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野郎達が寝る前に (モブとマリー) 時系列本編33.5話

 1日のスケジュールが終り、隊員達にとって数少ない日常の潤いである就寝までの自由時間。

 6人の男達が真剣な面持ちで1つのテーブルに集っている。

 コーヒーもどきの合成飲料と甘ったるい炭酸水が彼らの一服だ。

 男の一人が安物のタバコをふかしながら沈黙を撃ち破るために静かに口火を切る。


「――ぶっちゃけ、駐屯地の中で誰が一番可愛いと思う?」


 顎鬚を蓄えた仏頂面の男がテーブルに両肘を立てて寄りかかり表情を隠しながらも我先にと質問を返す。


「特務ラボのトランちゃんだな。作業服の下からでも解るあの健脚からお尻までのラインがいい」


 若い隊員がそれを鼻で笑っい、仏頂面の眉間に皺が寄る。


「おっさんになると好みが下に行くって言うのは本当らしいな」

「そう言う貴様はどうなんだ、若造」

「ずばり、アティさんだ。あのこざっぱりしつつ面倒見の良さと包容力(胸)、まさに理想の姉!」

「既婚者だぞ?」

「それもまた一興さ」

「ただの人妻好きじゃねえか、俺はやっぱりエメリさんを推すぜ!」


 今度は体格が一番大きい男が力む様に宣言する。


「あの清楚な雰囲気に小柄な外見とは裏腹のスタイルに加えてドッジ子要素もあると来た! あれぞ男の理想よ!」

「でもエメリさんも男が居るだろ、つい最近こっちに異動して来たコウタロウってやつ」

「ぬあああぁぁぁ言うてはならん事を!?」


 体格の大きい男が吼えるとタバコをふかしてた男がある事を思い出す。


「あ、そういや俺、休日の時にあの2人が腕組み合って歩いてるの見たわ。なんつーか、アレだな完全に世界が出来てたわ。もう見てる方が恥かしくなる」

「やめろ! やめてくれええええ!?」

「皆さん、進んで茨の道に行くとは物好きですねえ」

「そう言うお前はどうなんだよ、オタク」

「眼鏡付けてるからってその安直なあだ名は止めろって言ってるでしょ!?」


 軍人としては少々細身の眼鏡男はふん、と鼻息を吐くと調子を取り戻す。


「ずばり、ミレーユさんですね! エメリさんとはまた違った気品のある振る舞いや仕草が溜まりません! 私の見立てでは彼女のスタイルはズバ抜けていますよ!!」

「このムッツリめ、お前のそう言うところがあだ名の理由だよ。つーか、彼女上層区域の出だぞ? 俺達なんて、いいとこ犬扱いだろ」


 眼鏡男が自分の眼鏡をかけ直す。


「それはそれで……」

「ポジティブだなあ」

「ふー、見苦しいね君ら。そんなんだから駄目なんだよ」


 6人の中で一番顔立ちの整った男が他の5人へ嘲笑する。

 顔立ちの整った男が急に立ち上がりV系なポーズを取りながら高らかに宣言した。


「ずばり! ベルサちゃんだね!! 前髪の奥に隠された天使の素顔に可能性に満ちた体こそまさに――ぷげら!?」


 整った顔立ちが言い終わる前に4人の野郎共が一斉に蹴り飛ばした。


「何が可能性だ、このロリコンがあっ! 憲兵に突き出すぞ!」

「それより、ベルサちゃんの親衛隊連中に渡した方が早くないか?」

「そ、それだけは止めてくれ! この前、偶然撮れたベルサちゃんが訓練中に転んで照れてる画像データが見つかったら宗教裁判にかけられる!!」

「おもっくそ盗撮じゃねーか!!」


 4人がかりで犯罪者をリンチしているのを他所に、会話の切欠を作った男が悠長に安物のタバコをふかし続ける。


「お前ら、揃いも揃って物好きだよなあ。トランちゃんは最近、男が出来たって話だぞ。あと、ミレーユさんとベルサちゃんはベニーに気が有るとか無いとか」

「何だと!?」

「クソ、駄目だ! 眼鏡をしている以外にベニーに勝てる要素が無い!!」

「ふっ、詰まり俺ならワンチャン――ぎゃぴ」

「お前はそれ以前の問題だろ、盗撮犯!」

「てゆーか、そう言うアンタはどうなんですか!!」

「え、俺?」


 そーだ、そーだ、と5人が喚く中、男はタバコを灰皿に押し付けて指で頭をかく。


「……マリー、だな。女性経験は豊富だと自負しているが、彼女と話すのは中々に楽しい」


 え、っと5人が固まる中、食堂へとコロコロと白い球体が転がってくる。

 6人の男達が球体に注目すると、球体が静かな駆動音を立てて変形し、球体から八つ足が生えた。


『みなさん、明日は休日なので騒ぎたくなるのは解りますが、ご近所迷惑です。静かにしましょう』


 マリーが淡々とした口調で注意を促すと、男達は呆気に取られながら頷く。

 タバコを吸っていた男が咳払いをワザとらしく一つして、マリーへ向き合った。


「マリー、明日は暇かい? もし良かったら話相手になって欲しいんだが――」

『いいえ、コウタロウ達と一緒に外出許可が降りたのでお断りします』


 男の誘いをマリーが問答無用で切り捨てると、断られた男が固まる。

 他の5人が痛々しさからそれぞれ自らの顔に手をつく。


『ですので、明後日の自由時間なら可能です。お話はその時で宜しいでしょうか?』

「へ、あああ、それで構わないが……」

『それでは私も充電の為にスリープモードに入るので失礼します。お休みなさい』


 マリーが球状に戻り転がりながら立ち去っていく。

 タバコをふかしていた男が立ち去るマリーに手を振った。

 5人が男の背を見て思わず呟く。


 ――なるほど、これがマリーの魅力か。

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