12ゴブリン襲来と尻を抑えて逃げる男たち
再度、気を取り直しギルドの中へ入ると、人が多い。あれ、これ何だろ。壁際で少し様子を見ているとギルドの人が大きな声を出して話している。
声を拡張する魔法か何かも使っているみたい。
「えー。今から別途、整理券を配りますので、ゴブリン退治に参加出来るパーティーのリーダーのみ参加券を受け取ってくれ。依頼を受けるパーティーのメンバーはすまないが、一旦何処かへ待避してくれ、現在、人が多すぎる。えーこのクエストは『ゴブリン襲来』災害レベルB+クラスだ。なお、普通のゴブリンより三倍程強く感じるとは思うから自身の力を過信しないようにしてくれ。ゴブリンの数はおよそ二千体。もうこれは戦争と同じだ。数が多いゴブリンは群れで一人を襲う事も多い。ゴブリン数体にたこ殴りされたくなければしっかりと戦略を練って挑んでくれ。メインの南門は今の所は安全。西側から来ているので北や南から裏を取る様に廻るのもアリだが数か多い。十分に気をつけてくれ、一応今の所は西の門からも迎撃出来るらしい。因みにゴブリンシャーマンやゴブリンロード。ゴブリンキングはまだ発見されてはいない。が、ゴブリンキングは確実に今回誕生した筈だ。心してくれ。そして今回はゴブリン一体討伐の値段は破格の一千Cだ。通常の五倍を設定した。皆、稼げよ。恐らく夜通しの戦いになり明日の昼にはある程度は収束する筈だ、皆の者、頑張ってくれ!」
「「「「「うぉーーーーーーーーーー」」」」」
うわー。な、何か、大変な時に来ちゃったみたい。熱気が凄い。何が始まるの?
「あー追加だ。この『ゴブリン襲来』で毎回だがルーキーからベテランに入りかけた者までが数人はやられている。自分の実力を見誤るなよ!」
皆の話している声が色々と聞こえる。でももう始まってるっぽいから今は帰らない方が良いのかな? どうなんだろ。
シーラさんかエッタさんいないかなー。うー。人が多すぎて見つからないよう。
「前回は二年前だっけか?」
「おう、そんなもんだ」
「確かサウスの奴が気絶から攫われてパンツ脱がされた所で泣きながら逃げてきたって話、有ったよなw」
「あったな、そんな話。奴はあれで引退してゴブリンみたいな姉ちゃんのヒモしてるって話だw」
「結局そんなオチかよ、でも奴ら男でもお構いなしかよ」
「おー怖い。俺らの尻も狙われてるのか誰得な展開だよ」
「まーでも一体で一千Cは破格だ。これはチャンスだ。豪遊出来るぞ」
「そろそろ上のクラスの『ゴブリンキングの覚醒』とか『ゴブリンキングの暴走』 『ゴブリンキングの逆襲』が来てもおかしくないんだがなー」
「いやいや、 Aランク冒険者以上が何人かいないとこの街壊滅するって」
「そんなの俺は逃げる」
「そうだな、お前は尻を抑えて逃げろ」
「お前も抑えるだろ? そんなん」
「ちげぇねえwww」
ゴブリンって弱いイメージあるんだけど、そうでも無いみたいだね。そういえば姉さんもゴブリンは一人で戦っちゃ駄目って話してたかなぁ。
村では山犬が出ただけで大騒ぎだった。その山犬の倍ぐらいはゴブリンも強いって話だし。どちらにしろ私は何も出来ないし怖い。
姉さんと一緒にいると自分が強くなったと錯覚するぐらい安全だから気を付けないと。今も召喚付いてるから多分大丈夫のはずああこれも錯覚?
