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第59話 旅の目的

「オレ達のことか?」


突如、ギルド支部長ミラッサに声を掛けられ、憮然と答えるディール。

ミラッサは額に青筋を立てて大声で言う。


「そうだよ!! ったく、とんでもない殺気をぶちまけやがって……ご法度だぞ? ギルド内でのいざこざは!」


ディールとユウネに近づくミラッサ。

短くツンツンとした灰色の髪に、切れ長の瞳。

ほっそりとした長身ながら、節々に見える筋肉。

英雄と呼ばれる“S”ランクハンターであった。


「オレ達は、ただここに寄っただけで絡まれたんだが?」

「ああ、見ていたから知っているよ! ちょっとこっちにおいで!」


そう言い、ディールとユウネを奥の部屋へ“来い”と指示するミラッサ。

はぁ、とため息をついて、ディールは続く。

ディールと腕を組むユウネも怪訝顔だ。




「二人とも、ハンター証見せて。」


支部長室。

そこでミラッサは高圧的にディールとユウネに言う。


「ったく。何もしてないって言うのにな。」


ディールは文句を言いながら、ユウネも少しムカッとしながら銀色に輝くハンター証を出した。

それを見て、目を丸くするミラッサ。


「Bランク!? あんた等が!?」

「何だよ、文句あるのか?」


ミラッサは首を横に振る。


「いや、お前らの力量なら最高位のAで遜色ないだろ。というか、貴族の勲章があればSランクを今すぐ授与しても可笑しくないレベルだぞ? 何者だ、お前ら…。」


震えながら正直な感想を述べるミラッサ。

自分はハンター界の“英雄”と呼ばれる、自他ともに認める実力者だ。

だが、目の前の若い二人は、自分を遥かに超える存在である。


ギルドに訪れてから感じる、異常なほどの強者の気配。

身に纏う、底知れぬ装備。

そして先ほどギルド内で発せられた殺気。


恐らく成人してまだ1年は経っていないだろう。

だが醸し出される空気は“超越者”と言っても過言ではない。


改めて思う。

“何者だ、この二人?”


そんなミラッサの脳裏など知ってか知らぬか、平然とディールが答える。


「何者と言われても、オレ達はただの旅人だ。このギルドに寄ったのも、素材の換金だけだ。それさえ済めば良いんだが。」

「素材の換金? ……そうか。現物を見せてもらえれば、この場で応じよう。」


少しホッとしたミラッサ。

そして興味が湧く。

この異常な実力を持っていそうな二人、高価そうな装備を纏う彼らが一体どんな素材を見せるのかを。


ディールは、背負っていたストレージバックから、金剛天鋼3枚と魔石をいくつか取り出す。

魔石は、かの“魔窟”で得た物だけでなく、回収可能の範囲でかき集めたワイバーンの魔石だった。


目を丸くする、ミラッサ。


「これ、金剛天鋼!? それにこの大きさの魔石……信じられない。」


素材を目の当たりにして驚愕するミラッサ。

想像以上の素材が目の前に並べられたのだから。


そして、思い出した。


「……半年くらい前、サスマン市のギルドで金剛天鋼を売ったのは、お前達か?」

「確かちょうどそのくらいだったな。たぶん、オレ達だ。」


サスマン市で若いハンターが持ち込んだ、伝説級の金属 “金剛天鋼”

加工できるのは極僅かの職人であるが、その美しさ、その強度さから貴族連中が大枚叩いて買ったと、騒ぎになった。

そんな希少金属を平然と差し出す目の前の若者。

間違いない。コイツ等だ。


「まだ手持ちにあるか? 良ければ全部買い取りたい。」

「……これで全部だが?」


あっさりと方便を言うディール。

だが、ミラッサは薄く笑う。


「こう見えても海千山千の手練れ共を相手してきたギルド支部長だぞ? お前の目を見ればわかる。何か事情があって全部出せないって面だな。正直に言ってみろ。取引は内密が原則。誰かに漏らす真似はしないぞ?」

