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悪役令嬢は、彼に一途な恋をする  作者: しろとくろの
1/3

好きです、琢磨様

二部構成です!

しばしの間、お付き合い頂けると嬉しいです。


キャラ名

北城百合亜→きたしろ ゆりあ

堂上琢磨→どうじょう たくま

 私は10才の時に湖で溺れたことがある。

 湖の中はとても冷たくて怖かった。もがいてもどんどん沈んでいく身体に、このまま死ぬんだと思った。もう駄目なんだと思った。


 薄れゆく景色の中で金色に光る何かが見えた気がした。


「ごほっ……!! ううっ……」


 苦しい! 水を吐き出した私は思いきり息を吸い込む。

 その様子を心配そうに覗き込む少年は「大丈夫?」と背中をさすってくれた。

 ひとしきり咳き込んだ私は落ち着くと、助けてくれた彼にお礼を言おうと顔を上げた。


 あれ? 何処かでこのシーン見たような……


 そう思った瞬間、頭の中に『私』の記憶が入ってきた。生々しいほど強烈で強い感情と一緒に。目まぐるしい情報量にめまいがする。


 それは前世の記憶だった。


 前世の『私』は、不運な事故で死んだ。確か、修学旅行中に山で足を滑らせて転落したんだっけ?

 今世は湖。前世は山か。落ちすぎだなー。と記憶に思いを馳せる。


 どうやらここの世界は、かつての『私』がとてつもなく好きで、気に入って読んだ小説の世界のようだった。

 その話の中には、ヒロインとヒーローの関係に難癖をつける、いわゆる当て馬キャラがいた。


 そのキャラの名前は北城百合亜。黒髪に黒眼のわがまま娘。

 10才の時に湖から落ちた彼女は、目の前に居る色素の薄い茶色の髪に碧眼、超絶イケメンである彼に助けてもらう。

 この出会いをきっかけに両家で私達の婚約が決まり、晴れて婚約者同士になるのだ。

 高校2年生の進級時に、彼から婚約を破棄されるまでは……。


 彼は高校の入学時に、ヒロインと恋に落ちる。二人の仲を嫉妬した百合亜は、仲を引き裂こうと画策するのだ。

 百合亜の妨害を乗り越え、二人の絆は固くなる、といったストーリーだったと思う。


 この湖のシーンはヒロインに百合亜と婚約した経緯を、彼が話すところにあった挿絵。暴言を吐き、仲を引き裂こうとする私の立ち位置は、ヒロインを虐め抜く『悪役令嬢』ってやつで。


 ってことは! 目の前にいるのは、もしかしなくとも夢にまで見た彼じゃない?

 確か、お、お名前は……堂上琢磨様。


 あ、ちょっと待てよ。私まだお礼言ってないじゃない。


 急に前世の『私』を思い出して呆けてしまった私を、彼はまだ心配そうに見ている。間近でみる彼の顔は、挿絵なんて目じゃないほど可愛らしかった。


「助けて頂きありがとうございます」


 身体を起こして辿々しくお礼を言う私に、彼は満面の笑みを浮かべた。


「全然たいしたことしてないよ。無事で良かった」


 その笑顔に煙が出そうになるくらい頬が熱くなる。


 何これ! 超、眼福!!

 可愛すぎて悶絶しそう……!!


 そうして、静かに悶絶していた私は、探しに来ていた使用人達に慌てて屋敷に運ばれた。湖に落ちたからか、前世を思い出したからか、私は熱を出して倒れてしまったのだ。


 その後、私は何日も寝込んでしまったらしい。

 比較的体調が良くなった後、お父様から彼との婚約を聞かされた私はとても喜んだ。

 これから私は琢磨様と主人公の仲を邪魔して引き裂いて、その恋仲を深めるお手伝いができるわけだ!


 早速私は努力を重ねた。

 小説にでるライバルキャラだからか、私の容姿は整っていた。艶やかな黒髪は、さらさらのストレートで全く癖がない。寝癖だってつかないから、朝の支度だって楽ちんだ!

 シナリオ補正最高!


 ただ、湖に落ちてからは、百合亜に『私』の記憶が混ざってしまい、わがままを言わなくなった。それをお父様はとても寂しがっていた。

 お父様、ごめんなさい。今はお父様にかまってる暇はないんですの。

 そこまで直接的な表現はしなかったけど、そういう意味合いの言葉を告げる私に、しょんぼりと背中を丸めたお父様はちょっと可哀相だった。


 なんにせよだ。

 私は来たるべき日に備えて、勉強を頑張って頑張って、頑張り続けた。

 前世で得意じゃなかった勉強は、今世ではそこそこできたので、中学を卒業するまでに上位に食い込ませることができた。

 運動は前世も今世も苦手なので、そこには目を瞑ってほしい。


 着々と準備を進めながら、私は今日ついにこの日を迎えた。

 そう! 待ちに待った今日は高校の入学式。ヒロインと琢磨様が出会うシーンだ。

 ここでの私の活躍が、二人の仲を深めると言っても過言ではない。

 迎えに来てくれた琢磨様の車へ乗り、私は決意を新たにするのであった。

次の回で終わらせる予定です!

読んで頂きありがとうございます(*'▽'*)

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