5冊目.続・不審者
不審者は僕に向かって剣を振り下ろす。
死ぬなぁ僕。
僕の目には、振り下ろされる剣がゆっくりと近づいてくるように見える。
僕は剣が来るまで永遠の時間を感じた。
「ハハッ、ハハハ」
不審者は口角をあげ不思議な笑い声をあげながら剣が来る。
僕と剣の間が、数センチという位の時に急に剣に何かが当たり剣の軌道がずれる。
僕はその隙を見逃さずに無理やり体を動かし転がり、避ける。
「何、何があったんだハハッ」
不審者は口角をつり上げ、剣に当たった物を見る。
その何かを拾い上げまじまじと見る。
僕は薄目で見たらそれは小石のようだった。
僕は座りながら無理やり後ろへ下がり不審者から距離を取る。
ハァ、ハァ
息づかいも荒くなる。
逃げようとしても隙がなく、逃げることはできない。
不審者はもう一度剣を握り直し、ゆっくりと近づいてくる。
しかし、何処からともなく小石が飛んで来る。
「やっと見つけた。見失ったら怜香ちゃんに怒られるから、気を付けなきゃいけないんすよ」
何処から声が聞こえてくる。
僕は声が聞こえたであろう方向を見る。
そこには左耳にピアスをした、フレンドリーそうな、チャラそうな雰囲気の人物が立っていた。
不審者はその人物に近づき、剣をふる。
謎の人物はその剣を意図も容易く避けながら、スマホをいじっている。
「部長、目的の人物と接触しました。近くに襲われていたと見られる、内の生徒が1名います」
と、剣を避けながら話している。
僕は目を見開きその動きをみていた。
謎の人物に一度も剣に当たるどころか衣服も髪のさきも切れていない。
電話を続けながら剣を避ける避ける。
「うっとうしいすね」
謎の人物は不審者の足に自分の足を引っかけ転ばせる。
不審者は転びかけたが持っていた剣を杖がわりにして耐える。
僕はそんな不思議な光景をみながら唾を飲み込んだ。
不審者は目を開き剣の速度をどんどん増して謎の人物に斬りかかるが当たらない。
謎の人物は踊るように避ける。
その後、後ろに大きく飛び、地面に落ちている小石を拾っていた。
謎の人物はその石を不審者に投げる。
綺麗な軌道を描いた小石は不審者に当たると思ったが寸でのところで剣で防がれる。
不審者は懐から2本ナイフを取り出した。
まだ、持ってたのか……
そのナイフを謎の人物へ投げていく。
が、2本とも簡単に避けられていた。
僕は見逃さなかった。
後ろの電柱にナイフが刺さったことを。
切れ味良すぎか、
僕は少し後ろに下がる。
謎の人物は、電柱に刺さったナイフに自然と近づき僕に会釈をしてからそれを抜く。
余裕あるなぁ
そのナイフを軽く構える。
不審者は、怒りの形相をしている。
怒るならナイフ投げるなよ
僕は予想でそんな事を考える。
不審者は、謎の人物に斬りかかる。
が、謎の人物は持っている短いナイフで受け流す。
チッ!!
謎の人物は舌打ちをしていた。
不審者は更に剣の速度を増すが、謎の人物は涼しい顔でナイフでかわす。
そんな中であることが起きる。
パキンッ
不審者の剣が折れた。
折れた剣先は縮みナイフの先となり転がっていた。
そうだあの剣、元はナイフだったなぁ
その剣が折れた時に不審者は持ち手を謎の人物へ投げ逃げていった。
謎の人物はそれを放置した。
そして、スマホでもう一度電話をかけていた。
「部長、目的の人物には逃げられました。えっ、わかりました戻ります」
謎の人物はそんな事を言って帰って行った。
最後にこちらを見てきて目があったが……
僕は少しの間恐怖で動けなかった。
もしかしたらこの日が分かれ道だったのかもしれない……