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第55話 金剛龍ガンテツ

今夜21時に閑話を掲載します。

「もう嫌!!!」


神殿森林の森へ降り、1時間。

ようやく復活したユウネが叫ぶ。


手持ちのポーションをちびちびと飲んで、何とか回復したのだ。

シュンとなる、ディールと『金眼鷲』


『だが娘よ。ここから歩いて“土の神殿”に向かうのは容易でないぞ?』

「でも、もう嫌なものは嫌なのです!」


涙目で訴えるユウネ。

恐怖を感じる高所での、ワイバーンの襲撃。

上下左右を急旋回する戦闘に加え、“詠唱展開”で急激に失った魔力の所為で、乗り物酔いならぬ“グリフォン酔い”を起こしたのだ。

あんな気持ち悪い思いをするのは勘弁してほしい。

何より、大好きなディールの前で粗相をしそうになった。

人として、女として、恋人として、有るまじき状況!


もう、空なんて飛びたくない!

そう訴えるユウネであった。


「ちなみに人間の足だと、どのくらいかかる?」

『うむ……。恐らく後3日程か? しかもこの辺りはギガントトロールの縄張りも近い。お主らなら容易に倒せるだろうが、あやつも狡猾な魔物だ。おちおち寝ることすらままならんぞ。それに奴等は……ニンゲンの雌を“苗床”にしようと見境なく襲ってくる。いくらお主らが強かろうと、危険だ。』


ディールの問いに答える『金眼鷲』

ぐぬぬぬ……と唸るユウネ。


「どうするユウネ。オレとしてはユウネに負担を掛けたくない。あと半刻、我慢できるか? 無理なら……」

「分かった、分かったわよ!! 乗ります、乗ればいいんでしょ!」


涙目で叫ぶユウネ。

頭を掻きながらユウネの隣に座るディール。


「もう少し休もう。それからでもいいよな、『金眼鷲』」

『ぬう……我としては早く主の元にお連れしたいのだが』

「だが、ユウネにも負担を掛けることになる。もうしばらく休んで、体力が戻ったところで行こう。あと、あまりスピードを出さないようにしてくれ。」


ディールはそう言い、ストレージバックから水の入った皮袋を二つ取り出した。

一つをユウネに手渡し、もう一つに口を付けた。


『承知した。善処しよう。』

「助かるよ。」


『金眼鷲』もその巨体を地面に預け、身体を休ませる。


「ありがとう、ディール。」


目を潤ませ、ディールに笑顔で礼を述べるユウネ。

顔を赤くして、頬を掻きながら「ああ、気にするな」と答えるディールであった。



――――



再び『金眼鷲』の背中に跨り大空を飛ぶディールとユウネ。

日は西へ傾き、空は茜色に染まる。


「なぁ! ワイバーン共は諦めたのかな!?」


ディールは大声で『金眼鷲』に尋ねる。


『いや。諦めたとは考えにくいな。しばらくは襲ってこないだろうが、次の襲撃は恐らく、広範囲に散る同胞達を集め、さらに対策を練って来るだろう。もしかするとお主らで言うところの“二つ名持ち”、『毒羽』が加わるかもしれん。』


それは、危険度A相当ワイバーンの“二つ名持ち”と思われている(・・・・・・)魔物。

新人ハンターであるディール達は知る由もないが、熟練ハンターや、生息地であるバルバトーズ公爵国内では非常に有名な“二つ名持ち”だ。


“最強”と呼ばれる3体の“二つ名持ち”がほぼ伝説上の魔物であるため、実質最強の強力凶悪な6体。


“六魔”


そのうちの一体である。


深い藍色のワイバーンとは異なる、斑な深緑の躰。

通常種とは異なる強力な毒爪と牙を持ち、毒も混ざった火のブレスを吐く。


実はワイバーンの進化種である“バハムート”と呼ばれる上位竜であるのだ。

だが、『毒羽』以外にその存在が確認されていないほぼ伝説上の魔物のため、ワイバーンの“二つ名持ち”と認識されている。

本来は、危険度Sに該当する極めて危険な魔物であるのだ。


「おいおい……そりゃヤバイな。」

『ふむ。だが案ずるな。この森に棲むワイバーンはかなり数を減らした。その状況であるから、次の襲撃まで相当の時間が掛かるだろう。それまでにお主らがガンテツ様の用事を終えれば、遭遇する前に森を抜けられるだろう。』

