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白い月の影  作者: ふじしろ
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6.兄妹


風そよぐ五月青磁は一人自分の部屋の中にいた。木々の緑のゆらぐ様子が部屋の高い箇所にある小窓から見て取れる。時々風にそよいでカーテンが揺らめき外の気候を知らせてくれていた。濡れたように黒いつややかな長い髪を後ろに青い紐でひとつに束ね健康そうな小麦色の肌に漆黒の瞳をもった青年、青磁は分厚い書物に黙々と目を通し時々必要カ所を自分のノートに書きとめていた。とその時一瞬だがカーテンのゆれが大きくなった。同時に青磁は自分の脇にある長剣を掴み取りすっと入り口に対峙する姿勢をとった。青磁が構えたその先の入り口からは麻の暖簾越しに赤羽の声が聞こえた。

「青兄すみません。私です。緊急な用なのです。」

青磁は構えた剣を脇におろすと「入りなさい。」と赤羽に伝えた。

麻の暖簾をくぐり入ってきた少女はまだあどけなさが残る面差しとは対照的に赤く冷めた瞳を持っていた。髪の色はグレーでポニーテールのように頭の高い位置で赤い紐でくくっている。前髪を眉の位置でまっすぐに切りそろえていることで余計に赤い瞳が強調されているようだった。

赤羽は濃紺の胴着の合わせ目から手紙を取り出し青磁に渡すと、うつむいて言った。

「緑尽様の御容態がまた思わしく無いのです。」

青磁が受け取った手紙には緑尽の主治医から緑尽の現在の容態を書き記されたものだった。

青磁は受け取った手紙にさっと目を通すと

「熱が引かれないようだ。別棟の紫音様をお呼びして我らも共に伺うこととしよう。」

赤羽は面を上げると

「黒鷹と白虎はいかがいたしましょう?」

と青磁に問いかけた。その眼差しには弟達も同席させてやってほしいという願いも感じられた。青磁は軽く微笑むと赤羽に伝えた。

「そうだな。あいつらもそろそろ理解できる年齢になってきた頃だろう。紫音様も来られることだ。同席するよう呼んできなさい。私は翁に緑尽様の治癒を紫音様にお願いする許可をもらってから紫音様をお連れしよう。」

外の風が少し強くなったのを青磁と赤羽は感じていた。

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