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100幼なじみのお姉ちゃん

「ごちそうさまでしたー」

「ごちそうさまでした」


「洗い物わたしがしておくから、ちょっとくつろいでてー」

「あぁ、その間に学校に連絡入れておくよ。穂美香、確かA組だったよな?」

「うんーA組だよ。あ、そろそろ時間だね。ごめんねおにいちゃん、お願いー」


おにいちゃんが学校に電話をしてくれた。

こういう場合本当は、おにいちゃんの体であるわたしがしていかなきゃいけないのかなぁ……。


「よし、とりあえず今日と明日を休みにしてもらった。一応、明日も電話は掛けてくれって言ってたから、また明日も電話だけは掛けないとだけどな」


「これで、時間は出来たね。おにいちゃん」

「あぁ、少し休んだら始めるか」

「うん。頑張るよ――――」


わたしたちはリビングで一緒にテレビを見ながらくつろぐ。

番組の間、CMのタイミングでおにいちゃんは話し出した。


「よし、そろそろ始めるか。準備は良いか?」

「……大丈夫。やってみる」


まずは会話から、わたしは『穂美香』とおにいちゃんを呼び、おにいちゃんはわたしを『朋くん』と呼ぶ。

あとは話し方。

仕草、物腰、歩き方や自分が知っている自分の癖。

とか、日常的に生活していておかしくないようにする。


この状態が一体、何日続くか解らないから心得ておく等。

おにいちゃんは話してくれた。


次に学校の友達の事とかの細かい情報共有をして、変わったことが有った時は、その日のうちに話し合っておこうと提案してくれた。


勉強は、時間を作って教えてくれるらしい。

出来なくても良いよと、おにいちゃんは笑って言ってくれた。


後はたまに来る幼馴染への対応、学校外での知人等についても話し合った。


そして最後に。


「いいか、穂美香、演じるんだ。慣れないうちは女優になった気持ちで演じてみろ。俺を演じれば良いんだ」


「おにいちゃんを演じる。そうか、そうすれば良いのか」


「話す相手を騙していることにはなるが、それでも演じろ。後ろめたさは考えるな、お前は優しいから、そこを自分のネックとして捉えろ、お前のおにいちゃんはこういう人なんだと、周囲にアピールする。時には攻めて、時には引く。何もしなくても良い。沈黙は金だ。どうしよもなくなったら、逃げても良い。自分の心は大切にしろ、しかし強くなれ。おまえはおまえでいる限り、悪くない。俺はその全てに責任を取る」


おにいちゃんはわたしに対し、とても参考になるアドバイスをくれた。

おにいちゃんはわたしに物凄く優しくとっても心強い。


これは本当に――――。


「…………うん。頑張ってみる。ありがとうおにいちゃん」


「穂美香なら、大丈夫だ。最後に俺の友人の『村山郷愁』だけは一応気をつけろ、何度か会っているよな?」


「えと、『ノスタルジア』さんだね?」


「そうだ、郷愁は俺に詳しい、まぁ、仲が良いということだけど、それ以上に厄介なのは穂美香に気がある」


「気がって……そう、なの? …………わかった」

「面倒だったらアニメの話で誤魔化せ、若しくは休み時間には席を立ち、俺の所に来ても良い」


「うん、うん」

「その他に何か有るか?」

「え、とね……」

「二人だけの時とかは今まで通りでも良い?」


「勿論だ、その時はちゃんと戻すよと合図をくれれば良いから、外に出ている時は、二人だけでも一応我慢してくれ」


「ありがとう。おにいちゃん。もう大丈夫だよ。やってみる」

「よし、では簡単な会話から練習しようか。――――――――――――――――じゃあいくね」




「朋くん、あとで夕飯の買い物つきあってくれないかな?」


夕食…………えーと、こんな感じ……かな?


