107契約
どうしても気になって仕方が無くインターネットで手当たり次第に調べた。
何処かに有るのでは無いか?
という漠然とした気持ちは徐々に必ず見つけてやる。
という思い。
そして強い意志に変わっていく。
昼夜問わず調べ尽くした結果、それは確かに存在した。
それは事実だった。
だが、時に現実は厳しく、俺がその条件を満たすには運以上の覚悟が必要。
ということが解った。
そのさくらんぼうの形をしたキーアイテムを見つけたのは本当に偶然だった。
ある書き込みの些細な一言。
そこから俺の世界が動き出す、はずだった……。
年齢制限ってなんだよ!
俺は怒りと共にどうせそんなもんだよな、という気持ちになる。
どうやらそのキーアイテム スタービットは二十歳までという限定の品だった。
嘘だろ? おい。
何かよぉ。
……何か、無いのかよ?
こ、ここまで来たんだよ、もう少し、もう少し…………。
探す日々が続く。
……もう何日経っただろう。
不快だ。
あちこちと体中が痒い。
俺は生きているのか?
それとも死んでいるのか?
もう自分の状態が分からない。
――――――しかし俺は絶対に諦めなかった。
その日もウエブサイトや様々な書き込みを魚の死んだ様な目でチェックをしていた時だった。
キーアイテムを手に握りしめ、よく解らない書き込みを偶々口ずさんだ瞬間。
頭の中に無機質な言葉が響く。
『システムメッセージ あなたはスキル 【精神誘導】【平面感知】を手に入れた』
精神誘導…………平面感知? スキル? どういうことだ?
まばゆい光と共に年齢制限の文字が記入されていた所が変化して長文が浮かび上がる。
文字が小さい。
視力は悪い方では無いのだが、その文字はとても小さかった。
小さい錠剤の薬に書いてある小さいアルファベットや数字ぐらいの小ささの文字に俺は諦めてルーペをインターネットで購入し、数時間後に宅急便で届くと文字を読んでみた。
『システムメッセージ エラーコード×××× 貴方には資格がありません』
貴方が使用するには――――。
資格のある人物に更なる有資格者からエナジーを奪ってからの使用。
奪い方。スタービットを有資格者が装着又は握りながら相手を攻撃する。
有資格者による攻撃からのエナジーの譲渡。
攻撃の大きさによってエナジーが貯まり全て貯まると即時使用可能となる。
使用した人物の記憶の一部は残り貴方を誘導するスキルを直ぐに学びます。
誘導するまでの時間は存在しその間のみ魂は器に収納され時を待ちます。
例外としてエナジーが貯まる間近になると無資格者でも攻撃しエナジーを奪う事も出来ます。また、エナジーが溢れる程に貯まった時のみスター状態となり器の魂は自動的に場所へ辿り着き更にエクストラを得るでしょう。尚、奪われた人物のエナジーは…………。
……………………要約するとつまり俺以外の人物に目標を達成してもらい、俺を引っ張り上げて貰うって感じか。
例外は良く解らないな。
とりあえず資格のある人物とか、有資格者とかどうやって見分けるんだ…………。
キーアイテム、スタービットを左手で握りながら考えていると突然。
「熱っ!」
握っていた手のひらが熱くなり俺はびっくりしてスタービットを落とす。
「熱っち熱っちぃー ふぅーふぅー」
「ぐぉぉぉ…………お?」
手のひらを熱が浸透し甲には何かの紋章のような痣が焼き付く。
そしてさくらんぼうのようなキーホルダーは二つに分離した。
「な、何これ…………や、焼きごて?」
徐々に痛みや熱さが無くなり左手の甲には紋章のような痣が残り何処かで声が聞こえる。
『よお。聞こエルか? 此処だよ。此処』
回りを見るが誰もいない。
再び痣よく見ると羊だか、山羊の様な顔の痣から声がしている。
「え? な、な、何だ!?」
『我を起こしたのはお前ダヨ』
手の痣から声が聞こえる。
起こした? 俺は何かしたのか?