「……全部で43枚ある。事情があって今、全部は出せないが、それで全てだ。」


息を飲むミラッサ。

希少な、このサイズの金剛天鋼が、一度のその量を確保できるかもしれない。


「……私の見立てなら、このサイズ1枚で金貨100枚が妥当だが、どうだ?」

「サスマン市でも、その値段だった。5枚で金貨500枚、即金で売ったよ。」


ミラッサは腕を組み、悩む。

そして告げる、その価値。


「もし、今この場でお前らの手持ちの43枚とこの魔石を全部売ってくれるなら、まとめて金貨5,000枚。つまり、白金貨50枚分で買い取るが、どうだ?」


それは、このギルドに蓄えられた全財産に匹敵する。

だが、それだけ確保出来れば元はきちんと取れる。

現在、連合軍と帝国軍の血みどろの戦争中。

より良い素材は、それだけ需要があるのだ。


一方のディールは、悩む。

確かに、一々こうして数枚を換金し、騒ぎになるのは御免だ。

チラリとユウネの顔を見る。


目を点にし、テーブル上の金剛天鋼をただ見つめる。

明らかに、ビビッている。


ため息を一つつくディール。


「ミラッサ支部長、少し席を外してもらえないか? 5分でいい。」

「わかった。」


ミラッサは頷くと、部屋から出た。

即座にユウネは慌てながらディールに声を掛ける。


「ど、どうするの、ディール!?」

「売ろう。」


あっさり言うディール。

目を白黒させるユウネ。


「前も言ったが、これが手に入ったのはたまたまだ。聞けば師匠の差し金。そしてこれをどう扱おうとも、それは弟子のオレ達に任せる、と言ってくれている。」


修行中、ガンテツから“ホムラを封印していた部屋の刺客は、儂が用意した”と驚愕の事実を聞かされた。


ミノタウロスの進化種。

危険度Sに該当する【エビルブル】という魔物。


ミノタウロスの倍はある体躯に、強靭な肉体と瞬発力を宿す二足歩行系魔物の最強種。

特筆すべきは、その躰の硬さ。

屈強な魔剣ですら傷一つ負わせられないその硬い躰を持ち、まるで弾丸のように襲い掛かってくる、魔窟の悪魔。


そのエビルブルに、ガンテツが拵えた金剛天鋼の鎧兜と大剣大盾を握らせた最悪の化け物。

【エビルブル・ジェネラル】こそが、ホムラ封印の番人であったのだ。


ただの“資格者”なら、ホムラを抜いても太刀打ちできない。

身体能力に長け、ホムラを手にしても恥ずかしくない剣技に優れる者。

同時に、強大な敵に恐れず立ち向かう勇気と、一瞬一瞬が命取りとなる状況を打破する優れた判断力。


これら全てを兼ねそろえた上、さらに“危機を乗り越える何たるか”を持つ者。

そこまでの者でなければ、ホムラ解放の旅はおろか、出会う龍神にあっさり殺されたのであろう。


ありとあらゆる最悪な状況を乗り越え、魔窟を抜け、【碧海竜スイテン】と【金剛龍ガンテツ】の二柱に出会い、その二柱の試練を耐え抜いた者。


それが、“資格者”ディール、だ。


この事実を聞かされ、“師匠ガンテツの物なら、返すが”と提案したが、ガンテツ曰く『それはすでにお主の物。どうこうしようと、儂が及ぶ物ではない』とお墨付きを得たのだ。


「修行前もそうだったけど、アーカイブリングの中に収める物って、食べ物か金しかなかったからな。」

「確かに。」


ディールの言葉に頷くユウネ。

そのユウネの手をソッと握ってディールは続ける。


「それに、このカボス町を超えた先は、いよいよ連合軍本部フォーミッドの内部になる。あの中は恐らくハンターよりも連合軍の立場が強いだろう。換金できるとしても、ハンターというだけで足元を見られる可能性も無くはない。なら、破格値段を提示してくれたここで、換金しない手は無いと思う。」