「あぁ、何時ごろ行こうか穂美香」

「そうだね~。夕方だともしも学校関係とかの人に会うと面倒だから、二時頃行こうか」


「うん。時間を空けておくよ」

「それと明日恐らく、隣のあおちゃん来るから気をつけようね。朋くん」


『あおちゃん』わたしは隣の幼馴染のおねぇちゃんの事をそう呼んでいる。

そう。毎週木曜日は『柚葉青葉(ゆずりはあおば)』ちゃんが来る。


オカズをお裾分けしに、そしてうちでご飯を食べて帰る。そんな関係が結構続いている。

そしておにいちゃんは『おばちゃん』と呼んでいる。

そっかぁ、こういうのは本当に危ないなぁ……。


おにいちゃんはあおちゃんの事『大魔王』ってあだ名を付けて怖がっている?

みたいな感じだけど。わたしには優しいし、良いおねえちゃんなんだけどな…………。


「……おばちゃん来る日だったな。それは危なかった」

「そうなんだよー。気をつけてね。朋くん」

「今日の夕食は何にしようか? 穂美香」

「うーん、肉じゃがとカレーチャーハンにしようか? 頑張って作るよ。朋くん」

「穂美香…………それはピラフじゃ」

「「あはははははー」」


わたしはラノベの『いせちゃー』に出てくる小話をおにいちゃんが振ってきたのを上手く切り返し少しだけ安心した。


「まぁ、これだけ出切れば、なんとかなりそうだね。朋くん」

「あぁ。自身が持てた。ありがとう。穂美香」


「あとは、ばれない程度になら自分なりにアレンジしてみよう。この際だから演じているのも楽しもう。朋くん」


「なるほど……わかった。俺はお笑い芸人目指すよー。穂美香」


わたしは少し自信が持てたのが嬉しくて冗談を言ってみた。

うーん、後はおにいちゃんの知り合いに、どれだけ自然に振舞えるか。


おにいちゃんは結構、わたしの知らない知識が多いから、そこだけなんとかしなくちゃ。


上手く誤魔化せれば良いのだけれど……。


「……芸人かぁ。応援してるね。朋くんがお笑い芸人目指すーなら~。あたしは何目指して朋くんを困らせようかな~」


「っっ…………はぁ~。……穂美香の好きなものを目指すと良いよ」


わたしの顔は苦笑いしていた。

このおにいちゃんであるわたしを他の友達とかが見たら、どおなっちゃうんだろ……。


「ふふふふー。墓穴を掘ったね。朋くん~。これからはね。すっごく可愛い妹をみんなに見せてあげるんだからねっ!」


……おにいちゃんはツンデレ系だった。


「そろそろお買い物に行こっか、朋くん」

「そうだね。そろそろ良い時間か」


「可愛い妹と一緒にお買い物に行けるんだから、感謝しでよねっ」


先程おにいちゃんがコーディネートした格好は、少し短く明るい色のプリーツスカートに、上はおにいちゃんが自分の部屋から持って来た、わたしには少し大きめだろうTシャツ。


