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第5話
その日、恵美は亜子にはっきりと言った。
もう、これ以上メール文は書かないと。
亜子はおおいに不満そうだった。
たとえ亜子に嫌われても、これでおしまい。と恵美は思った。
そうしないと、本当に自分自身が壊れてしまいそうだった。
すべてが終わった。
さようなら・・私の恋人
アパートの一室で、雨が降り注いでいるのを恵美は見ていた。
今は苦しくて、そして悲しい。
でも、いつか希望を見出せる日がくるだろうか。
こんな自分にも。
雨の季節が来ていた。
その日も雨が降っていた。
午後6時に退社すると、傘をさしながら、恵美は地下鉄に向かって歩いていた。
すると、雄太が傘を手に、会社に向かって同じ歩道を歩いて来た。彼は営業からの帰りだった。
恵美の胸にせつない思慕がこみ上げてきた。
すれ違いざまに、彼は言った。
「帰るところ?」
「ええ、お先に失礼します」
「お疲れさま、さようなら」と彼が言った。
しばらく歩いて、彼は振り向いた。
「ちょっと、待って」と彼は言った。
彼女は振り向いた。
彼は彼女に近づいた。
「昨日、木田亜子さんに会ったよ」と彼は言った。