106博士
人は、考えることを止められない。
たとえそれがどんな些細なことだとしても、その本人にとって気になってしまった事柄に関して言えば何かを考えてしまう。
……しかし結局最後には答えは出ない、若しくは無いのかも知れない。
それでも考えてしまう。
そして何時も興味を示す先に有るモノはこの世界にはなかった。
学生の頃までは特別何かをしたいとか、したくないとか、ただ、毎日を流されるように生きていた。
何かに打ち込む様な物も無く。
何かに打ち込める。先に行ける人間を心底羨んだ。
学校を卒業したら社会に溶け込み働きながら普通の人生を歩み、好きな人が出来て、結婚して……。
そんな普通の人生にあこがれて生きていた自分もあった気がする。
年を経るにつれ、生きるのに臆病な自分に気づいた。
それでも何かをしたいと思うようになった。
自分の好きなこと、出来ること、苦手なこと、得意なこと……。
どうせやるなら一番に少しでも近づけるものがやりたかった。
余り、目立ちたくはなかった。
人に見てもらいたいという感情と、そんなに見ないでくれという感情は心の中で混ざり合っていた。
特に得意な物は無かったが、子供の頃からゲームが好きだった。
しかし残念ながらそんなに上手では無かった。
色んな媒体から様々なゲームが発売され、周りの友人達より上手く出来るとそれだけでも嬉しかった。
だがどうせなら一番を目指したかった。
その頂に登り詰めるとどんな景色が見えるのか……。
ただ、知りたかった。
我が儘にそれを求めた。
色々な物事をして生きてきたが、どれも一番にはなれなかった。
何かが全然足りないという思いだけが残り、それは俺を苦しめた。
何でだよ。一番になれない。
何時しかインターネットのゲームに嵌まり、家に引きこもる様になった。
社会に出て、会社に行き給料を貰う、ただ余暇でゲームを楽しむという生活のバランスが崩れた。
インターネット上でのゲームというのは終わりが無いゲームが多かった。
人が群がり熱狂し時間と共に人が減る。
そんなゲームしか存在しなかったがその囲まれた世界は途轍もなく広かった。
時間をどれだけ使っても追い越せない奴はいた。
レベル制にスキル制、仕舞いには課金額が物を言うゲームまで現れる様になった。
そしてそこには何かが確実に存在した。
はぁ? なに? この初期アイテム課金って剣一本5千円?
阿呆かよ?
そんなのいきなり課金する馬鹿いるのかよ?
――――――――って思っていたら、半年、一年後には5千円?
あっは、マジかよ。
めちゃくちゃ安いな……。
――――という自分の中の価値観の変化に驚くほど小さな世界も変わっていく。
インターネットの色々なゲームを繰り返し、繰り返し。
ふむ。リアルよりは面白い…………。
だが、全然に満たされない。
所詮誰かが作ったゲーム。
何かが――――そう満たされない。
そうだ! この弱い自分と現実は何も変わらない。
何でだよ。
ゲームでは現実は変わらない。
現実って何だ?
ゲームって何だ?
誰か教えてくれよ。なぁ?
下っ端やバイトとして、人に使われるのももうたくさんだ、働きたくない。
負けたくない。
こんなゲームの世界のような生活をしたい、自由に人生を生きてみたい。
生産性も達成感も何も無い――――。
この世界から逃げ出したくなる気持ちは日々、抑えられなくなっていった。
そんな時。とあるゲームの話をウエブサイトで見つけた。
そのゲームのような世界に行けるらしい。
その資格さえあれば……。
初めは何かの冗談だろ!? ぐらいに思っていたのだが、そのゲームを実際にプレイしてみて考えが変わった。
俺はこの世界で生きたい。
この気持ち悪くも美しい世界でなら。
頑張りたい。
もう一度だけ。