結構な感じで短めなスカートが隠れてしまっている。


そしておにいちゃんはノリノリだ。

もう、わたし、駄目かも……。


こんなの無理~~~~。


「――――これが、話に聞いていた。無理ゲーってやつの正体だったのか……」


「わぁ、嬉しいな。朋くん。もう立派なゲーマーだね。最近あたしがやっているネットゲーム。今度……一緒にやろうねっ」


「……わかったよ。穂美香。じゃあー。腕組んで一緒に買い物に行こうか」

「……やさしくエスコートしてね」


っっ。

もうどうにでもなれー。


わたしはおにいちゃんのウイークポイントが未だに良く分からなかった。

というか、お兄ちゃん可愛いんだけど。


そして、恥ずかしさと嬉しさが、わたしの心に流れてくる。


それは――――おにいちゃんととても仲良くなれていく様な。

そんな暖かい時間だった。


商店街はまだ時間が少し早い事もあり、何時もよりほんの少しだけ、人は少なかった。

始めにクリーニング屋さんに寄ってわたしの制服一式を頼み。


わたしはおにいちゃんと一緒に腕を組みながら商店街を一周見て周り。

日持ちの持つものとかも、ついでに購入していった。順調にお買い物をしていく最中。



その出来事は唐突に起こる――――――――



「あれ? 朋と、ほみちゃ……ん? なんかいろいろおか、しいんだけど、私の気のせい……かな?」

そこには隣の幼馴染のおねえちゃん。あおちゃんがいた。


「………………」

「………………」


「……朋、何が有ったの? というか、う、むぅ…………」


はわわ、こ、これは予想外だよー。


わたしは固まった。


「………………」

「………………」


お、おにいちゃん、どうしよ、どうしようこれ……隣を見るとおにいちゃんも固まっている様に見える。

わわわたしが、なんとか、うーんと、どうすれば――――良いのだろうか。


「……えと、買い物ダヨー」


わたしは無理してそう答えた。

やっちゃったかもしれない……あきらかにわたしは今怪しい。


『怪しいわたしは今おにいちゃん』『今のわたしはおにいちゃん』『おにいちゃんは今わたしの』まるで呪文のようにそう三回。心の中で唱えていた。


「そ、そう、お、お買い物なんだ。あおちゃんこんにちはー」

「うん。穂美ちゃん。こんにちは。……ふーん、腕くんでさぁー。……そんなに仲がよかったんだ」

「あ、あぁ。ちょ、ちょっと、今……」


あわわわ。今忙しいとか言える雰囲気ぢゃないよー。

こ、こういう時、なんだっけ、あの、あの、あれだ『大魔王からは逃げられない』だっけ? わたしは混乱してきた。


「うん。ちょっと色々あって、朋くんともっと仲良くなったんだ」

「そう。穂美ちゃん、ん? 朋くん? ……で、今日…………学校休んでたよね」


わたしはこんな時どうすれば……何か、ないの? あ、あれで行こう。


「うん。ちょっとあたしが朝、体調悪くて、動けなかったんだ。今は……少し、良くなって、一人で家に居るのも心細いから、朋くんに無理言って付いてきたんだ」


おおっと、路線変更。

この流れ、おにいちゃんについていこう!


「そうなんだよ、おばちゃん。実は俺も、ちょっと朝から少し、体調がおかしくてね」

「ふーん……」


これは、どうだろうか……。

いけるかな?

かなぁ……?


わたしはドキドキしていた。

こんなとき『やったか?』とか言っちゃいけない場面だったよね? 確か……。


そんなシーンに視える――――。


「……まぁ、良いか。明日行くつもりだったんだけど、今日も行って何か手伝おうか? 朋」

「いや、今日は大丈夫だよ、明日来てくれると、俺も助かる」


わたしはほっとした。

ふぅ~。

もう大丈夫そうだ。危険があぶない危ないよー。


「わかった。何か有ったら、電話してくれればすぐ行くよ」

「あぁ、ありがとう。あおち……」


「ああっ! あおちゃん。あっちで誰か人が待ってるみたいだよ。そろそろ戻ってあげたほうが……」


ゃん。――あ! はわわ、おにいちゃんが助けてくれた。

危ない、ありがとうおにいちゃん。


…………これは、判定は――――。


「…………あーあっと、そうだ、こっちも用事で来てたんだ。――まぁ、何かあったら電話ちょうだい。無くても全然行くけどね!」


「うん、わかった。ありがとう、あおちゃん」

「じゃ、またねー」


「「またねー」」


……あおちゃん大魔王は去っていった。こ、怖かったー。


「……ふぅ~~~~。あぶなかったね。朋くん」

「おにい……穂美香。たすかったよー。ごめんなさい」


「いや、今のはイレギュラー過ぎたよ。あたしも少しフリーズした」

「もう、あ、おばちゃんが途中から、大魔王にしか見えなくなってさぁ~」


「あは。あたしもそれに見えた。というかあたしには何時もそう見えてる……それはそれで可愛いんだけどねー」


「そうなんだー」


「もう、大魔王にフィールドで会うなんて、どんなエンカウントしてるのこの無理ゲー」

「ははは。……明日も大変かもしれないなぁ、はぁー」


「大丈夫だよ、朋くん。今ので確実にレベルは上がってる筈だよ」

「そうかなぁー穂美香。結構俺、失敗しちゃった気がする……」


わたしたちはなんとか、あおちゃん大魔王から命からがら逃げ帰ってきた。これは明日も憂鬱だよー。

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