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プロローグ

よろしくお願いしま〜〜すっ!!

 目の前で、鮮血が舞う。


 十歳の少年は、目の前で剣を持った男に首を斬られた父の血を被る。父の血は生暖かく、錆びた鉄のような匂いがした。


 少年は、死んでいく父の姿をただ呆然と眺める。


 街へ向かうはずだったのに馬車を奪われ、周りは柄の悪い男たちが囲んでいる。


 横で少年を抱きしめている母は、抱きしめる力を強めて何かを顔に傷のある男に叫んでいる。男も母に何か言っている。母と男の会話なんて頭に入ってこない。


 はじめは、目の前で何が起きているのか理解できなかった。そして、少ししてから気づいた。


 父が死んだ。殺された事に。


 父を殺した男は、いやらしい笑みを浮かべながら、剣を片手に持ったままこちらに近づいてくる。


 母は少年に何かを言った。だが、なんと言っているのか、少年は理解出来なかった。


 少年を抱きしめる力がさらに強まったかと思うと、直ぐにそれは無くなった。


 母は、いつも持ち歩いている護身用の短剣を両手に強く握りしめ、顔に傷のある男に立ち向かっていった。


 だが、男が剣を振るい、母は肩から横腹へ斜めに斬り裂く。


 今度は母の血が飛び散った。


 少年は地面へ倒れた母へ駆け寄った。母は苦しそうな表情で血を吐きながら、少年に一言言って、事切れた。


『生きて……』


 母の言った最後の言葉。これは、母の少年に向けた願いだった。


 地面が父と母の真っ赤な血で染まっていく。


 父と母が殺された。


 少年の中で何かが切れた音がした。そして、何かが消えていった。


 少年の奥に、ふつふつと憎しみと殺意が湧き上がってくる。この男達を皆殺しにしたいと、心が叫んでいる。


 今すぐにこいつらをバラバラに引き裂いて、切り刻んで殺りたい。


 どうすればこいつらを殺せるか。


 どうすればこいつらを……


 だが、いくら殺したいと願っても、少年にはそんな力はない。急に強くなれる訳でもない。


 少年は何も出来ない。ただ、殺意を持つことしか。




 何も出来ない?




 本当にそうか?




 両親を殺した男に少年はゆっくり近づいていく。



 

 いいや。出来る。出来るはずだ……




 殺す……




 絶対に殺す……

 




 男の目の前まで来た。ならあとは殺るだけ。


 少年は男の首に噛みついた。


 口の中に人の少し硬い皮膚の感触と鉄のような血の味が広がっていく。振り放そうとしてくるが絶対に離さない。


 離すのは、お前の首を噛みちぎった後だ。


 顎に力を込めて、首の肉を噛みちぎる。


 少しして、男は動かなくなった。


 周りの男たちは、少年が顔に傷のある男が殺されるのを呆然と眺めていた。先程までの少年のように。


 少年は振り返り、男たちを睨みつける。


 その瞳には、冷たく殺意を宿した深く青い色をしていた。



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