第2話
考えた結果。
いくつかのアイディアが浮かんだ。
まず、前提として
人に嫌がらせするのに
効果的なテクニックがいくつかある。
一つは相手を不安な気持ちにすることだ。
精神的に不安定な状態に追い込む。
ベストなのは奴とそれなりに
仲の良い関係になり
(もちろん、表面上だけだが)
奴に何を聞かれても
曖昧に答える。
はっきりとせず、どっちつかずの
返答ばかり行う。
そうすればまず、間違いなく
不安になるだろう。
その上で具体的な作戦をたてるとするなら
奴の彼女、つまり花沢のことを
はじめはベタ褒めし、そんな花沢と
付き合ってるお前すげぇと
もてはやす。誉め殺しにする。
その後、突然、花沢のことを
全否定し、最低な奴だ、人間性を疑うなど
とにかく花沢を悪く言う。
突然の俺の変容に奴は混乱するだろう。
そして疑うはずだ。花沢を。
そうして勝手に奴らで自爆してしまえ。
しかし、考えてみたが、この作戦には
一つどうしても俺にはできない部分がある。
それは、
奴と表面上だけでも友達になるということだ。
大嫌いな奴と表面上だけでも友達に
なるなんて気持ち悪くて吐き気がする。
なんなら今想像しただけで軽く
吐いてしまったほどだ。
あーうん。冗談だけど。
第一、表面上ではない本当の友達すらも
いない俺にとって表面上の友達を作ること
自体困難だ。
ということでこの作戦は実行不可能。
他にも
ミスを大げさに言い、嘲笑うというのも
効果的だ。
どんな人でも嘲笑われると傷つく。
メンタルは
そう簡単には鍛えられない。
いくら奴の体が鍛えられているとしても
自尊心が傷つけられたら
自己嫌悪を陥るはずだ。
俺がすべきなのは
奴のミスを見つけたら
重箱の隅をつつくように意地悪く奴を貶す。
そんなことすら失敗するのかと。
一度失敗した時が最大のチャンスだ。
どうせ次も失敗する。
役に立たない。
愚鈍。使えない。いない方がマシ。
それを大げさに誇張し、
奴の自尊心をボロボロに傷つける。
そうすることで奴は自信をなくし、
絶望し、自分自身を責めるようになるだろう。
そうすればサッカー部部長という
肩書きもただの飾りとなり
お飾り部長。使えない醜い
愚鈍な存在と周囲も嘲笑うだろう。
そんな奴に優しく声をかけ、
お前は使えない奴じゃないと
それを証明するためになにか命令し
成功した際に奴を褒める。
奴はそれで俺を絶望の淵から救ってくれた
神と認識し俺の奴隷になる。
というのも面白そうだ。
完璧だ。この作戦には穴がない。
いや待て。
俺はクラスでは空気のような存在。
しかも空気の中でも重要性の低い
アルゴンのような存在だ。
空気の中でも1%にも満たない存在。
なんだよ、アルゴンって。
タンスにゴンゴンのほうがまだ
使い道あるぞ。
あっれー。おかしいな。
役立たずなのは俺じゃね?
なんだか自己嫌悪に陥りそうなので
この作戦も却下だな。
では、
どうすれば奴を絶望という
奈落の底につき落とせるだろう。
やはり、暴力に訴えるか?
いや、非効率だ。
そもそも、運動部の奴と
文化部ですらない
帰宅部の俺では相性が悪すぎる。
奴はサッカー部。身体を鍛えまくっている。
俺の学校のサッカー部はかなり強い。
全国レベルなのだ。
対して俺はどれだけ早く帰宅できるか
それのみを極めているだけの
ただの帰宅部だ。
脚力には自信はあるが。
徒歩に限り。
ちなみに、
帰宅部は全校生徒の中で俺一人なので
実質、帰宅部部長は俺だ。
いくら帰宅部部長でも、
全国レベルのサッカー部部長の奴に
暴力を行使したところで
返り討ちにされるのが目に見えている。
それならば、
不意打ちするのはどうだろう。
不意打ちで攻撃すればいくら奴でも
ガード不可。
奴の油断を誘い、唐突になんの前触れもなく
油断した奴の顔面に向けて
鈍器で殴りつけるような重い一撃を
喰らわせる。
いや、やめておこう。
俺、推薦狙ってるし。
奴を殴ったことで俺の評価が落ちるのは
割に合わない。
俺、先生からの評価は決して
低くないのだ。
それに拳痛めるのいやだし。
痛いの嫌いだし。
いよいよ、アイディアがなくなった。
どうすれば嫌いな奴に復讐できるだろう。
俺の頭ではこの辺が限界だ。
一人の力で解決できないのなら
人を頼る。これは常識だ。
自分以外の人間がいるのは
利用するためのみに存在すると言っても
過言ではない。よし、
相談しよう。そうしよう。
もちろん、友達はいないので、
相談相手は家族である。