「あんたは? 大丈夫なのか?」


ディールのその言葉が意外だったのか、カッカッカ! と笑う『金眼鷲』


「ニンゲンが魔物の心配をするなどとはなぁ! 心配はいらぬよ。我は神殿付近の森の奥を住処にしている。恐れ多い“龍神”様のお膝元で、盛大に争う愚かな魔物など居らぬよ。特に知性の高い“竜種”はな。何せそこに御座すは龍の神様だ。」


今回は森の外、入り口付近まで降り立った『金眼鷲』であったため、ワイバーンが群れを成して襲撃してきたのだ。

そうでなければ、神殿近くに住む『金眼鷲』を襲う機会が無いのであった。


「そんなもんか……」


一応、納得するディールであった。



――――


『娘、着いたぞ。ここだ。』


『金眼鷲』はゆっくりと地上に降り、ずっとディールにしがみついて震えるユウネに言う。


「ここ? 良かった……。ありがとうございます、鷲さん。」


ディールと一緒に、『金眼鷲』の背中から降りるユウネが礼を述べる。

わずか30分ほどの飛翔であったが、空のトラウマか、生きた心地がしなかったユウネである。


「はー、もうコリゴリ。」

「何言っているんだユウネ。【金剛龍ガンテツ】の用事が済んだら、また背中に乗せてもらうんだぞ?」


安心して呟くユウネに、残酷が現実を伝えるディール。

ゾ~~、と顔を青くして震える。


『うむ。終わればガンテツ様から我に連絡が来る。再び会いまみえようぞ。』


そう言い、大空へ飛び立つ『金眼鷲』であった。

手を振って礼を述べるディール。


「助かったよ。またよろしくな! ……ユウネ、さん?」


隣で頭を抱え、プルプル震えるユウネ。

そして「もう嫌だーー!!!」と叫ぶのであった。




「しかし、“水の神殿”とはまた全然雰囲気が違うな」


改めて“土の神殿”を見る。

白い大理石で出来、煌びやかであった“水の神殿”

周囲は屋台に囲まれ、観光客やグレバディス教徒の巡礼で賑わっていた。


対して“土の神殿”

巨大な岩壁が乱雑に積まれ、苔や草、木や蔦で覆われていた。

ところどころボロボロに崩れ、辛うじて入り口が開いている状態であった。


煌びやかな“水の神殿”に対し、森の中に放置された遺跡のような“土の神殿”

辺りはすでに夕暮れ。

より一層、“土の神殿”の寂れ具合が際立つ。


「これが“土の龍神様”が居る、神殿、なの?」

「とりあえず、入ってみるか。」


ディールとユウネは松明を灯し、意を決して“土の神殿”へと足を進めた。


松明の灯りが無ければ真っ暗な“土の神殿”