ディールに握られる手と、ディールの目を交互に見て、ポーッと頬を赤らめるユウネ。

そして、コクリ、と頷く。


「じゃあ、今全部、出す?」

「ああ。頼む。」


ユウネはアーカイブリングに魔力を通し、残り43枚の金剛天鋼を全て出した。

床に積み重なる、金の板のような金剛天鋼の塊、それが43枚。

圧巻である。


「さて……。ミラッサ支部長。もういいぞ?」


ディールが少し大きめの声で言うと、ミラッサが改めて支部長室に入ってきた。

そして、目を丸くした。


「ほ、本当にこれだけ持っていたのか、お前たちは。」


床に積み重なる金剛天鋼を前に、硬直するミラッサ。

まさに宝の山だからだ。


「正真正銘、これで全部だ。どうだ?」


ミラッサは、丁寧に一枚一枚を見比べる。


「間違いない。この魔力……全て本物の金剛天鋼だ。」


感嘆してミラッサが呟く。

以前のディールとユウネは、黄金と金剛天鋼の見分けが付かなった。

だが、修行を経た後。

黄金と金剛天鋼の決定的な違いが分かるようになった。


それは単純な話。

師匠である【金剛龍ガンテツ】の魔力が練られているかどうか、であった。


魔法伝導力が世界一と呼ばれる金剛天鋼。

その周囲、内部、纏わりつく魔力やオーラは、ガンテツのものだ。

ただ、常人には、その“魔力”が本当に“土の龍神様”であるかどうかは、知るはずが無い。


『金剛天鋼は、“土の龍神様”しか生み出せない。』


その言葉はただの言い伝えでも無く、事実であったのだ。

最も、ガンテツしか生み出せない鉱石や金属は、それだけでない。


その最たる物。

最高傑作が、ディールとユウネが身に纏う物であったのだ。



「約束通り、全て買い取ろう。金貨5,000枚。ギルド内にある金だと、白金貨25枚、大金貨100枚、金貨1,500枚になるが……良いか?」


本来、白金貨は保管用だ。

多くの取引が、大金貨と金貨で賄う。

最も、数多くのハンターは金貨1枚を得ることですら、容易でなかったりする。


「白金貨は使いにくいのだがな……」

「確かにな。だが、申し訳ないがこれ以上の大金貨と金貨のストックがここには無い。白金貨は一般的では無いが、フォーミッドやグレバディス教国内のギルドなら簡単に換金できる。それでダメなら、4~5日待ってもらえれば全て大金貨と金貨に返ることも出来るが、そのストレージバックに全て入るのか? 無理だろ?」


白金貨は、金貨100枚という超大量・超重量を解決するための最高値硬貨であるのだ。

ストレージバックやストレージボックスに代表される異空間収納アイテムも、収納できる容量が決まっている。

その中に大量の金貨を放り込むと、すぐに容量限界を向かえてしまう。


そのために開発されたのが、白金貨。

金貨100枚のその硬貨は、1枚あれば田舎の町村なら豪邸が建つ価値がある。



頭を悩ませるディール。

正直、金貨5,000枚でもユウネの右手薬指に光るアーカイブリングなら、余裕で入るのだ。

だが、準国宝級とも言われるそんなアーカイブリングを人前でほいほいと使う気は起きない。


ミラッサが提示した金額の分量なら、ギリギリ、ディールとユウネのストレージバックに入るのであった。


「分かった。それで構わない。」

「了解。今すぐ用意するよ。」


そう言い、ミラッサはパンパンと手を叩く。

支部長席のドアが開き、一礼するギルド職員。

その女が抱えるのは金属製のストレージボックス。


「さぁ、金貨5,000枚分だ。受け取れ。」


ミラッサの声と同時に、女がストレージボックスに魔力を通し、白金貨25枚、大金貨100枚、金貨1,500枚を取り出した。


目を丸くするディールとユウネ。

分かっていたが、いざ目の当たりにすると、自然と身体が振るえるのだ。


「これが、白金貨……。」


ユウネが1枚、白金貨を手に取る。

ディールもユウネも、生まれて初めて白金貨を見たのだ。


白金で出来た、直径10cmの大きな硬貨。

ズシリとした重さのある円の中心には、小さな魔石が埋め込まれている。

贋作防止の、所謂ロットナンバーが魔力で刻まれた、魔石だ。


「金貨は100枚1束になっている。それを15束。確認してくれ。」


ミラッサの言葉に、ユウネは白金貨を置いてディールと一緒に金貨を数える。

束になっているとは言え全部で1,500枚もあるのだ。容易な作業では無かった。



――――



「確かに受け取った。」


大金を数え終え、ディールとユウネはそれぞれのストレージバックに収めた。

その様子を見て、薄く笑うミラッサ。


「ちなみに金貨5,000枚は、余程の豪遊さえしなければ一生遊んで暮らせる金額だぞ? ハンターの目的は大体 “金” だ。その目的を達成したお前達は、まだハンターを続けるのかい?」


