商業コミュニティー.ボッタで交錯する敵味方。
理想郷の中央を流れる大河ザクセン。
その一角の入り江にある商業コミュニティー闇市ボッタ。
食糧や武器、そして生活必需品、更には諸々の資源を大量に積んだ船や荷車が行き交っている。
様々な地域から一攫千金を狙いイデアドリームたちが集まってくる主邑。
そこは転覆崩壊したイデア政府の要人やクーデターで街を制圧下に置いた血の爪団も出入りする唯一の非戦闘地域だった。
内乱の影響をほとんど受けていない、この闇市ボッタは周りとは隔絶された、いわば異世界だった。
その闇市ボッタの門を潜る鉄屑傭兵団の拠点もここにあった。
荷車に積まれた屑鉄、武装機甲ドローンを運ぶ青い眼の少年スパナーが額に汗をかき息を弾ませながら呟いた。
『ふうふう……目的地は、まだなのか?』
すると荷車の隣を通り過ぎるサラブレッドに乗った貴公子がルチアに眼を止めた。
彼は従者に何か言い付けてバックの中から一本のキャンデイを取り出した。
『これを、そこの可愛らしいお嬢ちゃんに……』
荷車の上で幼女ルチアを抱え黒髪少女レンチは軽く会釈をして貴公子からキャンデイを受け取りルチアに与えた。
『美味しいかい……』
頷き笑顔でレンチに答えるルチア。
そうこうしているうちに荷車は闇市ボッタの門を潜った。
荷車が屑鉄商人の店先前まで来た時、レンチがスパナーとハンマーに声を掛けた。
『目的地だ、止まってくれ!』
荷馬車から降りたレンチは何やら屑鉄商人と商談を始めたらしく押し問答している。
しばらくすると数人の男たちが荷車から屑鉄を下ろして店の倉庫へ運んで行った。
それから店の主人クーリーが代金の1000イデオン硬貨をレンチに手渡した。
『流石は、凄腕レンチさんだね!』
『これだけのアボイタカラ鋼は中々手に入らないから助かるよ!』
店の主人クーリーはニコニコ顔でサービスの大きなパンの束ととスープ缶をレンチに手渡した。
『これはほんのお礼だ、またいい仕事したら持って来ておくれ♪』
レンチは軽く手を上げて店の主人クーリーに応えた。
レンチはパンとスープをルチア、スパナー、ハンマーに分配した。
『さぁ、腹ごしらえだぁ。』
『たーんと食べて、元気つけな!』
【クエスト完了〓①ルチアの空腹を満たした!、②武装機甲ドローン五体殲滅!】
腰を下ろして食事をする鉄屑傭兵団に近付いて来る一人の男。
『こんなところで会えるとは思わなかったぞ……クラッシャーレンチ。』
その声に男の方を振り向くレンチ。
『お前はーーー!!』
身構えるレンチに男が肩を竦めて両手を広げた。
『レンチよ……落ち着け。』
『ここほ、非戦闘地域ボッタだ。』
『私も、今宵はここへ、腕利きの傭兵がいると聞いて探しに来ている。』
『お前とは、いずれ決着をつけねばならぬ時が来るであろう。』
『せいぜい、今の内に力を蓄えて置くことだな。』
『剣を交える時が楽しみだ……私を絶望させないようにしてくれたまえ……ハハハ』
立ち去る男の背中を睨むレンチ。
スパナーがレンチに訊ねた。
『誰なんだ?、あいつは……』
レンチの腕の中で震える幼女ルチアの頭を優しく撫でる 彼女。
『このイデアポリスを惨状に変えた張本人、血の爪団総統ザクセンハイマー!!』
『奴がいる限り、このイデアポリスに自由と平和は来ない!!』