通路もあちこちがボロボロに風化しており、歩きにくい。


「ホムラ、どうだ? 魔物の気配とかはあるか?」


―無いわね。全くの無人よ、この神殿―


呆れたように伝えるホムラ。

内部まで“水の神殿”とは大違いだ。


―“水の神殿”はあの性悪乳女の派手さが際立っていたからね。本当の神殿ってこういうもんじゃないの?―


厭味ったらしくホムラが言う。

「それもそうだなぁ」と呟く、ディールであった。



神殿内部に入り、真っ直ぐ進むこと5分。

“水の神殿”と同様、広々とした空間に出た。

そこは壁の隙間から薄く灯りが漏れ、松明が無くても周囲が見渡せる明るさであった。


何より。


「ここも凄いな……」

「ええ……」


ディールとユウネは目を見開く。

目の前には、“水の神殿”と同じく黄色く輝く巨大な水晶が浮いていた。

その水晶の前の台座には、“龍穴”がある。


「これだな。準備はいいか、ユウネ、ホムラ。」

「うん、いつでも大丈夫!」

―早く行こう!!―


ディールの問いに、ユウネとホムラが答える。

ディールは頷き返し、左手でユウネの手を握り、右手に握るホムラを“龍穴”に刺した。


「“炎刃”」


迸るホムラの炎。

次の瞬間、ディールとユウネ、そしてホムラは【金剛龍ガンテツ】の間へと瞬間移動した。



――――



「着いた、か?」


そこはスイテンの住処と同様、天井の見えない空が薄く灯りを放ち、周囲は巨大な岩壁に覆われていた。

だが、距離感が全く掴めない。

岩壁は相当遠くからそびえ立つように見えるが、近くにも見える。

スイテンの住処同様、異質な空間であった。


「さて、何が出るやら。」


ディールはホムラを構える。

スイテンの時は、ここで水のゴーレムが現れたのだ。

警戒感を強めるディールであるが…。


何も起こらない。

何も出てこない。


「……?」


周囲を見渡すが、変化が無い。

苛立ちながらホムラが叫ぶ。


―ちょっとガンテツ! 居るんでしょー!! さっさと出てきなさい!―


ホムラの声が響く。

すると…。


「やっと来たのかい。待ちくたびれたぞ、『紅』よ。」


野太い、男の声。

ディール達の目の前に、黒い大きな箱が突如現れた。


「こ、これは!?」


ホムラを抜いた、魔窟のあの部屋にあった、黄金装備を纏うミノタウロスが収まっていた、箱。

それと同じであった。


黒い箱は、『バシャ』と音を立てて溶ける。

その中から、樽のような胴体に、温泉郷ヒルーガで着た浴衣のような服を纏った長い白鬚の老人が現れた。

顔には丸い眼鏡が掛けられており、その手にはボロボロの本が握られていた。


『ガンテツー!!』


ディールが握る赤い魔剣から、ホムラ(本体・上半身のみ・半透明)が現れて叫ぶ。

そのホムラの姿を見て、目を細めて笑顔になるガンテツ。


「ほっほっほっ。良く来たな可愛い『紅』よ。待っておったぞ。そちらの端整な若者が“資格者”で、そちらのお嬢さんが【星の神子】じゃな?」


にこやかなガンテツに、ディールとユウネも自己紹介を始める。


「そうだ。オレはディール。よろしくな【金剛龍ガンテツ】」

「私が【星の神子】の、ユウネです。」


二人の言葉を受けて、嬉しそうにうんうんと頷く。


「よく来てくださった。ディール殿とユウネ殿だな。何も無いところだが、ゆっくりと寛いでいくがよい。」

『そんな時間あるか! さっさと私の封印を解除して、ここから出せ!』


ガンテツの言葉に、ホムラが青筋を立てて叫ぶ。

だが、ガンテツはニコニコして首を振る。


「そう急かすな。『紅』も『碧』も、可憐なのにせっかちでいかん。淑女たるもの『白』のように落ち着き、大地に張る木の根のように、ゆるやかに、しなやかに、大らかにならねばならんぞ? 外はもう黄昏時だろう。今日はまずゆるりと身体を休め、話は明日、腰を据えてしよう。」


そう言い、ガンテツはくるりと後ろを向いて歩きだした。


『ちょっと待てぇー!!』

「待ってくれ、ガンテツ!」


ホムラとディールがガンテツを呼び止める。


「何かな?」

「時間が無い訳じゃないが……ここに来る途中、ワイバーンの群れに襲われた。また『金眼鷲』が森の外まで送ってくれるというが、あまりゆっくりするとまた襲撃される可能性もある。早々に用件を済ませたい。」


