンね? あの技。…………気のせいだと良いけど」


「あーでも気になるなぁ。でも今の私が資格を得るのは結構、難儀なのよねー」






異世界『トミエクマ』エトナ密林帯。


「ハァハァ、ハァハァ…………」


少女は追われて別世界の森林を走っていた。


「今度こそ、今度こそ、今度こそ! 必ず、必ず…………絶対に守るんだ――――――――」


お腹に手を充て、迷いを微塵も出さない真剣な表情と共に。それに確信をもつ少女は森林を疾走する。















約一年後。


オギャア、オギャア、オギャア、オギャア――――――――。


「…………やっと…………やっと逢えたね。………………おにいちゃん」


異世界のとある小さな村のそばで母性を感じさせる雰囲気を持つ少女。その涙ぐむ少女の手には、お守りと星を手に持つ赤ん坊が抱かれていた――――――――。




                                       【完】

これでこの物語は終わりです。



この先の話しはサブスク女子等で語られるかも知れません。


最終話だけ間隔が結構開きました。

約1年程ですが読んで頂きありがとうございました。

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