…………でも、怖いなぁ。どうしよう。
そんな状態でも此処は何故か意気揚々? お祭り騒ぎに近い何かを感じる。怖いものは嫌だけどその怖いものを楽しんでいる人達がいるんだ。
それは強さ、なのかな? 少し違う気がする。
「よし、チーム分けは終わった。今回参加するチームは十八チーム。一つのチームで三から四パーティだ。正面側と遊撃、正面のサポート兼交代要員という構成で行く。チームサム、インデックス、ミドル、アニバーサリー、ピンキーは正面。チョーカー、プリンセス、オペラは正面のサポート兼交代要員、遊撃は北側と南側からで北側が、ペンダント、ラリエット――――――――」
「解らなかった者達は受付に聞いてくれ。では一六時に作戦開始だ。各人、足を引っ張るなよ!」
ぅおおおおおって此処に居る殆どの人が叫んでいる。私も釣られて叫んでみたらちょっと楽しかった。何か参加している気分。
「おーい朋ちゃ――――ん」
あれ? 私を呼ぶ声が聞こえた。気がした。空耳かなぁ。
「おーい」
あれ、えーとシーラさんの声が聞こえた気が…………あ。
「シーラさん!」
「あはは、朋ちゃん。やっと捕まえた」
少し遠くから私を見つけてくれたみたいだけど、人がまだ多く、此処へ来るのが大変だったと、シーラさんは話してくれた。
「えーと、朋ちゃんも参加するの?」
「まさかー」
「だよねー。少しびっくりしたよー」
「ちょっと寄っただけなんだ。姉さんにエッタさんの様子を見て来てって頼まれて」
「そうなんだー」
「今こんな状態だから、エスタリッセさん捕まらないかも…………」
「うん。わかる。ちょっと姉さんからのメッセージ伝えたかっただけだから」
「えと、私で良ければ伝言するよー」
「うん。お願い。えーとね、こんな時、聞くのもどうかと思うけど『最近どう?』だよ。メッセージは」
「あらら、それは確かにこんな時な内容だねェ」
「まぁ、姉さんには今の状態を伝える事にするよ」
「それが良いかも」
「そういえば聞きたかったんだけど、今って外に出られるのかな? そろそろ帰らないとって思ってて」
「あー。うん。えーと南門だよね、朋ちゃん」
「そうそう。南だよー」
「今ならまだ出られると思うよ。時間が経つに連れ危険度は増すらしいけど、余りの状態だったら門番さんが止めてくれる筈だよー」
「ああ、そっかー。そりゃそうだね。一応護衛はいるんだけど、ちょっと不安になったんだ」
「護衛って…………召喚だよね?」
「そそ。姉さんが付けているから」
「それなら大丈夫だと思う。エスタリッセさんが冗談で大量のモンスターが現れた時に中心地に朋ちゃんを置けば全て解決するって笑い話で話していたから」
「ええー。そんな無茶なぁ」
「冗談だよー流石に。…………多分」
「もー。そういう使い方じゃないんだからー」
「そこなの?」
「ち、違うの。そういう意味じゃなくてェ」
シーラさんともう少しお話していたかったけど忙しいみたい。今日はこの辺で帰ろうかな。私が此処にいても邪魔になりそうだし。
シーラさんにバイバイしてから私は街の様子を見つつ帰ることにした。何か、こんな状態だからか、外に出ても走っている人が増えた様に見える。
もうすぐ鐘が鳴るかなーって思ってたら鐘が鳴った。このまま帰れればちょうど良いね。
南門に辿り着いた。どんな様子かなーって思ったけどそこまで変わりは無いみたい。
でも数人。戦う準備万端な人達を見かけた。遊撃さんかなぁ? 私は門番さんの前に行き出たい事を伝えると少し悩んでいた。
「うーん。少しでも危なかったら直ぐに戻ってくるんだよ? 心配だなー」
「だ、大丈夫です。姉さんの召喚付いているんで」
「召喚…………あぁ、悠久の」
「はい! そうです。だから大丈夫です」
「うーん。解った。けど本当に気を付けてね、寝覚め悪くなるからさぁ」
「解りました。ありがとうございます」
私は門番さんに見守られて街を出た。うん。大丈夫そう。とは言っても気持ちは焦りがあるのか、何時もより早足になっている自分がいた。
余り周りを見ている余裕もなく直ぐに閉じられた空間へ辿り着いた。私が手を翳すと何時ものように空間は開く。
空間内へ入るとやっぱり私は安心した。此処まで来ればひと安心。閉じられた空間を進むとまたしても青い玉と赤い球が見えた。
此処の所、毎回いる気がするなぁ。うーん。なんだろう?
六本木さんが目の前に見える。
私は魔女の住処へ無事に帰ってきた。
ご拝読頂きありがとうございました!