そのディールの言葉に、ニコニコ笑うガンテツ。


「ふむふむ。知っておったよ。ワイバーン共が鷲の可愛いグリフォン殿を襲ったこと、お主らが奴等を退けたこともな。だから何だ?」

「いや、だから…。」

「また切り伏せれば良い。『紅』も、それを握るディール殿も、強くあれ。」


そう言い、また歩き出すガンテツ。


「オレ達は先を急いでいるわけではないが、無用な争いや危険は避けたい!」


空中戦となるとまたユウネが心配だ。

何とかホムラの封印を解除し、神殿森林を脱したい考えのディールであった。


「ふうむ。ディール殿、お主は弱いのぉ。」


突然の物言い。


『な、なんですって!?』

「ガンテツさん!」


ホムラとユウネが非難するような声をあげる。


「見ておったと言ったろ? ワイバーン共に襲われたこと。『紅』を握りながらも、あんな脆弱な鳥の群れにああも雑な戦いをするなど。その様子では、いくら『紅』の封印を解いたところで、早々にお主が死ぬだけだろう。」

「な、なんだと!?」


ディールも大声をあげる。

ワイバーンが、脆弱な鳥!?

雑な戦い!?


確かに、慣れない空中ではあったが、それでも難なくとはいかずともワイバーンを退けた。

それを指して“弱い”“早々に死ぬ”などと言われる筋合いは無い。


『マジでむかつくジジィだな!』

「失礼です! ガンテツさん!」


ホムラもユウネも大声をあげる。

また首をふるふると横に振るガンテツ。


「ならば、お主らの実力を示してみよ。」


ガンテツは指をパチンと鳴らす。

すると、ガンテツの横から石壁がせり出し、そこからガンテツの二回りほど大きな、身体を金色に輝かせる岩のゴーレムが現れた。

スイテンの水のゴーレムと比べると、だいぶ小さい。


「ああ、見てろ! 行くぞホムラ、ユウネ!」

―ええ!―

「任せて! “星盾”!」


ディールの周囲に“星盾”が舞う。


「“熱纏”!!」


ボォッと力強い赤い光を纏うホウラの剣刃。


「一気に決めてやる!“熱錬”!」


ディールの身体も赤いオーラに包まれる。

『シュッ!』という音と共に、消えるように岩のゴーレムに肉薄するディール。


ゴーレムは動かない。

余裕で切り裂けるだろう!


だが、


『ガキィィィィ…ン』


響く硬質音。

“熱纏”と“熱錬”で極限まで底上げしたディールとホムラの剣が、その胴体を切り裂けず、肩で剣先が弾かれるのであった。


「バ、バカな!?」

「はぁ、想像以上に、弱いのぉ。」


呆れるように呟くガンテツ。

岩のゴーレムは、剣を弾かれ無防備になったディールの胴体目掛け、その巨大な拳で殴りかかった。


『バキン!』

『ドゴォ!』


その拳は容易に“星盾”を破り、ディールの腹に強烈な拳を食らわせた。

そのまま吹き飛ばされ、地面に激突するディール。


「いやあ!! ディール!!」


口から血を吐き出し、悶えるディール。

即座に“星の息吹”を掛けるユウネだが、


そのユウネの背後に一瞬で岩のゴーレムが現れ、首元に手刃を突き出し、止めた。


「ひっ!?」


凍るユウネ。

目を見開いて驚愕するディール。


「今ので、ユウネ殿の首は胴と離れた。そして、悲しむ間もなく即座にディール殿の命を奪っただろう。もう一度言おうディール殿。お主は、弱い!」


一喝するガンテツ。

同時にその姿を消す、岩のゴーレム。


すでに傷は回復したが、項垂れるディール。

“死”を感じ、呆然とした表情で座り込むユウネ。


「このゴーレムは、儂が生み出した鉱物を混ぜ合わせ造り上げた最高傑作“岩ゴロー”殿だ。コレに容易に勝てぬようでは、外には出せないぞ?」


『ディール……、ユウネ…』


剣から姿を現すホムラも、呆然と呟く。


「くそっ」


ディールは歯を食いしばる。

簡単に切り裂けると信じていた。

だが、全力を以ても傷一つ付けられなかった。


ユウネの“星盾”もあっさり突き破られ、致命傷を受けた。


何より。

最愛のユウネを危険に晒してしまった。



かつて味わったことのない、自分自身への怒りに全身を震わせるディールであった。



そのディールを見て、にこやかにガンテツは伝える。


「強くなりたいか? ディール殿。」


自分は弱い。

それも、この世界で落ちこぼれの烙印【加護無し】だ。

“資格者”と呼ばれ、火の龍神ホムラを抜いた。

その封印を解く度に強くなる、自分とホムラ。


錯覚していた。

自分は、特別な人間なのだと。

【加護】が無くても、戦える。

ユウネを守れる、と。


だが現実は違った。


“上には上がいる”

