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白い月の影  作者: ふじしろ
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9.回復

紫音の部屋の中で黒鷹と白虎が眠っている紫音の顔を心配そうに覗き込んでいる。真上に上がった昼の日差しが紫音の頬を照らし始めた。まぶしそうに紫音が目を覚ます。

「ああよかった!」

白虎が思わず声上げる。黒鷹はベッドの横にたたずみ紫音の顔をじっと見つめている。

「私・・・ああお兄様の・・・」

宙を見つめながら昨日の事を思い出している紫音に黒鷹が左手で水を差し出し右手でベッドから紫音を抱えるようにして起こした。

「ありがとう・・・二人ともあれを見たのよね?私がお兄様の・・・」

戸惑うような師草でチラリと黒鷹に視線を送ると紫音はグラスを受け取った。少し興奮した様子の白虎ははしゃぐような様子で早口に言葉を続けた。

「ええ。そうです。紫音様のお力を目の当たりにして正直びっくりしました。それと同時に紫音様をお守りする私たちの役目の大切さも今まで以上に身にしみて感じられたのです。お体は大丈夫ですか?」

白虎の興奮した様子に思わず紫音が微笑む。

「ありがとう。心配してくれて。」

こういった時は白虎の素直さが本当にありがたく感じられる黒鷹だった。黒鷹は白虎ほど単純に驚いただけではなかった。守るものと守られるものといういつの間にか自分の中に生じていた上下関係それはあくまで自分ひとりで感じていたものだったがそれが小さく崩れたのを感じていたからだった。紫音の能力をまじかに見て今までの小さくか弱い少女としか思っていなかった紫音が少し遠くに行ってしまったように感じていたのだった。その黒鷹の変化を感じ取ったのか紫音が黒鷹の顔を不安げに見つめている。黒鷹は自分の中で生じたその感情を押しやるかのように微笑作り紫音に向き直った。

「大丈夫ですか?心配いたしました。」

紫音は黒鷹のその言葉を聴いて安心したような笑みを浮かべうれしそうに言った。

「ええもうすっかり。」

黒鷹は青磁から言い付かっていた用件を思い出しあわてて紫音に聞きなおした。

「本日はアメリカのフレデリック皇太子が二十歳の誕生日と言うことでアメリカ全土において式典が催されることとなっています。夕刻からこのあたりでも祭りに入る予定なのですが紫音様の舞をいかがすべきか相談してくるように翁と青兄より言い付かっております。」

紫音は血の気が戻った十二歳の少女らしい頬を上気させうれしそうな表情を見せた。

「そうよね。今日は祭り日だったのよ。もちろん舞います。黒鷹も琵琶を弾いて白虎も笛を吹いてくれるのでしょう?」

「もちろんです!」

そう白虎が言いうれしそうに笛を吹く真似をした。午後の明るい日差しの中三人の笑い声が優しく響いていた。


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