表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モザイク・ワールド  作者: マシンマン
3/6

第二話 襲撃おだやかに

 少女の待つ庭に降り立つと


「よし、じゃあ今度は次のブロック塀だ」


「わかった」


 そう言って少女は再び素早く庭を駆けるとブロック塀に飛び乗った。

 うむ、身体能力が半端ない。地上の人間はみんなこうなのだろうか。

 

 少女を追いかけようと思った瞬間、後ろで物音がした。

 振り返ると例のいかつい男がブロック塀の上に立っている。

 

 タイチは急いで少女の方へ向かおうとする。

 が、いかつい男はブロック塀を蹴るとこちらロケットのように向かって来た。

 四メートルほどあった距離はたった一度の跳躍でつめられた。そしてタイチの前にその男は立ちはだかった。

 

「おっさん、やけに身軽いっすね」

 

 そう言うとおっさんは一瞬だけ口角を上げる。

 タイチは、脳内チップのゼンを起動させる。一瞬頭を締め付けられるような圧迫感を感じたかと思うと、すっと脳内は澄んでいき、周りの動きが少しずつゆっくりになる。

 ゼンを起動させ身体能力は上げると、脳内は活性化され全ての動きはスローに見える。

 目の前にはいかつい男がいて、少女は一つ向こうのブロック塀の上でこちらの様子を見ている。早くこのおっさんを倒して逃げなければ。美少女と共に!

 

 そう思った瞬間、そいつが拳を握るのが見えた。そのまま下から降りあげるボディブローをぎりぎりでかわすと、その勢いのまま身体を回転させ肘打ちをかます。さらに追い討ちをかけようとした拳を握りしめた瞬間、すごい勢いで背中が引っ張られる。そのまま投げ飛ばされ、ブロック塀にたたきつけられていた。


 「ぐわ」


 そんな情けない声が漏れ、全身がしびれたような痛みが走り出す。 

 なんとかわずかに受身をとったが身体が言うことをきかない。

 いつの間に捕まれたんだ?肘打ちは効かなかったのか?そんな馬鹿な、ゼンを起動させているのにこんな一方的なんて今まで一度もなかった。


 まいったな、こいつ人間じゃないのかもしれん。アンドロイドか?

 地下都市のときに何度がアンドロイドとも模擬戦をしたことがあったが、ここまでの奴はいなかった。こんなことになるならもっと地上世界をまじめに調査しとくんだった。

 後悔先に立たずか、

 いや、それよりも現状を何とかしなければ。おっさんはゆっくり向かって来る。

 

 それにしても全く勝てる気がしない。しょうがない、何とか逃げ切ることだけを考えるとするか。

 とにかく目くらましをして。その隙に逃げるしかない。正直逃げ切れる自信もないが。

 タイチは地面から石を拾うと、アンダースロウでおっさんの目めがけて投げる。

 おっさんがそれを手でキャッチした瞬間今度は砂をおっさんに投げかける。おっさんが目を守るため腕を横にした瞬間、少女の待つブロック塀の方へと向かう。

 行ける。

 タイチはそう思った。

 おっさんのほうを見るとタイチに向かって突進してくる。

 これなら避けられると思った瞬間おっさんはさらに加速してタイチに体当たりをした。


「がっ」


 タイチの身体は再び吹き飛ばされると、今度は受身をとれないままブロック塀に叩きつけられる。再び全身に衝撃が走り、悲鳴を上げようとするが声は出ない。それどころか呼吸も上手く吸えない。ひゅひゅうと頼りない空気が漏れる。気絶しそうになるのを何とか耐える。地べたを這いずりながら、少しでも逃げようともがくが、おっさんはタイチの上に腰掛ける。


 おっさんの体重はとてつもなく重い。ただ乗られているだけで身体がみしみしと音を立てるようで、呼吸が少しずつ苦しくなる。まじおっさん重すぎる。


 少女の声が聞こえた気がする。

 気のせいかもしれない。

 少女は逃げ切れただろうか。

 このまま自分は死ぬのだろうか。

 それはいやだな。

 

 薄れる意識の中で少女の顔が……。


 そしてタイチはゼンを停止させると意識を失った。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