02. 未知との遭遇
腰の高さまである鬱蒼と茂った草。
空は木で塞がれていて見ることができない。葉の間から見える小さな光が今は昼間だと教えてくれる。
「これどうなってんだ⁉︎」
「私に聞かないでよ! もうどうなってんの!」
前も後ろも木々があちこちに生えており奥に光などない。
恐らくこの森のど真ん中にいる。
「ヴォルクって奴は馬鹿なの⁉︎」
「まぁしょうがない。とにかく進まないことにはこの森からは出られないと思うし、さっさと出ようぜ」
「あー....虫除けスプレーがあればなぁ」
そう言いながらテントの中に静かに戻ろうとする茜を無理やり引っ張って連れて行く。
「無理無理! 私虫とか大の苦手なの!しかもこんな長い草があるんじゃ気持ち悪い虫もたくさんいるにきまってるじゃない!」
駄々をこねる茜、虫が嫌いなのは知ってはいたがここまでとは思わなかった。
「おんぶしてやるから。ほら、行くぞ」
唸りながらも観念したのかようやく俺の背中に乗る。
「変なことしたら殴るからね!」
「しないっつーの」
「ふーっ、それにしても深い森だなぁ。まだ出口が見えない」
「うぅ....早く抜けようよぉ」
いつもは強気の茜も今じゃ檻に入れられたライオンも同然だった。
というか女の子をおんぶしてるって考えたら変に意識が....。
「へ、変なところ触らないでよ‼︎」
「さささ、触ってねーし‼︎」
長い間この森にいても俺の危害が増えるだけだ、さっさとこの森から出てしまおう。
「....何か音がしない?」
「気のせいじゃないのか」
茜があちこちを見渡す。
「ほらあそこ! 草が揺れてる!」
「うぉ⁉︎ まじだ!」
ガサガサと揺れる草むら。
可愛らしい動物が出てくることを祈る。
その草むらから出てきた正体は
「きゃー‼︎ かわいーい‼︎」
二足歩行の犬、と言えばわかりやすいだろうか。
だがこんな動物今まで見たことがない。これ学会に見せたりしたら大喜びするんじゃないか。
「イヌモドキと名付けよう」
「誠! 下ろして! あのワンちゃんと遊びたいの!」
「ダメだ、寄り道してる暇はない」
「誠のケチーッ‼︎」
イヌモドキを無視して通ろうとすると目の前に回り込んでくる。
「どうしたイヌモドキ」
急にイヌモドキが牙をむき出しにし巨大化する。
まるで熊だ。筋肉は盛り上がりフーッ、フーッと息を立てている。
「ねぇ誠、これやばい奴じゃない?」
「見ればわかる! 逃げるぞ‼︎」
俺は走った。これ以上ないくらい走った。今ならオリンピックも余裕なくらい走った。つまり走りまくった。
「ねぇねぇ誠‼︎ まだあいつ追いかけてくる‼︎」
「走ってる奴の頭を掴むんじゃねぇぇぇぇぇぇ‼︎」
ダメだ食われる、俺の人生はここで終わるのか⁉︎
「死にたくねぇぇぇぇぇぇ‼︎」
「誠ストップストップ‼︎」
「え?」
茜に止められ後ろを見ると先ほどまで追いかけていた犬もどきが倒れていた。
その横には水色の髪をした少女が立っていた。
見たところ俺たちよりも年下だろうか。背も俺たちより低い。
「あなたたちこんなところで何をしているのですか? この森でのんびりしているとイヌモドキに食べられてしまいますよ」
名前あってたよ。
「き、君が倒したの?」
「えぇ、イヌモドキなんて私にかかればちょちょいのちょいです」
少女の右手には血で濡れた短剣が握られていた。
「ついてきてください。見たところこの辺のものではないようですし、私たちの村に案内します」
「よかったぁ、あとどれくらいおんぶしてなくちゃいけないのかと思ったよ」
「失礼ね! 私が重いっていうの‼︎」
「いやむしろ柔らかかった」
「最低‼︎」
後頭部を思い切り殴られた。