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108手駒

其処には二人の学生らしき制服を着た若そうな人物が二人。


「なんだーいるじゃんかよー」

「あ、ほんとだ。はかせおひさー」


俺の従姉弟だった。



「ふ、あふぁ……ふぅーーーー。ち、ち、ちょっと、入ってくるな!」



俺は今の自分の格好とか自分の部屋が見られる恥ずかしさの余り慌て気味に怒鳴った。


「え? 良いじゃんか」

「ねー。はかせの汚部屋なんかもう想像通りだよ、昔ながらだよ」


従姉弟の二人はそんなの構わないどうでも良いとばかりに話すが、興味は有るのか実際色々な所を見ている。


「下のリビングへ行けー。今俺も降りるから!」


リビングでソファーに二人を座らせると俺は正面のソファーに座る。

目の前には久遠(くおん)緋夏(ひな)。従姉弟がいる。


歳は確か……高校生だから、もう16~7……ぐらいだったか?

…………面倒くさいのが来たな。


こいつら昔から加減を知らないんだよな。物知らず、というより感覚だが。


「何か飲み物無いの? ひろ兄」

「お腹減ったー はかせー」


久遠と緋夏はとりあえず何かよこせとばかりにねだる。


「うー。はいはい」


俺はとりあえずキッチンの棚に有ったポテトチップと冷蔵庫からは何時開けたのか分からんオレンジジュースを賞味期限も見ないでドバドバとコップに注ぎ出す。


「炭酸ないのー? ひろ兄」

「ぽてちかおー。まぁそんなもんで今は良いや……っておい! 南国ドリアン味ってなによそれ、センス悪っ。…………でもレアだから良いか」


良いからそれで我慢しろと俺は話しつつ南国ドリアン味のポテトチップを持ってきたお皿に広げると、結構癖の有る独特の臭いがふぁーっとリビングに広がり誰が声を上げたのか、小さく「うぁー」という声がした。


「で、今日はどうしたんだ? いきなりじゃないか、というか何年振りだ?」


二人の従姉弟に俺は話すとうちの母親にとにかく部屋から出してくれと頼まれたんだよと久遠は話した。


「うげ……そういうことかよ」


「そーいうことぉー もぐもぐ……不味っ! これ。ほんとドリアンだよ、ドドリアンだよどどどどど。ん不味ぅー」


「でさー。久々にこっちにも久々に来て見たかったし、ひろ兄にも会いたかったしさというか一つ用事あったから来たんだ」


とりあえず俺は母親に恨みを綴りつつ、食べる気は無かったポテトチップについ手を伸ばす。


「不味い……」

「でしょー。……ぱりぱり。……ん、あれ? 何か……」


「まぁ頼まれた用事は済んだ? 訳だし、僕はひろ兄に聞きたい事が有ってさ」

「ん、久遠。聞きたい事って何だよ? あらたまって……」


ドリアンの凄い臭いが込み上げるリビングの中、少し話にくそうな顔をしながらも久遠は話し出す。


「最近『トミエクマ』ってゲーム始めてさ―――――――――」

「トっ!?」


此処の所、頭の中の九割以上を占めている話題を突然と振ってきてケツが浮く。


「ん? どうしたのひろ兄」

「いや、おかまいなく、何でもない、久遠、話を続けて……」


「――最近『トミエクマ』ってゲーム始めてさ、ひろ兄が昔良く使っていた名前のキャラクターがいてさー。ひろ兄かどうか知りたくなったんだよね」


俺は一瞬悩んだが、素直に話すことにした。というかもう頭の中ではこいつらに手伝わせようという意識の中、どういう風に話を持って行くかを考える。


「んんー。そう、それは俺だよ」

「だよなー。あんな名前、ひろ兄以外付けそうにないもんなー」


少しほっとした様子で、あんな名前などと悪びれもせずに言う久遠とさっきまで不味いを連発していた緋夏は「何コレ! 突然美味しくなってきた!。うんまー」とポテトチップから手が離せないでいる。


「良く気付いたな、久遠……じゃなくて、凄い偶然だな!」


実際始まったばかりとは言え特定のキャラに連絡もせずに出会う確率は相当低い。

今は開始直後という事も有り、主要の街などはどの時間帯も人は多い。


だよね、だよねー。

とニコニコしながら嬉しそうに話す久遠に何故『トミエクマ』を始めたのか聞いてみた。


何かネットのスレ見てたら……だったかなー? 何か興味が出たんだよねー。


「そうか……あのゲーム出来も良いし、面白いよな。俺も色々ゲームしてきたけど、最近のゲームの中じゃ頭一つ抜けてると思う」


「流石、ひろ兄! 僕もそう思ってさ、周りに誰かプレイしてる人居ないかなぁーって思ってた矢先に『サイダー玉』を見つけてさ。ああっ! これ絶対ひろ兄だよ! って思って直に聞きたかったんだよ」


少し悩む振りをして、俺は『トミエクマ』に関する裏話を二人に話し出した。


「…………ちょっと、話し辛い話なんだけど、聞いてくれるか?」

「ん? 良いよ、どしたの?」

「ゲームの話? はかせの恋愛話とかだったらマジ受けぽよぽよなんだけどー」


俺は『トミエクマ』の中に行けるかも知れない、という突拍子もない話をする事にした。


「実はさ、最近なんだけど『トミエクマ』の中に行けるかもしれないという『キーアイテム』を偶然見つけたんだ」


「中に……行ける?」

「……最後は恋愛話になる話なんだよな?」


恋愛と決めつけたい緋夏をよそに俺はとりあえず、久遠だけを見て話すことにした。


「…………そう。実際にあちらの世界で暮らす。リアルに生きる」

「…………」

「…………どきどき、もぐもぐ」


久遠は一瞬ポカーンとした顔をし、緋夏は目を輝かせながら美味しそうにポテチをまだ食べている。

俺は話を更に続けた。


「ちょっとした知り合いから助けてくれ! というメッセージを受け取ったんだ。で、そいつに借りが有る俺としては助けてあげたいんだ!」


っと、こんな感じか?



二人を騙して手駒にするべく誘導する。



俺の嘘の話が始まった。


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