「起こした? どういう事だ?」
『お前がソレを握りしめて色々と考えていただろう? んで、その考えの中に我を起こす文言があったんだろうナ』
『まぁ、んなことはどうでも良イ。我の名は【アーノルド】早速だが、お前と契約シテヤル』
「契約?」
『あぁ――――――――今、現状を把握した。お前の望みが叶う様に協力してヤル』
「そ! それって、俺はあの世界に行けるのか?」
『お前次第だ。だが、手助けしてやろう…………代価は貰うがナ』
「代価って……?」
『お前の肉体を貰う。どうせ上手く行ったら要らないだろ? ソレ』
…………確かに――――――――この世界に未練は無い。
だけど、コレってアレだよな? 悪魔的なアレだ……。
「…………解った。好きにしてくれ。あ、でも何かオマケもくれ」
『――以外に強かだナ! 気に入った。よし、お前の望み、叶えてやるデス』
瞬間、腕の痣が黒く禍々しい光を発する。
と同時に次の文言が頭の中に響く。
『システムメッセージ 貴方はスキル 【精神誘導+5】【平面感知+5】【未来予告ー10】【受け継ぐ力】【お子様ランチ】【トレース】【相打ち】【使い魔 メテムル】を手に入れた』
『まぁこんなもんか…………しかし、お前、戦う才能無いナ』
「……ほっとけ。……………………んで、プラスは解りそうだが、マイナスって何?」
『それは負の感情の遺産だ。要するにこうなったら嫌だナ、という思いが叶う―――――かもしれない』
左手甲からの言葉は最後の方もの凄く小さい声だった。
「微妙だな――他にマイナスな面は無いのか?」
『ソウダナ。ソモソモこの資格をテに入れると何らかノ感覚が鈍クナルとか、死に対して希薄にナルとか後は欲望に忠実にナルとか言われている。個人差ガアルので一概には言えなイらしいゾ。……仕様デスネ』
「なるほど。仕様ですか」
『今、我は封印されていてナ……今はこれが精一杯だ。ダガ、別の世界にお前が行き、我がお前の肉体を得れば封印は解かれ我の【受け継ぐ力】をお前も得る』
「ふむ、理解した……だけどお子様ランチってなんだよ!」
『旨いゾ? まぁ今は気にするナ……』
「気になるだろい!」
『ソンナコトヨリ時間ガナイ。ジュンビダ! サクセンカイギをスルぞ!』
「…………解ったよ」
作戦会議が終わり、あいつは寝る、と言って話しかけても反応しなくなった。
結局【お子様ランチ】については奥の手だ。
発動条件を満たしたら覚悟を決めて名を呼べ。
我が発動させてやると条件だけ教えてくれた。
条件は頭に血を登らせる事。
とか、いまいち要領を得ない内容だった。
発動条件すら満たせない様なら代価は貰うが手伝ってやると奴は俺に言った。
俺はさっき落としっ放しなっていたスタービットを恐る恐る指先でつつく。
もう熱くは無さそうだがサクランボが二つに分離している。
これは…………一体何だったんだよ!
あいつからの話は大体理解した。
更にこれから何かが起こるらしい。
そしてそれは俺にとってチャンス、と言うことらしい。
運命の糸は紡がれた、とか何とか言っていたな。
物凄く胡散臭い奴だったが藁にも縋りたい俺は奴の全てを信じて受け入れる事にした。
俺はあいつに言われた事を思い出しつつスキルを試してみる事にする。
まずはこれからだな…………【平面感知+5】
頭の中でスキルを唱えると同時に手のひらから何かが浮かぶ。
それは立体映像みたいな…………これ、地図か? 右手で地図を触ろうとすると地図が少し動く。
これ、スマホか? その地図はタッチパネルの様に操作できた。
どんどんズームしていくと見慣れた……うちじゃん。
これ、どう見ても…………。
自分の住んでいる家の所に黒い点滅が見えた。
「なるほど……。先ほどの平面感知って…………」
「この黒い点が俺か……ってことは他に何か点が有るの…………あ?」
自宅から数分にある近くのコンビニ。
その辺りに動く白い点滅している物が見える。
「ち、近いな…………これは、誰だ?」
その点滅はぶれながらコンビニに入って行く。
何気なくその点滅を見ていると点滅が分裂する。
そして各々数分で動き出す。
「あ、動いた……」
点滅が移動をしだした。
突然動きが少し速くなり点滅が移動していく。
点滅が動く。
これって、何なんだろうなって感覚から、誰だろうという気持ちに変わりつつあるが、どんどん自宅に近づいてくる二つの点滅に俺は恐怖を隠せない。
鼓動が早くなっている気がする、意識すると更に早くなった。
『ドクン……ドクン……』
嘘だろ? おい! マジか? マジに怖いな。
その点滅は自宅から恐らく数メートル。
もう数年間は開けていない二階、自室の部屋の窓を開ければそれが見えるだろうか。
二つの点滅が、自宅の前を通過……せずに止まる。
止まってしまう。
そして…………。
『ピンポーン』
自宅のベルが鳴らされた。数秒後に再び。
『ピンポーン』
『ピンポーン』
「ど、どど…………どうし……」
俺はこの逃げ場の無い自室の一角で狼狽える。
何か、何処か……。
何処に……。
逃げ――――――――。
『ガチャ』
『バタン』
話し声が聞こえる。
廊下を歩く音、階段を上がる音も。
俺の呼吸音と心臓の音も…………。
俺は左手の甲の紋章を必死で右指で叩く。
『…………コンコン』
そして、自室の扉がノックされる。
俺は息をすることも忘れてじっと自室の扉を凝視すると話し声が聞こえる。
そして鍵など無い自室の扉が開かれる――――――――
★活動報告 更新しました。
別の視点の物語についてです。
3日前から上げてみました。




