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白い月の影  作者: ふじしろ
24/30

24.目論

紫音がアメリカのフレデリック太子と偶然にも出会ってしまってからすでに二年が経過していた。一向に収穫の無いミコの生け捕り作戦に苛立ちを隠せない元師サイモンはこのところ自由人にまたその部隊に対しきつい態度で頻繁に連絡を取っていた。いつものサイモンからのお小言交じりの連絡を終えた自由人はため息をつきながら車の外に出た。南アメリカの異国情緒溢れる花々が咲き誇る下町のはずれの広場に自由人たちは車を泊め駐屯していた。じっとしていても汗ばむような暑い夜きつい花の香が自由人の鼻腔にも漂ってくる。自由人たちが駐屯している後方には水田が広がり五キロ前方には集落が見えている。夜でも見えるナイトスコープを片手に少し車から離れると自由人はそのスコープをかざし集落の様子を伺った。

「さんざんお小言を頂きましたが実はもう追いついてるんですよね。」

自由人はひとりつぶやくとそのスコープ越しにみえる風景に満足そうにニヤリと笑った。


自由人はじっくりとしかし確実に青磁と赤羽の一団の後を追い続けやっと今その場所五キロ近くにたどり着いたのだった。しかし自由人はそのことをサイモン元師に報告をしていなかった。理由は二つあった。ひとつはその報告が逆に青磁たちの方へいち早く流れることを恐れたためであった。もうひとつは報告をすると当然のごとくサイモンがやってくる。その場合、自分の指揮の下の行動が取れなくなってしまう。つまり自由人の目的はあくまで赤羽であり緑尽の生け捕りを目的とするサイモンの指揮下で動くことは赤羽を他の部隊に撃ち殺されてしまう恐れがあったためである。サイモンが自由人を利用しているように自由人もまたサイモンを利用する術を身に着けていた。


自由人がスコープ越しに見ている風景の先には赤い瞳の赤羽の姿が写っていた。じっとりと汗ばむ気温はさらに暑さを増しているようだった。スコープを離し自由人は夜空を見上げる。夜だというのに雲が驚くほどの速さで移動している。

(嵐になるか・・・)

自由人は心の中でつぶやくと後ろの車へ戻り部隊を集めるように支持を出した。

(嵐になれば好都合だ。)

自由人はこの地の雨でぬかるんだ足元の悪さも利用しようと考えていた。

(こちらの部隊が二十五名あちらが五十名に満たないとしてもヤマトで女子供を引くと戦えるとふめる人数は三十名にも満たないだろう。剣術ではヤマトも皆優れた兵士かも知れぬが夜目の効かぬ、ましてや雨でぬかるんだ足場の悪さではこちらの遠くからの戦闘が可能な銃火器の方が数段威力を発揮するというもの。ヤマトにも多少の銃があろうが一昔前の旧式のものしか持っていないはず。心配は緑尽の能力がどこまでのものであるか。それだけだ)

自由人が振り向くとゾロゾロと部隊のメンバーが集まってきた。その海賊部隊に向け自由人は今夜かける夜襲について打ち合わせを始めた。風はぴたりと止み蒸し暑さは一層深まった。自由人の真上ではゴロゴロと天高く轟く雷の音がこれから来るであろう嵐を知らせていた。


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