114乱入者と場を制するもの
咄嗟に声のする方へ三人が振り向く。
とそこには…………誰?
余りこの辺では見ないような服装――――
というか衣装を着ているな……でもなんか何処かで見たことが、あ!
「…………貴方ですね。僕の結界を少し壊したのは」
「そうよ。なんとなく私には状況が解るんだけど…………もう引かない?」
「…………うーん。ちょっと難しい、かな?」
「あ? 突然出て来て何言ってんのか解んないけど理解出来なくも無いけどまず無理いっつか絶対的な生理的な敵的に無理無理無理無理ぃ!」
「そう。なら私が相手をするわよ」
何かのコスプレのような衣装を身に纏った突然の来訪者は、そう言うと素早く緋夏の背後に着く。
「と、とっと」
緋夏は直ぐさま飛びのけてその来訪者から距離を取った。
目の前に居る来訪者に俺は声が出るか解らない状態だったが話しかけてみた。
「ル、ルカニー?」
「あ、私の事解る? よろしく、ね。色々事情もあるんだけど、貴方達の方に味方するわ。少しだけど、回復つかってあげる」
「ノイ――――レゼリクション」
目の前の彼女が言葉を紡ぐとみるみる内に身体が楽になっていく。
これ回復魔法か?
「あ、ああっ。ありがとうございます。あ、あの。兄にもお願い出来ないでしょうか?」
「――――良いわよ」
彼女。ルカニーは何かに悩む表情を見せつつ同じ魔法を使ってくれた。
「ありがとう」
「うん」
やっぱり天使な俺だけの生ルカニーに感謝をしつつ、あちらを見ると何やら揉めている様に見える。
「だから久遠! 両方わたし! やるよ!」
「ちょっと冷静になってよ緋夏、あいつ、中々だよ? 一旦引いて博士に指示を貰おう」
「今見逃したらわたしだけの復讐ができない。予習と復習はその日のうちにが鉄則なんだよ?」
「こんなタイミングで僕の結界を破っての乱入者。動きを読まれた可能性まである。引こう。緋夏」
「でもでも殺るの! 異論は聞かない認めない!」
「…………解った。その代わり冷静になって僕の指示に従ってよ」
「やれるなら良いよ。聞いてあげる」
「………………で行くよ?」
「え――――――――」
「待ってるからさ」
「――――解った」
敵の二人は何かを話しているが俺には聞こえない。
俺は穂美香の様子を探るが意識はまだ取り戻さない。
敵は戦う事への意思が固まったのか二人してこちらを見た。
「じゃあ――――。つづきしよ。 えーと、何ラウンドだったかなー? ニューチャレンジャーだから、まーいーやっ、と」
緋夏は手にしているデッキブラシの様な物を振り回し「うしっ!」と気合いを入れている様だが、顔はまだ腫れている。
俺は少し余裕が出来たのか、目の前の女神。
ルカニーの後ろ姿を見る。
テレビやインターネットの画面、グラビアなどでしか見たことの無い彼女の凛とした背中。
何故か凄い安心感が沸く――――この彼女間違いなく
――――――――強い
「緋夏。行ってこい」
「おっけ」
緋夏がデッキブラシを持ち高速で駆けてくる。
目の前のルカニーは何かを口ずさんでいる。
「降虹の盾」
ルカニーが言葉を紡ぐと俺と穂美香の周りに七色のガーゼがやさしく掛かる。
その後に緋夏がデッキブラシと共にルカニーに襲いかかった。
一点突破を試みる様な突き。
身体全体でデッキブラシと一体となったかの様に洗練された鋭い動きをルカニーは気にも止めない様子で躱す。
その後ろにいる俺たちにデッキブラシは襲いかかるが甲高い音と共にベールの盾が緋夏の突進を防ぐ、が止めずに弾かれた勢いに任せ半円を描く様に先端をルカニーに向ける。
しかしルカニーはそれすらも躱す。
「甘いわね。でも、才能はありそうね……」
ルカニーは再び何かを紡ぐと手に細い剣が現れた。
あれは……レイピアかな? 少し形状が違う様な気もするけど……。
俺は穂美香の様子を見つつ二人の戦いの行方を見つめる。
先にもう一人の存在を思い出し、目を向けると、さっきまで居たはずの久遠がいない。
俺は探すと左後ろから声が聞こえそちらに顔を向けた。
耳に何か、恐らく携帯で誰かと話している様に見え、いつの間にか結構近くに来ていた久遠を見る。
「もしもし。博士? ちょっと問題が起きててさ。うん。そうそう、乱入者がきてさぁ。あぁ、解った。駄目そうだったら一旦戻るね。後少しはあるんでしょ? リミット」
リミット……?
