女神フレィヤの昇天画図の回廊へ。①
黄金に輝く天の浮舟が高見を目指し昇って行く。
螺旋を描く半透明の天海道を滑るように進む。
やがて広く見通しのよい高天ヶ原へと出た浮舟。
浮舟は、まるで風を失った帆船のようにピタリと止まった。
さらに浮舟を囲むように大きな天画図が現れ出る。
耳の立った白く大きな犬を連れた気品のある紳士が浮舟に近付いて来る。
見たところ中世の西洋貴族風の装いをしている。
『私のアントワープ大画廊へようこそ。』
『この犬は死者を導く聖獣。』
『汝らが願う死者を黄泉の国より連れ戻す。』
『しかし、それは全ての試練を成し終えた勇者にのみ与えられるもの。』
『試練の門出を祝い私からの贐だと思ってほしい。』
眼鏡少年ラジエツターが聖典シュヴァル.ガイヤを開いた。
パラパラと光のページを捲り彼をを見た。
『能天使………』
『彼は現実理想郷に巣くう悪魔に抗う力を勇者に与える者』
『また失われた死者を甦らせ導く者でもある。』
鉄屑傭兵団長のレンチが中央の、ひときわ大きな一枚の画図に目を止めた。
そこには女神フレィヤが天魔使徒たちに支えられ天へ昇る様子が描かれていた。
傍らには女神フレィヤに冠を捧げる最高座の天魔使の姿があった。
『 あれは……現実理想郷の闇市でルチアにキャンディーをくれた黒馬の貴公子……同じ顔をしている。』
さらにスパナーが他の画図を指差して叫んだ。
『クレィデイアの両親が天妖騎士団に囲まれた画図だぁ!!』
画図の一枚から失楽園の大蛇が抜け出て来た。
『この大蛇は汝らの行く道を塞ぐ恐怖の化身ウロボノス。』
『勇者としての力を示せ!!』
『闇を打ち払う希少鐘の救済者たちよ!!』