4話 初陣
集会所にある地下へと続く道を進むと、森に出た。集会所とは、さっきまでいた大きな建物のことだ。
森には木から木へと伸びる糸がいくつもあり、その糸には札のようなものがたくさん吊るされている。これは、モンスターの侵入を防ぐための結界なのだが、強力なモンスターであればこの結界は壊せるらしい。
そのため、昨日戦った怪物のようなやつは、ここに来る前に倒さなければならないとのこと。
森には小さなモンスターがたくさん生息しているが、ある程度は温厚な性格である。種類によって攻撃的だったり、乱暴だったりして、街に被害をもたらすので事前に討伐しているのだ。
「それにしても、現場まで遠くないですか?」
約30分も森を歩き続け、不覚にも疲れてきている。これから敵と戦うというのに、だらしないものだ。
「静かにして、伏せてください」
ミルは急に立ち止まり、背負っている大剣に手をかける。言われて気がついたが、奥に場違いなモンスターがいる。
胴体は2メートルくらいあるのに対して、羽が異様に大きな鳥。比率は1(胴体):3(羽)というところか。くちばしは、もともと白であるはずが、赤い液体が付着して、危なっかしいオーラを放つ。
岩の上に足を置いて、薄く、ところどころ穴の空いた羽を木に巻いている。光り輝く目が周囲を見渡していた。こちらには気づいていないようだ。
「コラトリムは、素早さと攻撃力が高いだけでなく、再生能力もある厄介な敵です。まず、私が不意を突くので、あなたは私に続いて火属性魔法を使用してください。そうすれば、コラトリムの首も柔らかくなるので」
「わかった」
「では......」
コラトリムがこちらとは別の方向を見ている隙に、ミルが走り出し、コラトリムの背後を取ることに成功した。そして、持っていた大剣で羽と胴体を分断する。
「ごがぁ‼︎」
コラトリムが怯んだその瞬間に俺は、業火の牢獄を使ってコラトリムの逃走経路を塞いだ。
コラトリムを立体的に囲む炎は赤く燃え盛り、コラトリムの体力をじわじわと削る。その間にも、コラトリムの羽は少しずつ再構築されていた。
ミルは大剣に電気を纏わせて、コラトリムの首に向かって一振りする。
「ごぎゃぁぁぁぁ!」
死を察したのだろうか。生きている羽を上手く使って体をミルに向けた。自然とくちばしもミルの方向に伸びる。ミルは空中にいるため、くちばしを避けることは出来ない。なのに、ミルはくちばしに剣を振ることはせず、首の一点を狙っている。
俺はとっさにコラトリムの首の根元辺りめがけてジャンプし、くちばしを掴んで無理矢理上へ向けさせた。チート級のステータスのおかげで、筋力負けしなかった。しかし、コラトリムに直接触れてしまったので、業火の牢獄の炎が俺の体にもまとわりつく。
ミルはそのままコラトリムの首を掻っ切った。俺は力の無くなった首を持ったまま地面へ落下する。落下途中、下に向けて弱い風魔法を使ったので、衝撃は最小限に抑えた。
首が完全に切れたことを確認すると、俺は魔法の使用を止めるが、全身火傷したらしくヒリヒリして痛い。
「どうして余計なことをしたんですか?」
ミルが近づいてきて、手を差し伸べながら訊いた。
「そりゃあ、あのまま、ミルがくちばしに刺さるのを見たくなかったから」
「そうですか......。なんとなく、彼女があなたを選んだ理由がわかった気がします」
「何の話だ?」
「あ、いいえ。忘れてください」
俺は何のことかさっぱりわからなかった。返り血で真っ赤になったミルは、俺を背中に担いで集会所に戻った。
ミルの背中は見てるだけでも、守ってやりたいと思わせるような小ささなのに、重そうな大剣を振り回し、その大剣と俺を同時に担いで平然と30分歩くのだ。
「てか、俺とミルの位置逆じゃね?」
「だから、それはあなたが余計なことをしたせいですよ?」
「そうだよな。俺って本当に馬鹿だな」
「そうです。あなたは自分を犠牲にして他人を守るような馬鹿です」
その言葉には、感謝の気持ちが含まれていたのは、馬鹿な俺でもわかった。




