8.嬉しいはずなのに
僕らは4人で2階への階段を上がってく。
僕の後ろに彼女がいて、さっきの照れた笑顔が可愛くて目が離せなかった。
すると、前の男子2人が
「めっちゃいい人だね、」
「うん、すごくいい人だった」
と彼女の話をしている。
僕も心の中でうんうん、と頷いた。
それから、彼女とは別方向だから、正門の所で別れた。外はもう真っ暗になっていた。こんな時間まで僕らに付き合ってくれて、申し訳ない気持ちと放課後のこんな時間まで一緒に入れた事の嬉しさの2つの感情が混ざって変な感じがする。
また、明日も一緒にしたいなー。
彼女は次の日、昼休みから学校に来たため、僕は放課後まで彼女の顔が見れなかった。
5時間目のチャイムがなり、家庭科室へと行くと、昨日彼女が持って帰ったものと、僕のデザインセットがあった。
「他は仕上げたけど、行書の「見」の字だけがまだ残ってるから放課後また来る」と言って劇の練習に行ったらしい。
僕はなんとなく、デザインセットを開けた。
「.....っ!」パレットも筆もいつものよりずっと綺麗になっていて一瞬誰のか分からなかった。そして、『ありがとう。』と綺麗な字で書かれたメモが入っていた。
僕はそのメモを筆箱の中にしまった。
宝物にしよう(笑)
6時間目、帰りの会、帰りのあいさつが終わり、待ちに待った放課後だ!
彼女は少し遅れてきた。
そして、荷物をおろしてすぐ僕らが書いた行書の「見」を見て爆笑した。彼女は一時の間ずっと込み上げてくる笑いをこらえていた。それぐらい僕らの書いた「見」は下手だった。「来て正解だった(笑)」と彼女は笑いながら言った。
彼女は習字を習っていたらしく、字が綺麗だった。「見」は彼女に任せて僕達が後ろで他の作業をしていた時、彼女が近づいてきて、「終わったよ」と言った。そして、僕らが今やっていた色鉛筆で絵を描く作業を変わってもらい、僕らは「見」を見に行く事にした。
「うわ、うまっ、比べ物にならねー」と次々に口を揃えた。
それから、生徒会とかでいなかった奴らに昨日の彼女の優しさを伝えた。
「あいつ、めっちゃ優しいじゃん」
「そうなんだよ、絵も字もうまいし、これ、絶対入賞するって」
皆がそう言っている、
なんでだろう?
嬉しいはずなのに、なんだか嬉しくない。
これが、嫉妬なのかな、?