海になるのだらう沈み行く海月
これは海になろうとした海月のお話。
私の双子の姉、海がこのあいだ亡くなった。
享年17歳。死因は首吊りによる自殺。
海は私宛てに遺書を遺していた。
そこにはたった数行だけの文章。
「彼氏との子供ができてしまったの。彼氏には迷惑かけたくないから。海月、ごめんね。」
信じられない。海に彼氏がいたなんて。なんで言ってくれなかったのだろう。海のことは私が一番知っていると思っていたのに。海の心に、唇に触れることが出来るのは私だけだったはずなのに。本当は違ったんだ。
「海の嘘つき。」
そう呟いてみたけれど不思議と怒りは湧いてこなかった。
淋しさだけが残った。
海の名誉のためにこの手紙は誰にも見せないことに決めた。高校生で妊娠なんて、亡くなったとはいえ、このご時世、周りから冷ややかな視線を浴びせられるだろう。誰にも海の名誉を汚してほしくない。
そして私は海の彼氏を捜すことに決めた。
突き止めることは簡単だった。
海の携帯の暗証番号は私と一緒だったのだ。私たちの誕生日。
LINEの連絡先を探す。男の人の名前のもののトーク履歴をしらみ潰しに調べていく。しらみ潰しと言っても私たちの学校は中高一貫の女子高だから男の人の連絡先なんてそうそう無いけれど。それが幸いしてすぐに見つかった。
ゆうくん
という人。その時、彼からメッセージが来た。
<明日、良かったら遊びに行かない?京都とかどうかな?>
彼は他校の人間だから海がもうこの世にいないことを知らないのか。少し考える。海に彼氏なんて正直、一生出来て欲しくなかったけれど、復讐する良い糸口になるかもしれないと思った。今思えば彼氏や男の人といった存在に少し興味もあったのかもしれない。
<いいよ。10時にJR天王寺駅中央改札集合とかどうかな?>
海が良く待ち合わせ場所に使う改札を指定する。すぐに
<了解!>
とすぐに返ってきた。
次の日になった。私たちは見た目はもちろん、話し方や服の趣味もとてもよく似ていたからトーク履歴を全て読む以外には特別な用意は要らなかった。
「ゆうくん久しぶり!二週間ぶりだね。」
「海、来てくれてありがと!」
彼とのデートは楽しかった。復讐のことなどとっくに忘れていた。やっぱり海と私は趣味が似ているのだろう。それに、大好きな海の名前で呼ばれて嬉しかった。私は私とは違って甘え上手な海が昔から少し羨ましかった。でも彼は私のことを海だと思っているので久しぶりに人に素直に甘えることが出来て嬉しかった。
「海」
そう呼ばれる度に彼の事が好きになっていく私がいた。
でも、家に帰ると罪悪感や淋しさ、よくわからない感情が押し寄せて私の心を苛んでいった。
私は何をしているのだ。海の復讐をしようと思っていたのに。
彼のことが好きになってしまったのか。ありえない。彼が海を殺したようなものなのに。
何故か涙が溢れてきた。
もう何が何だか解らない。私は海になりたいけど海じゃない。
海にはなれないのかな。
ふと鏡を見る。海が映っていた。
「海、私、海になりたいよ。大好きだよ。彼氏いたなら言ってくれたら良かったじゃん。なんで彼氏なんて作ったの?女子同士だから?姉妹だったから満足できなかったの?ねえ、海、ゆうくんって良い人だね。死んでまで守りたいのもわかるよ。貰っちゃっても良いかな?ねぇ、答えてよ。答えないとほんとに貰っちゃうよ。」
私は鏡にキスを繰り返す。深い深い溺れるようなキスを。
「ねぇ、海、大好きだったよ。」
あとがき
雨霧 雨です.
私は俳句と百合が大好きなので今回は自分の句を使って百合小説を書いてみました!
時間がなかったのであまり上手く書けなかったですが、、。
展開、急すぎますよね( TДT)ゴメンヨー
楽しんでいただけたら幸いです。