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第3話
彼女は書いた。
初めて彼に会ったときのこと。
彼のワイシャツの白さが、笑顔がまぶしかった。
彼のさりげないやさしい言葉
彼の存在がいつしか心の支えになっていたこと
彼女の素直な心をメールに書きこんだ。
それは、せつなく美しい気持ちのあらわれだった。
密やかでいながら、一途な彼への想い。
「恵美、ありがとう」
亜子が興奮した様子で、オフィスの給湯室に入って来た。
そこで、恵美はひとりコーヒーをいれていた。
「どうしたの」と恵美が言った。
「彼から、私の携帯にメールが来て、また逢いたいって」
恵美は気持ちを抑えて言った。
「そう、良かったわね」
「雄太さんがね、君の感性って素敵だ。気がつかなかったよ。って書いてきた」
亜子は嬉しそうにふふと笑った。
「また、お願いね」
「えっ、まだこんなこと続けるの」と恵美が言った。
「そうよ。私、彼と結婚したいの」
恵美は返事をしなかった。
「恵美、もっと素敵なメール文考えてね」
亜子はそう言うと、給湯室に恵美を残して出て行った。
恵美は、ただそこにたたずんでいた。