111襲撃
俺たちは学校の傍の停留所からバスに乗り、最寄りの駅に辿り着く頃には空の雲行きがますます怪しくなっていた。
雨が振り出すのはもう時間の問題だろうか。
降られる前に出来れば家に帰りたいなぁ、とか考えつつ電車に乗り込んだ。
電車の中はまだ空いている。
多分あと一時間もすれば、帰宅ラッシュに捕まっていただろう。
地元の駅に辿り着いた。
今日も商店街で買い物をしたかったがまだ食材は有るので、雨が降られる前に家に帰ろうと判断し俺たちは歩き出す。
そして家までは後5分ぐらいの位置でとうとう雨が降り始めた。
もう結構近くまで来ていたので走って帰ろうか?
という話をしていた矢先に……後ろから素早く雨を踏む音が聞こえた気がした。
「破っ!」
「ぐぁっ……」
後ろから声が聞こえた後、隣りに一緒に並んでいた穂美香が突然勢いよく吹き飛ばされたのか俺の前、数メートルの所までつんのめり回転しながら倒れた。
「ほ、朋くん!」
穂美香の姿をした俺は駆けつけて地面に膝を付き、朋の姿をした穂美香の身体を庇う様に引き寄せる。
結構な勢いで飛ばされて地面に擦ったからかブレザーの制服は所々痛んで濡れた砂や砂利も付いていた。
「痛っ……何が? 起き、たの?」
「だっ、大丈夫?」
穂美香の安否を確認しつつ周囲を見回すと俺たちの後ろに一人の見慣れない女子高校生の制服を着た人物が見えた。
その一人以外には自動車や自転車、などのものは存在しない。
…………あんな勢いで六十キロ以上ある俺の体重が飛ばされるには車や何か、を瞬時に考えたが、その時の事を考えると今、目の前に居る女子高生しか考えられなかった。
「何をした?」
近くにいた人物に話してみた。
その女子高生は左側に今時の学生が使うようなバッグを持ち、右手には棒や傘というより箒のようなものを持っている。
「君たちだよね? あ、ちょっと待ってね……電話だよ」
目の前の人物は話の途中に携帯電話が掛かってきたらしく電話に出ている。
俺は穂美香を瞬時に見るがまだ目は開かず、痛ててと苦しがっていた。
「うん、うん、りょーかい。ビンゴだね おっけー。うん。何かあったらまた知らせてね」
「コホン。……さてさて、おまたせっ。今確認終わったよ。少しポイント入ったらしいから後…………どれぐらいかな? 少しぃーじゃないぐらいは痛いと思うけど覚悟してね」
そんな良く解らない事を話した後でその女子高生はゆっくりと近づいてくる。
こいつ……何をしたんだ?
顔は…………見たことが無い。
知り合いでも同じ学校という訳でもなさそうだ。
とても活発そうな印象を受ける。
年はそんなに変わらないだろうが俺はこの状況に威圧されている。
「ち、ちょっと待って! 何かの勘違いじゃあ……」
俺は目の前の女子高生の勢いに押されて考えが纏まらない。
「今、確認したからだいじょうぶ! 君たちだよ。…………うーん。でもやっぱかわいそーだから男の子の方を多めにしてあげるね」
そんな事を話し、手に持っている箒で近くの電信柱を叩く。
すると掃く部分の金具が外れたのか棒の部分だけとなる。
それをクルクルと振りながら更に女子高生は俺たちに近づいてくる。
俺は朋の姿をした穂美香を後ろに守るようにするのが精一杯だった。
「お、おにいちゃん……」
「穂美香…………動けるか?」
「ん、だ、駄目、身体が動かない」
「………………」
俺は目の前にいる人を敵と認識し考える。
そのうち徐々に女子高生は近づきもう目の前にいる。
だが、俺には手も策も何も無い。
そして女子高生はニターっと嗤う。
人懐っこそうな可愛い顔をしてはいるがその笑顔も今の俺には恐怖でしかなく足が少しすくむ。
「まだ加減とか出来ないからさぁ。痛かったらごめんねー」
「いよっと!」
女子高生は目の前で右手に持った棒をくるくると回し、その流れで俺の左側から素早い攻撃をしかけてきた。
棒による打ち込み。
片膝を付いた状態の俺は咄嗟に持っていたバッグで左側肩付近を庇う。
「バシッ!」
「つっ!」
バッグでガードしたが力が強くバッグごと右に身体を倒される。
俺は右手を地面に付き身体を支え身体半分起こし相手を見る。
「お、やるねぇー。けっこー運動神経良いんだね?」
「ぐぁっ」
女子高生を目の前にし、起き上がろうとしていた俺の姿をした穂美香に対し棒の先端部分をねじ込む様にお腹に振り下ろした。
「やめろ!」
すぐさま駆け寄り妹を守る様な形を取り目の前の女子高生を睨み威嚇する。
「あ、また電話だ。ちょっと待っててねー」
女子高生はスカートのポケットから携帯電話を取りだし誰かと話をしだした。
今がチャンスとばかりに俺は後ろ側にいる穂美香に小声で話す。
「…………穂美香、動けるか?」
「……行けると思う」
お腹に一撃食らったものの身体は回復した様で、後ろから返事が聞こえた。
すぐに振り向き手を取って身体を引っ張る。
「逃げるぞ!」
「うん」
妹の手を取り走り出すと同時に何処に逃げるか考えだすが、少し走った時、何故か相手は逃げている方向の道の上空。
空に、有り得ないスピードとジャンプ力で飛翔し地面に降り立ちふわっと着地。
回り込む様に逃げる先を阻んだ。
「っと、逃げないでよ、電話もう直ぐ終わるからさぁー」
女子高生は俺たちに話し、再び携帯電話に耳を傾ける。
「うん。そうそう。その辺だよ、子供の頃遊んでて迷子になった辺り」
誰と電話しているのかそんな事を話している。
妹を見ると背中が痛むのか左手で手を当て擦っている。
こんな化け物を前にどうやって逃げるか、考えるがどうにもならない。
「おまたせ。今ね、すぐにもう一人来るから、少し待っててね」
「…………」
「あ、そうだそうだ、私の名前は緋夏。緋に夏って書いてひなって読むの。よろしくねー。もうすぐ姉弟の久遠も来るからさ」
目の前の女子高生。
緋夏が話した瞬間に周囲が? 空間が何かに包まれるような感覚がして雨が止んだ。
「お、結界かかった……あ。久遠きた。便利だなー雨も防げるのかようー」
結界? 久遠……。俺は緋夏の話している言葉に耳を傾け考える。
「…………おまたせ緋夏」
「久遠。早いなー。もう戦ってるよ?」
「…………せめて僕に知らせてからにして欲しかったな。緋夏」
「えー、だって博士が良いって言うんだもんビンゴだ、行け、えと、なんだったっけ? ぱんつが4まいなんとかでかんとか突撃だーって……言ってましたよましましで!」
目の前の相手にはもう名乗った?
とか、ひろしがとかを話しているが俺には何のことかさっぱり解らない。
しかし実際問題、相手が二人になってしまった事に焦りを感じていた。
「……遅くなりました。初めまして。僕は久遠。こっちは緋夏。まず簡単に自己紹介を」
「…………」