時間制限が敵にある事を俺は知った。
「……コンコン」
久遠は電話しながら盾の外側をノックしていたが、電話が終わったらしく携帯電話を服に仕舞い一息ついている。
「うーん。これ僕に破れるかなぁ……」
そんな独り言も聞こえる。
ルカニーと緋夏は少しづつ俺たちから離れて行っている様に見え、たびたび剣とデッキブラシがぶつかる音が周囲に聞こえる。
その時ルカニーが俺に叫んだ。
「あなたとそこの男の子とはパスは繋いだわ。後で【トミエクマ】に接続しなさい!」
一瞬、は? っとなり俺も叫ぶ。
「え? トミエクマって、あれが関係しているのか?」
「あ、君もやっているんだトミエクマ…………まぁ、そっか。そういう事なんだよね」
その話を聞いていた久遠も俺にそんな事を話す。
ルカニーに話をしようと思ったがギリギリ見える範囲。
もう大分遠くに行ってしまって聞こえなかった様だ。
俺は動いたらこの守ってくれている盾がどうなるのか解らない為、動けなかった。
「……行っちゃったね。ふぅー」
「………………」
「ポイントもう少しなんだよね、ちょっとキャラじゃないけどまぁ、頑張りますか!」
目の前の久遠は盾を攻撃し始めた。
「うーん……必殺技で三,四回ぐらいかなぁ。どうするべきか……あ! え――――マジか。レベル上がってるじゃん。あれ? 二レベルも上がってる。僕としたことが…………そういうことか!」
「………………」
レベル制なのかよっ、てかこの盾大丈夫か? 久遠を見るとニヤニヤしている。
「解決しちゃった。これならあの乱入者も上手くやれば倒せそうだなぁ。ってな事で早速行きますか」
目の前の久遠は盾を今まで以上の強い攻撃で壊し始めたのか俺たちを守っている薄いベールがギリギリと悲鳴を上げている様に見える。
「ふぅー。これでラストー! リミットブレイク!」
久遠が魔法らしきものを唱えると巨大な大砲から発射された大きい岩がベールをぶち破る。
薄いベールは最後の力を振り絞ってくれたのか、大きい岩を包む様にして岩と共に消えた。
「えーと、レベルは…………うーん。てことは対人が良いのか! それともボーナスキャラ的な……ユニークモンスター扱いかな?」
「………………」
人をユニーク扱いしやがって! とりあえず、どうする?
ルカニーって叫んでも。届かないよな、声。
……こいつは恐らく石や岩属性の魔法使いなんだろうが。
あ、でももう大丈夫か――――――――。
俺は突然思い出し、携帯電話に付属している時計に目をやって確信を持った。
「えっとさ、久遠、さんだっけ? そろそろ逃げた方が良いよ?」
「…………え? この状況で面白い事を言うね、君。あぁ、そうそう、せめて名前を教えてよ?」
状況を解っていないのかレベルが上がった?
せいなのか久遠は余裕をこいている。
あーあ、もう見えるよ。
「……あたしは穂美香。こっちのおにいちゃんは朋くん……で、後ろにいるお姉さんが大魔王だよ!」