かつて、兄ゴードンの言っていた言葉だ。


そうだ。

自分は、弱い。


“上には上がいる”だと?

そうじゃない。

オレは、弱いんだ。


強靭な【加護】を持つ者や、凶悪な魔物が現れたら、あっさりと殺されるだろう。

自分の死。

即ち、最愛のユウネを守れない事に直結する。


激しい怒りと、悔しさ。

ディールは拳を握り、地面を殴る。

その拳から、血が滴る。


愛するユウネを守る力が、欲しい!


「強く、なりたい!!!!」


それは咆哮。

ディールの魂の叫び。


その声に、涙を流すユウネ。

その想い、悔しさ。

ユウネも同じだった。


あっさりと“星盾”を破られ、最愛のディールがまた傷付いた。

もう傷付かないで欲しい。

痛い思いをしないで欲しい。


危険に、晒したくない。


それなのに、ディールはまた血を吐き、倒れた。

無様に、自分も殺されかけた。


あのまま殺されたら、誰がディールの傷を癒す?

誰が、ディールを守る?


ユウネも、想いは一緒だ。


「私も、強くなりたい!!!」



叫ぶ二人の若者を、嬉しそうに眺めるガンテツ。


「よろしい。ならば今日は食事にして、ゆるりと休みなさい。明日から、この最古の龍神【金剛龍ガンテツ】が全身全霊を懸けて、お主たちを強くしよう。」


「「はいっ!!」」


立ち上がり、頭を下げるディールとユウネ。

その目には、迷いが無い。


「『紅』…ホムラよ。お主の封印解除はそれからじゃ。龍神、人間は“深淵”とも呼ぶそうじゃが、お主を抜いただけでは“資格者”とは呼べん。【星の神子】も同様。共に歩もうならば、まずはお主に見合った力を付けるのが先だ。分かったかな?」


ガンテツの言葉に、顔を伏せるホムラ。


『私も、強くなりたい。』


その目には涙。

そう、自分が岩のゴーレムを切り裂ければ、それで終わったのだ。

なのに、大好きなディールと、本人には絶対言えないが“大好きなユウネ”が危険な目に遭ったのだ。


「お主も強くなれる。というか、そもそもお主は“強すぎる”のだ。それは封印を解いて行けばおのずと分かることだがな。我ら龍神の頂点【紅灼龍ホムラ】よ。」


その言葉に『え……』と驚愕して顔を上げるホムラ。


「さぁ、今日は休みなさい。お主らの部屋を用意しよう。食材はあるかな? ここは龍神の巣。人間の食える物など無いからな。料理は出来るかな、ユウネ殿?」

「はい、得意です!」


その言葉に嬉しそうに頷くガンテツ。


「それは良かった。良ければ儂も時折同伴させてほしい。人間の作る食事など、ここ500年は口にしておらぬからな。ガッハッハ!」


豪快に笑い、ガンテツは再び歩き出す。

お互い見つめ合い、頷くディールとユウネ。


“愛する人のために、強くなる”


ディールとユウネは、決意を胸に秘めガンテツの元で修行に励むのであった。





『私もユウネの食事、食べたいんだけど! ガンテツ、どうにかできない!?』

「無理じゃな。そもそも『紫』の封印だろうが。あやつに会うか、己で何とかするしかないのぉ。それにしても、ユウネ殿の食事は旨いな! 今まで食した物の中で一番旨いぞ!」


豪快に笑い、ユウネの食事を楽しむガンテツ。

そんなガンテツを唇を噛みしめて睨みまくるホムラであった。

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