その言葉に、ディールは少し唸り答える。


「ハンターになったのは、やむを得ない事情からだ。特段“金”が目的という訳でもなかった。……もちろん、旅の路銀を稼ぐにはハンターが好都合だったというのもあるが。」

「つまりだ。遊んで暮らせる金が懐にあるが、旅は続けるということか。」


興味津々で尋ねるミラッサ。



ディールも、ユウネも、当初の目的はグレバディス教国だ。

ディールは【加護無し】という落ちこぼれの烙印が解消できるかもしれないから。

ユウネは【星の神子】、【神子】という最高位の加護を持つ者が訪れる『習わし』だから。


だが、二人は半年にも亘る修行を経た今、その目的が果たして“正しいのか?”という疑問が沸き起こっている。


ディールは、龍神達曰く“資格者”

男の【加護無し】だから、“資格者”。

だからこそ、魔窟の奥底に封じられていた火の魔剣こと【紅灼龍ホムラ】を抜くことができ、その強靭な力と魔力の庇護を受けられている。


と、考えていた。


だが、スイテンとガンテツの言動の節々から、“資格者”=“ホムラを抜いて扱える”=“特別な存在”とは限らないのでは? と疑問に思うようになった。

何故なら、【碧海龍スイテン】は、当初、自分ディールを試す過程で“殺しても構わない”といった感があった。

【金剛龍ガンテツ】も、【星の神子】たるユウネが一緒だったから、“資格者”としての器になるべく修行を付けてもらえたという感があった。


ディールが“資格者”でありホムラを抜いた者だから、という『特別扱い』は一切無かったと考える。

むしろ『代わりはいる』ようにも感じた。



『“資格者”でホムラは抜けたが、今、死んだら死んだで、そこまでの存在という事だ。』



それが、スイテンとガンテツに共通して見られた“認識”であると気付いたのだ。



ならば“資格者”とは一体、なんだ?

結局、最後までガンテツも語らなかった。


半年も一緒に居たにも関わらず、頑として『それは儂が語るべき事ではない』と言って教えてくれなかった。


“資格者”として、すでに50番台までと、70番台の大半の封印を解除した【紅灼龍ホムラ】を握る、ディール・スカイハート。

修行の果て、【加護無し】とは考えられないほどの強靭な戦闘力に加え、ホムラを十全に扱える力量を得ることが出来た。


ならばグレバディス教国へわざわざ赴き、【加護無し】を解消する必要は無いのではないか?

むしろ、このまま【紅灼龍ホムラ】の全ての封印を解除することが、己の使命なのではないか?


何故、龍神達はホムラを封じたのか。

何故、その“力”だけでなく“記憶”まで封じたのか。

何故、その理由や意味について、頑なに口を閉ざすのか。


何故、“資格者”にホムラを『抜かせた』のか。

“資格者”とは、一体何者なのか。


これらの謎を封印と共に解いていくのが、使命なのではないか。


ディールの目的は、グレバディス教国を遥かに越えたのだ。



ユウネも同様だった。

世界最高位加護の【神子】を持つ者は、グレバディス教国へ赴き、教皇の祝福を経た後に修行を行い、【神子】としての力を目覚めさせ、多くの民衆や信者を導く使命がある、と聞いた。

