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最終話


親父は全く使い物にならないということが

わかった。(正直親父と認めるのも

なぜか抵抗を覚えるほどだが)

とにかく今は奴への復讐をどうするかを

考えよう。

親父がダメならお袋だ。


ダメ親父と臑齧りの息子二人を

養っている我が家の主人であるお袋は

弁護士先生だ。


ほんとなんで離婚しないのかな。

まだ、愛があるのだろうか。

あんなう⚪︎こマンのどこがいいのだろう。



20時過ぎにお袋は帰宅した。


ある程度、落ち着いたところで

俺はお袋に例の件について

相談を持ち込んだ。



「それは依頼なのかしら。

でも、弁護士にそういった依頼をされても

困るわよ」


なんでも仕事に結びつけるのは

やめてほしい。これだから

キャリアウーマンは。


「仕事じゃなくて相談だよ。

嫌いな奴に復讐する方法ってないか?」

「弁護士としてあまりそういうことは

考えたくないし、思いついても教えたくは

ないのだけれど。息子の頼みだし、

少しくらい力になってあげましょうか」


さすがお袋。

普段仕事で忙しいため

結構俺に甘いところがある。


甘い蜜を吸うのが俺の仕事だ。

甘い汁もいくらでも吸う。


「その嫌いな奴に復讐するには自分自身を

高めることね。嫌いな奴より強い立場に

なればいいのよ。社会人で言うのなら

努力に努力を重ね、嫌いな上司の地位よりも

上に行き、その嫌いな元上司の無能さを

嘲笑い、社会的に貶めるのが最高ね」

「お袋。すでにカースト制度の

最上位にいる奴より上になるには

どうすればいいんだ?」

「神になればいいんじゃない?」


神か。たしかに

司祭も所詮は神に使えるもの。

カースト制度のトップを超えるには

神になればいいだけの話か。


アホか。



「神になるのは今の俺にはおこがましいよ。

お袋。もっとほかになにかないか?」

「あら。謙虚なのね。そうね、

もっと簡単な方法しては、味方を作ることね。

あなたが嫌いになった人なら他にも

嫌いと思う人たちもいるはず。

その人達を味方につけ、『あの人って

最低よね』などと会話をするの。

そうして輪を広げてあの人も、あの人も

嫌いらしいと噂をどんどん流していき、

悪い噂を広げていく。それにより

社会的にそいつの地位は底に落ちる。

なんならその悪い噂はもっとえらい

人達に広まり、評価もガタ落ち。信頼も

失う」


なんとえげつない。

俺の母親。人を貶めることに

たけているのではないだろうか。


「噂っていうのはね。

事実なんて関係ないのよ。

所詮残るのは結果。噂が広がったことで

その人の居場所は無くなる。なにより

味方をたくさん作っていることで

犯人がばれないのよ。複数いるからね。

万が一バレそうになった場合にも

味方を裏切ればいいだけのこと。

生き残るのは自分だけでいいのよ」


本当にえげつない人だ。

逞しい。かっこいい。

俺もこんな風に他人を蹴落としたいものだ。


だが、この作戦。

俺にはできないことだ。

なぜなら、


「お袋。そのアイディア素晴らしいんだけどさ。俺、クラスに味方になれそうな人

いないからたぶん無理だわ」

「あんたクラスに友達いないの?」

「え? あぁ。まぁね。みんなレベルが低いからさ。烏合の衆と友達になることにメリットなんてないでしょ?」

「そうね。群れるばかりの愚民どもに

無理に合わせる必要はないと思うわ。

けれど、気をつけなさい。烏合の衆でも

数いれば脅威になる。一人一人は

ゴミカスでもそれが複数あれば

掃除機も詰まるかもしれないわよ」

「わかった。掃除機を買うなら

吸引力の変わらないただ一つの

掃除機にするわ」

「それが懸命ね」


あれ。

なんの話をしていたのだろう。

なぜだか掃除機の話になっている。


ふと、電話が鳴った。

お袋のスマホだ。


「ごめんなさい。仕事が入ったわ。

また今回も厄介な仕事ね」

「今回はどんな救いようもない奴を

弁護するんだ?」

「守秘義務で詳しくは言えないけれど、

市内のありとあらゆる自転車の

前輪と後輪を入れ替えたという犯人の

弁護よ」


思っていた10倍くらいクソみたいな

犯人だった。

それをして一体なにを得ることが

できたのだろうか。


「がんばって弁護するわよ。

後輪を外すのはブレーキがついているため

極めて困難ということをアピールするわ。

それじゃ、行ってくるわね」

「いってらっしゃい」


これが働く女性の姿だ。


そう。仕事を選ばないのが

働くということだ。





結局、嫌いな奴に復讐することは

一人の力では難しいということがわかった。

今の俺では奴に復讐を試みた瞬間に

親父と同じ道を辿ることになるだろう。


さすがに

う⚪︎こマンとは呼ばれはしないだろうが。


今の俺では力不足だと悟った。

だが、おれの憎しみ、妬み、僻み、

苛立ち、そういった感情は今も

この心でどす黒く渦巻いている。

これを簡単に沈めることはできないだろう。


今はそれでいい。

この悔しさを未来永劫忘れないために。


復讐はすぐにすればよいわけではない。

ゆっくりと想いを膨れさせ

一気に爆発させる。


今は身を引こう。比嘉よ。

だが、忘れるな。俺はお前が嫌いだ。

大嫌いだ。それは死んでほしいくらいに

嫌いだ。


この憎しみのせいで

もし俺に親友がいてそいつを

殺したらたぶん万華鏡が開眼する。

それくらいにお前が妬ましい。

恨めしい。憎い。憎い。憎い。

憎々しい。


よかったな。比嘉。

俺に親友がいなくて。

万華鏡は開眼されないぞ。


だれだ。

親友どころか友達もいないだろとか

言った奴。あんまり俺を怒らせると、



今度はお前も嫌いな奴になるぞ?



さぁ。

それでは改めて考えるとしよう。

嫌いな奴らに報復を、復讐する方法を。




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