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<19・機械人形も夢を見る。>

 ふと、何気なく思う時があるのだ。

 都と演劇部に入った。基礎練習と、秋大会に向けた脚本決めなどをした。脚本の書き方を、先輩達にみっちり指導された。

 小テストでボロボロだった。落ち込んでいたら都が慰めてくれて、沙乃子と加奈を交えて勉強会が開かれることになった。

 音楽の課題が順調に進んだ。休み時間も使って練習をしていたら、他のクラスメート達からもちょいちょいと声をかけられるようになった。元合唱部の生徒が歌うコツを教えてくれたら、二人とも格段に声が響くようになった。それから――親友と言うまででなくても話す友達が増えた。

 全部、全部、全部。そんな何気ない、小さな幸せこそが本当は全てだったのかもしれないと。自分はブスでモブ顔なのだから、退屈な人生しか送れないに決まっているなんて、そう思っていた自分が一番退屈な存在だったのかもしれないと。魔法なんかなくてもいい。たった一人や二人、本当に心を開ける友達ができるだけで人生はいくらでも変わっていけるものなのかもしれないと。


――もし、ブリジットが……貴族のお嬢様でなかったなら。いえ、むしろ……厳しい教育の全てをこなせてしまうほどの器量がなくて、あるいはもう少し庶民に近い学校で普通の友達の一人でも作っていたら。……前世の“彼女”にもまた、違った人生があったのかもしれない。


 あるいは、前世でロミーとちゃんと友達になれた可能性もあったのかもしれない、と思う。

 わかっている。そんな環境のせいにしたところで、ブリジットの罪が軽くなるわけではない。結局何が悪かったかと言えば、“ブリジットの性根が腐ってた”以外の何物でもないのだから。


――償わなくちゃいけないのかもしれない。でも私は……ほんの少しでも許されるなら。それ以外の感情で今は、彼女と一緒にいたいと願うから。


 件の曲のカラオケ音源はアップされていた。その動画から音声をDLしてアイポッドに落としてある。ついに、課題を発表するその日。アイポッドをスピーカーに繋げながら、あやめが思っていたことは一つだった。

 自分は、ヒロインではない。

 それでも今はちょっとだけ、彼女と一緒に輝いてみたい。それをきっと、都も望んでくれるから。

 音楽室の、ピアノの前。みんなが見ている前であやめは震える足で立ち、胸いっぱいに息を吸い込むのである。




『1と0の狭間から 感情が顔を出す

 空っぽの記憶 それが僕

“これから創ればいい 二人なら出来るから”

 笑顔に動き出す “ナニカ”


 暗い街の隅抱え込む 君の傷 少し触れた時

 機械仕掛けのこの心の奥に今

 灯された未来色染まっていく


 君を探してた 同じ世界を見てる君を

 いつか壊れても “ココロはいつも傍に置いて”

 僕は歌うから 君の為だけにいつだって

 共に生きていた その証を残せる日まで』




 “君ヲ探シテタ~機械人形ノ見ル夢ハ~”。再生数が千にも満たない、動画投稿サイトのすみっこのマイナー曲だ。それでも二人で歌うのに相応しいと思って、この曲を選んだ。都の伸びやかな裏声に丁度良い声域で、かつあやめが1オクターブ下で歌うのに丁度良くて。

 そして、どこか感情移入できる曲。

 今ならなんとなくわかる気がするのである。彼女はきっと、この歌の主人公であるAIの少年に自分を重ねていたのだと。怯えてばかり、自分の心を殺してばかりの自分にも、少しずつ光が見えてきて。一人ではできないことが、二人ならきっとできると信じられるようになった時、新しい未来がそっと温かい光を灯したのだと。

 それはあくまで、都自身の素質で、力であるとは思っている。それでもきっとこの歌を通して、都はあやめに感謝を伝えてくれているのではなかろうか。そう思うのは、己の自惚れなのだろうか。

 ああ、今だけは、それでもいいと思いたい。

 隣でのびのびと歌う都が、どこまでも嬉しそうに見えるから。




『造られたプログラム この気持ちはバグかな

 血の通わない身 “何故嘆く?”

