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「隣、いいかな。」


「いいよ、ずっと座っていても。」


「うわあ、優しい。はい、缶コーヒーでいいかな。おじさんは若い子の好みがわからないからさ、自分の好みで買ってきました。」


 大昔からある缶コーヒーをなつきに手渡すと、彼女は眉根に皺を寄せた泣きそうな表情でもあるが、俺に微笑んでくれた。


「君の言う通り、俺はおじさんだったねぇ。」


「おじさんじゃないよ。若いって。まだ三十一でしょう?」


「もう三十一だよ。」


「ナオ君は高校はどんな感じだったの?」


 俺は病院の非常階段から見える景色、いや、そこから空を見上げていただけだが、淡い色の青という秋空を眺めながら、高校時代は何もなかったと思い出した。


「なあんも。好きな子もいなかったし、部活動もそんなにやっていなかった。今思い返せば、詰まんない高校時代だったかもね。」


「じゃ、じゃあさ、達樹先輩の身体でもう一回高校生するのはどうなの?」


「出て行って、じゃ、無くなったんだ?」


 なつきは顔をくしゃっと歪めて、俺が渡した缶コーヒーを抱き締めながら泣き出した。

 彼女はきっとこの缶を開けることなく持ち続ける気がして、俺は彼女から缶を取り上げると、その缶をプシュッと開けた。


「ナオ君。」


「飲んじゃって、そして、俺の事は缶コーヒーを奢ってくれたおじさんとして覚えておこう。」


「――忘れちゃって、じゃないんだ。」


「うん。女子高生とエッチできる夢を見せてくれた君だからね、しつこく俺の事を覚えていてもらおうかなって、さ。」


「残念ね、二十代じゃなくて。」


「いや、いいよ。出来る予定で出来ないで死ぬって、それこそ不幸じゃ無いの。夢の国に誘って奢ってホテルまで取ったのに、私生理なのって言われる不幸そのものじゃないのさ。」


「ナオ君て、さいてい。最低なのに、私はナオ君が好きなの。好きになっちゃったの。どこにも行かないで欲しいの!」


「ありがとう。」

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