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第4話

地下鉄のポスターだった。



そのひとは美しく、悲しげな眼差しをしていた。



カミーユ・クローデル



地下鉄のポスターを見て、その名を恵美は初めて知った。



美術館でカミーユの展覧会が開催されるのだ。



ロダンを愛しながら、破滅した女性彫刻家。



恵美は彫刻なんてまったく興味がなかった。



ロダンも、名前ぐらいしか知らなかった。



でも、なぜか。カミーユの顔にひかれた。



行ってみたい。そして彼女の彫刻を見てみたい。



平日、休みをとって、恵美は美術展に行った。



そこで、彼女は知った。



カミーユ・クローデルの悲しい想いを、愛を



ロダンを愛しながら、捨てられ、狂ってしまった彼女。



熱い情念がその彫刻には表現されていた。



見終わったとき、恵美は、涙が頬を伝わっていた。



カミーユに彼女は、自分の気持ちを重ねた。



そして、その作品に魅せられた。



彫刻なんて知らなかった恵美が、カミーユの作品を理解することができたのだ。



それは、恵美が彼を、雄太を愛したからだ。



彼女はメールを書いた。



この感動を伝えたかった。彼に・・・



愛と苦しみが昇華され、美しい芸術作品を作り出す。



それが感動を与えるという事実。





その翌日だった。



恵美は朝、オフィスビルの回転ドアを開けて、出社しようとしたときだった。



誰かとぶつかった。思わず手からバックが落ち、中身が散乱した。



「ごめん」と彼が言った。



なんと、相手は雄太だった。



「急いでいたから、ごめん、ごめん」と彼は言うと、慌てて、バックから飛び出した物を拾い集めた。



「大丈夫よ」と彼女は言うと、かがんで自分の私物を拾い集めた。



彼が、拾った物を彼女に手渡すとき、言った。



「君、この頃元気がないね」



「気のせいじゃない。何もないもの」と彼女はこたえた。



「これから仕事にでるのね。吉田さん」と彼女は言った。



「ああ」



「気をつけて、いってらっしゃい」と彼女は言うと、足早にエレベーターへと向かった。



エレベーターに乗り込むと、彼女はその天井を見上げた。



涙がこぼれそうだったから。

































































































































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