逆に、【神子】の膨大な力を意のままに操られなければ、暴走し、世界に危機が訪れるとも謂われる。

それを習得するための修行でもあるのだ。


その習わしに従い、グレバディス教国を目指した。

それも、生まれ故郷を救ってくれた勇者“ディール”が、たまたまグレバディス教国を目指しているということで、村長の提案からその旅に随行しているのだった。


だが、ディールは“資格者”で【紅灼龍ホムラ】を持った者だ。

その行く先々で、伝承でしか伝え聞いたことのない“龍神”と邂逅し、二番目に会った【金剛龍ガンテツ】の提案で半年間もの修行を経て、心も身体も、魔力も魔法操作も、各段に向上したのだ。


凶悪な最悪最強の魔法“極星魔法”も、無詠唱かつ極限にまでその力を制御して発動できるほどまでに成長したのだ。


ガンテツ曰く『世界でも最も危険な魔法』の“極星魔法”

その話しを聞いた夜は、眠れなかった。

自分に、そんな凶悪な力が眠っているという恐怖に、押しつぶされそうになった。


だが、修行の果て、それを制御しきれる自信と力量が付いた。


全ては、旅の道中で結ばれた、ディールの存在があったからだ。

すでにユウネの心は、ディールに全て捧げられている。


【神子】としての強大な魔力を宿し、備わった謎の属性“星”の大半の魔法を意のままに扱えるようになった今、果たしてグレバディス教国へ向かう理由があるのだろうか?


ユウネは考える。

『習わし』に従うのではなく、自分の力量を認めさせ、このままディールの旅に付いていこうと。

大好きな彼と結ばれた今、“離れる”などという選択肢は無い。


習わしがなんだ?

この愛を貫き、育む以上に大切な事なのか?


一応、ディールの持つ【紅灼龍ホムラ】の目的地の一つに、グレバディス教国が含まれる。

そこで教皇に会う必要があるとのこと。


なら、ついでに『祝福』とやらを受けさせてもらえば、それでユウネの目的も達成するのだ。

メインは、ホムラ。

【神子】への祝福など、オマケ。


すでに、ユウネの心は決まっている。

グレバディス教国は、通過点にしか過ぎないのだ。


ユウネの目的も、グレバディス教国を遥かに越えたのだ。



「そうだな、オレ達はまだ旅を続ける。見たい景色や知りたい事が沢山あるんだ。」


笑顔で答えるディール。

そのディールの横顔を、頬を赤らめて見つめるユウネ。

それに気付き、同じようにユウネを見つめ微笑むディール。


「ああ~、熱い熱い。わかったよ、バカップル。」


手を扇のようにパタパタさせて茶化すミラッサ。

真っ赤になる二人。


「色々疑ったり、聞いたりして悪かった。お前達の旅が素晴らしいものになることを、女神様に祈っておくよ。」


そう言ってミラッサは立ち上がった。


「もう行っていいぞ。貴重な素材の提供、感謝するよ。」

「ああ。こちらも良い取引に応じてくれて感謝しているよ、ミラッサ支部長。」


ディールとユウネはミラッサと握手をして、支部長室を出た。




「……どんな【加護】と鍛錬、修羅場を乗り越えれば、あんな風になるんだよ?」


ディールとユウネとの邂逅を終えたミラッサは、全身から汗を噴き出して呟く。


この世界で強者と言えば、

連合軍“十二将”

帝国軍大将団“十傑衆”

そして、グレバディス教国の4人の【神子】“四天王”


少し前なら、彼らだ。

3人の世界最強。

ハンター唯一の“SSS”である【天衣無縫】シエラ・マーキュリー

ソエリス帝国の最強の英雄【百式】ゼクト・オラトリオ

そして、正体が謎に包まれる連合軍最強戦士【戦場の死神】ディエザ


3ヶ月前の連合軍と帝国軍の大衝突の後、連合軍も帝国軍も幹部が入れ替えなど、混乱が生じた。

“霊峰の平原”は、未だ、両軍が数万という軍隊を待機させてにらみ合いをしている。

いつ、大衝突のような大規模戦闘が始まるか、時間の問題であった。


そうした混乱が続く中。

耳にする、あの噂。



世界最強の3人は、全員、行方不明という、噂。




「今の世界の情勢に、あんな奴らの台頭。どうなっていくか楽しみだな。」



混乱する世界。

あの仲睦まじい二人がどこを目指すのか、また訪れた時に話しを聞いてみたいと思うミラッサであった。

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