幻想と覚醒。ホスピタル.マスターとプロメテウス.スマイル。
『ザクセン.ハイマーよ……あの娘を消去せよ。』
『血の爪団にとって最も脅威となる者。』
金の杯に注がれた燃える水を片手に持つ闇の支配者ホスピタル.マスターが
闇市の岸辺でオーラを発する聖女クレィデイアを指差した。
『川岸の恐怖王セベクを討ち取った勇者どもの召喚をこれ以上許してはならぬ。』
『幻想理想郷よりの覚醒者、紛い物の聖人、魔女クレィデイアを捕らえて幽閉するのだ。』
『全ては虚無の世界の中
ここ現実理想郷に葬り去るのだ。』
『この眼に見える世界だけが全てだと奴等には思わせねばらぬ……』
『血の爪団、消去集団を統べる名高き、そなたならできるであろう。』
『みごと、事をなし終えた暁には
この金の杯から燃える覚醒水、大天使の涙をそなたに与える。』
ザクセン.ハイマーはホスピタル.マスターの前に、かしずき手を胸に当てて答えた。
『マスター、お任せください。』
『必ずや、事を成してご覧にいれます。』
一団を連れて聖女クレィデイアを遠巻きに囲む血の爪団総統ザクセン.ハイマー。
ホスピタル.マスターは黒い馬に股がり闇市ボッタの門へと向かった。
子供たちが黒い馬で進むホスピタル.マスターの元へ駆け寄る。
『黒馬の貴公子様だぁ♪』
『キャンディ~キャンディ~♪』
その声に幼女ルチアも黒髪少女レンチの手を離して走り出した。
『あ!、ルチアどこ行くの?』
追い掛けようするレンチの前を遮るザクセン.ハイマー。
『港で私の、可愛い武装機甲ドローン五体を破壊してくれたそうだなぁ……』
『闇市ボッタの外で会ったらタップリと礼をさせてもらうぞ。』
レンチはザクセンハイマーの影に隠されて走り出したルチアの姿を見失った。
ザクセンハイマーに怒鳴るレンチ。
『邪魔だぁ!!』
『お前と話すことなど何もない!!』
闇市ボッタの門の前まで来た貴公子ホスピタル.マスター。
黒馬から降りて子供たちにキャンディを配った。
『さぁ……そこのエメラルドの瞳をしたお嬢ちゃん、こちらへ来なさい。』
幼女ルチアは笑顔を浮かべてキャンディをホスピタル.マスターから受け取った。
彼はルチアを両腕で抱き抱えて黒馬の上に乗せ頭を優しく撫でた。
『女神フレィヤ様、わたくしとともに参りましょう。』
その言葉にキョトンとした顔でキャンディを舐めている幼女ルチア。
『わぁ♪、いいなぁ~』
『ずるい、ずるい、この子だけ。』
ホスピタル.マスターはルチアと、ともに
黒馬に乗り闇市ボッタの門を潜った。
見送る子供たちに手を振り出で行く彼とルチアを見ていた車椅子の少年スマイル。
車椅子を引くウルフハウンドに合図を送り黒馬の後を追う。
『トリックスターにトリックは効かないぞ!!』
『ペッ!!』
口に含んだ幻想キャンディを吐き出す少年スマイル。
『僕の左目は全てを見透すプロメテウスだ!!』