 魂の欠片でも 人間(ヒト)になれる気がした

 君が僕をそう 変えたんだ


“ただ創物主の意思にだけ 従順であれ”と声がする

 機械人形も夢を見るということ

 君と出会わなければ知らずにいた


 君を探してた 全てこの日の為にあった

 熱の無い()でも 心と心で手を繋ぐ

 僕は歌うんだ 君がくれたこの命で

 共に生きてゆく 信じる絆がある限り』




 曲は、あと少し。最後のサビと一部のフレーズで終わりだ。

 らしくもない緊張で手が震える。不思議なことだ。ブリジットであった時はいつも堂々と胸を張って歩けていたのに。多くの人に注目されても、震えるどころか恍惚感さえ覚えていたのに。


 さっき少しだけ、Bメロのハモリで声がひっくり返ってしまった。おかしいと思われなかっただろうか。都の歌声はどこまでも綺麗で澄んでいたのに、邪魔をしなかっただろうか。

 誰かのために失敗したくない、なんて。かつては思ったことなど一度もなかった。これが恐怖というものなのだと知る。自分のせいで、誰かの名誉が傷つくかもしれない恐怖。あれだけ都に大見得を切ったのに、本当はどこか怖くて仕方なかったのだ、自分は。

 でも、そんな風に思えるのはきっと、いつの間にかそれだけ都のことが大切な友達になっているからで。

 ならばこの恐れを知らないままでいた方が、きっと自分にとって不幸なことであったはずだ。それはつまり、本当の愛を知らないことと同義であるのだから。




『君を護りたい 変わる未来の果てまでも

 喧嘩したっていい 最期までどうか傍にいて』




――最期まで、なんて大袈裟なこと言わないから。今、あと少しだけでも、このままで。




『僕等また歌う 声が枯れるまでこの想い

 君と生きられた この世界は素晴らしいもの


 Lalala...

 Lalala...

 Lalala...

 Lalala...


 明日はどんな歌を歌おう?』




 後奏が終わる。なんとかラストの転調まで歌い切った。ふう、と息を吐いた次の瞬間、クラス中から湧き上った大きな拍手に驚かされる。


「良かったよー!」


 誰かがそう言うのが聞こえた。らしくもなくあやめは涙が出そうになって俯く。まだ、本番はこれからだ。それでも自分は、少しでも約束を守れただろうか。都の本当の魅力を、みんなに伝えられただろうか。


「あやめ」


 すぐ隣で、都の声がした。


「ありがとね」

「……うん。こっちこそ」


 その時は恥ずかしさと、どうしようもない気持ちで胸がいっぱいで。彼女の顔を、まともに見ることさえ叶わなかったのである。

 この日の放課後。合唱部に来ない?と都がクラスメートに滅茶苦茶勧誘されていたのを見た。音楽専攻を取っていた他のクラスメートからも褒められていたようだ。とても小さな目標だけれど、どうやら自分は達成することができたらしい。なんだか自分のことのように嬉しい、と思ったのはここだけの話である。




 ***




 ・

 ・

 ・


695:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

クラスの嫌いな奴を追い出すのってどうすればいいの?

イジメとか騒がれるのもうざいし


696:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

また怖いこと言ってる奴がいるんですけど


697:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

会話しないで無視しておくんじゃ駄目なわけ?


698:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

>>697

無理。

視界に入るだけで苦痛。人のことを見下してます、私は凄いんですオーラやばい。同じ教室にいるだけでストレスってかこっちがいじめられてる気分


699:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

どんだけ嫌われてんのそいつ


700:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

なんかマウントでも取られたわけ?


701:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

ていうか、気づいたんだけど>>695って前スレで暴れてた奴じゃない?

クラスのSとかいう女子が空気読めないから嫌いとか言ってた。

一年の何組だっけ?


702:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

誰?


703:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

見つけた、これか?




>367:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しの>メロン

>Sの場合はそれだけじゃないんだってば。なんていうか、空気も読めないというか?

>クラスで一番盛り上がってるグループに入れてやってんのにさ、喋ってても全然話合わせてこないんだよね。

>なんか曖昧に頷いてるだけなのがムカつく。仕方ないので頷いてあげてますーみたいなウエメセな態度が見え見えで




704:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

あってる。そいつがまだ教室に居座っててうざいの


705:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

居座ってるも何もクラスメートなんだからしょうがないじゃん


706:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

え、本当に退学に追い込みたいとか?ガチ?うざいってだけでそこまで思うもん普通?


707:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

生理的に受け付けないんだからしょうがないじゃん。

ていうか、音楽の授業で、班分けで歌歌うってのやったんだけど、音楽専攻のやつなら知ってる?

その時キモ声で、超マイナーなボカロ曲歌うとか空気読めないことやったのに、やったら先生受けもクラスの受けも良くて意味がわかんなかったんだよね。

そいつもキモ声だけど、一緒に歌ってた女子も結構ゲボ声だったのにさ


708:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

あー……音楽専攻選んだの即座に後悔したあの課題か


709:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

何故に一年のしょっぱなでそんなハードル高いことやらせんのって思ったやつだ


710:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

ボカロは別にいいだろ、つかなんかみんな結局ボカロかポップスばっかり選んできてたじゃんみんな

マイナーどころ選んできたのは度胸あるけど


711:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

そんな変な歌チョイスしてきたわけ?


712:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

歌がどうのじゃなくて、空気読めてないのが問題なわけ。

あと声がまじでキモかったの!私はみんなのヒロインですーみたいな顔して、こっちにマウント取りたい空気がすっごいしたっていうかとにかく目障り


713:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

そんな空気空気って言われてもさあ


714:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

そういうこと言う奴に限って大抵空気読めてない定期


715:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

さっきから聴いてると、なんかちょっとしたことが気に障ってるだけじゃないの

マウント取ってきたように聞こえる、とかもうなんとなくムカつくからってだけ。

そりゃ思うのは自由だけど、そんなことで退学までさせられちゃたまんないじゃん


716:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

出た擁護。本人降臨ですか?ww


717:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

ちょっと庇うようなこと言うとすぐ本人降臨とか言う奴なに


718:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

ていうか退学させるってどうするんだよ

マジでそんな理由で嫌がらせして学校やめさせるとか、不正を捏造するなんてしたら犯罪の領域だぞ?


719:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

わけわかんないし

なんであんな女の味方するわけ?枕営業でもされてんの?


720:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

さっきからなんなん、こいつ


721:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

枕営業とかイミフ


722:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

そもそも話題の中心のSって女子だれよ?ってかんじ。顔も見たことないんだから、擁護もへったくれもないんだが


723:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

単にやばい奴が暴れてるから落ち着けと言ってるだけだっつーに


724:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

きもちわり


725:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

私は悪くないんだから、あいつを追い出すのはただの正当防衛みたいなもんでしょ

あーあーあーほんとイラつく、殺したい

でもあんなやつのせいで私が犯罪者にされなきゃいけないのも意味わかんないし、つかあいつの友達も邪魔だし


726:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

落ち着けてば


727:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

なんかもう関わらない方がよさそうな

こいつやばくない?


728:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

俺だって嫌いな奴の一人くらいいるけど、殺したいっていうのはさすがに


729:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

やっぱあれかな、あいつらに頼むしかないかな

拉致監禁でもしてもらって、恥ずかしい写真でもバラ撒くぞって言ったら言うこときかないかな


730:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン


731:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

おい、何言って


732:学園のロンリーガール/ロンリーボーイ@名無しのメロン

クラスの平和の為だもんね

これは正義でしょ、正義。私にはその権利がある。被害者はこっちなんだから


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