幼女ルチアの救出のため魔女の館へ向かうスマイル少年と美女ソフィーナ。
幼女ルチアを黒馬の背に乗せて駒を進める貴公子ホスピタル.マスター。
彼の視線は夜空へ向けられていた。
魔女の館の上空に気球が上がり満月の月と重なる。
『フレィヤ様……今宵は、わたくしと一緒に、素敵な夕食を取りましょう。』
キョトンした顔で貴公子の顔を見る幼女ルチア。
気球はやがて煌々とした満月の光に吸い込まれるようにして姿を消した。
黒馬の貴公子の後を影のように忍んで追尾するウルフハウンドに引かれる車椅子の少年スマイル。
『あの子を、どうする気だ……早く救い出さなきゃ……』
黒馬の貴公子は格式のある館が並ぶ街の角を曲がり魔女の館へと向かった。
『あそこは……市長の住まいだ。』
物陰から、しばらく様子を伺うスマイルが少年。
すると魔女の館から機甲師団が現れ何やら黒馬の貴公子に話して入っていった。
後を追ってルチアを救いだそうとするスマイル少年の前を遮る一つの影。
『スマイル君……水くさいじゃないの。』
『何かあったら相談してて言ったわよね。』
暗がりを月の明かりが照し声の主の姿が現れ出た。
ツインテールのおしゃれな若き美しい乙女の姿。
思わずスマイル少年は声を掛けた。
『ソフィーナさん!』
『どうして俺が、ここにいることが分かったんだ?』
彼女はニコリと笑って指に嵌められた赤い宝石のリングをスマイル少年の顔の前に差し出して見せた。
『それは……俺がソフィーナさんに送った指輪……』
ソフィーナは赤い宝石の指輪を見ながらスマイル少年に呟いた。
『この宝石の名前をスマイル君は聞いたことがあるかしら?』
ソフィーナの質問に彼は首を傾げて横に振った。
『俺……ただ母親の形見だとしか聞いていないよ。』
ソフィーナは乗ってきた白い馬に股がり馬の踵を返して魔女の館とは反対側の再生大聖堂へと向けた。
『今、魔女の館へ行っても、あの幼い女の子を君一人で救い出すことはできないわ。』
ソフィーナは再生大聖堂へ向かうようスマイル少年に促した。
『あの女の子を救う手だては再生大聖堂にあるわよ。』
しばらく魔女の館を凝視していたスマイル少年はソフィーナの言葉にも一理あると思い彼女と再生大聖堂を目指した。
走り出すウルフハウンドが引く車椅子の横で白馬に乗るソフィーナがスマイル少年に優しく語りかけた。
『あの幼い女の子なら、きっと大丈夫よ。』
『あの子は、現実理想郷を救うために幻想理想郷から使わされた平和と愛の女神様だから……』




