第1話
誰にだって1人くらい嫌いな奴がいる。
いるはずなのだ。いなければおかしいと
言っても過言ではない。俺たちは
人間なのだから。
どんなに優しくて、思いやりがあって、
気遣いができて、友達がたくさんいて、
協調性があって、我慢強くとも、
人間には一人くらい
嫌いな奴がいるはずなのだ。
そうでなければ人間ではない。
人間は聖人君子ではない。
ましてや神でもない。
感情を持っている。それこそ、
我々が人間である証だ。
感情を持っているからこそ
好き嫌いは生まれる。
もちろん、動物たちも感情はあるだろう。
しかし、人間ほど分かりやすく
それを表出することはできているだろうか。
これはあくまで俺個人の意見だが、
答えは否である。
動物の専門家などからすれば
動物の感情などもわかるのかもしれないが
一般人の俺からすれば
犬や、猫の気持ちはわからない。
そんな人にはいぬのきもち
もしくは、ねこのきもちを
買えば万事問題解決‼︎
人間は動物と比べると感情が分かりやすい。
人間も動物だろ。とかそういうのは
今、いらないから。屁理屈言う奴は
嫌いだから。たとえそれが事実でも。
聞く気はありましぇ〜ん。
人間の感情を知るには、
会話はもちろん、
声のトーン、表情、目線、姿勢、
スキンシップ、自己開示、
リアクションなど、
人間のコミュニケーション方法は
無限にあり、
言語的なものだけでなく
非言語的なコミュニケーションなど様々だ。
人間は他者との関わりの中で生きている。
人それぞれあるだろうが、
自己の感情の表出は動物よりは
わかりやすいだろう。
もちろん、わかりにくい奴はいるが。
話が逸れてしまったな。
人間には感情がある。
それは完璧なものではない。
完璧でないからこそ、
人間の心は弱いからこそ、
認めたくない奴がいれば認めない。
苦手な奴とは関わりたくない。
嫌いな奴は、
奈落の底に突き落としたいとさえ思う。
人も世界も平等ではないのだから
誰かを羨んだり、妬んだり、僻んだり、
恨んだり、憎んだり、そういった
真っ黒な感情が、悪意と憎悪に塗れた
穢らわしい感情が渦巻くのだ。
それらは決して抑えることなどできない。
その感情の根源は無意識化にあるのだから。
制御など出来はしない。
どうしようもないだろう。
無意識のうちに薄汚れた感情を
持ってしまうのだから。
止める手立てなど存在しない。
つまり、人を嫌うことは自然の摂理なのだ。
誰かを嫌う、憎むなどという感情を
持つことは人として正しい、
正常なことなのだ。
身体は風呂にでも入れば
汚れを落とすことができる。
ボディーソープとシャンプーがあれば
綺麗なれる。
なんなら石鹸さえあれば
キレイキレイだ。
もしかしたらハイターでも
きれいなれるだろうか。
きっとツルッツルだ。
だが、
心は洗い流すことなどできない。
一度穢れたこころは一生そのままだ。
穢れは蓄積されていく。
それが感情なのだ。
心変わりなどそう簡単にしてたまるものか。
人間は自分自身を、信念を持って生きている。
それを簡単に変えてしまうのは
自分自身への裏切りであり、冒涜だ。
変わること、前に進むことを
成長と呼ぶ人もいる。それが善であると。
果たして本当にそうだろうか。
変化することは今までの自分を裏切る
ことではないのか。自己の否定に
つながるのではないか。
俺はそうまでして己を変えたいとは
思わない。
だって、今の自分が大好きだから。
自分LOVE。アイシテル。
なんならアイシテルのサインを
自分自身に向けて出してもいいくらい。
結局のところ、
成長することは大人になることと
同義だろう。自分を変えることではない。
大人になることで世間を、人を、心を知る。
身体的成長は別として、
心の成長というのは知るということだ。
理解するということだ。
子供の頃は清く、
美しい心でも成長するとともに
薄汚れた汚らわしいどす黒い
醜い心となっていく。
それこそが成長であり、大人になると
いうことだ。
大人なんてそんなものだ。
早く大人になりたいという
子供達は自ら進んで穢れたいと
言っているようなものだ。
なんて哀れで愚かなのだろう。
君たちはそのままでいいと言うのに。
しかし、永遠に子供のままでいい。
というのも不可能だ。
この世界はネバーランドではない。
俺たちはピーターパンなんかじゃない。
大人になるのは必然。
止めることはできない。
では、なにが正解なのか。
どうすればいいのか。
簡単だ。身を任せればいい。
大人になることに。感情を、心を
知ることに、理解することに。
そして人を嫌うことに。
汚い感情を持つことは罪だろうか?
断じて否である。
もちろん、その感情に身を任せて
犯罪を起こすことは罪だ。
だが、人を嫌うこと自体は罪ではない。
人間として当たり前の成長であり、
必然なのだ。我々には心があるのだから。
ここまではすべて前置きだ。
詰まる所、何を言いたいかというと。
俺には心から嫌いな奴がいる。
ほんと、死んで欲しいと思うほどに
嫌いな奴がいる。
奴め。まじでタンスの角に
小指ぶつけて死なないかな。
足の小指な。わかってると思うけど。
あれ、クソ痛いよね。
痛みに弱い俺じゃ一発KOだね。
なぜ、ここまで奴を嫌いになったかというと、
ちゃんとした理由がある。
俺だって理由もなしに理不尽に
人を嫌いにはなりはしない。
では、一体なぜ奴を嫌いになったか、
説明しよう。
そんなに長い話ではないから
心配するな。お前の学校の
校長よりはたぶん話短いよ?
俺には好きな人がいた。
クラスメイトの花沢さんだ。
いーそーのくん‼︎
の花沢さんではないからな。
そこ大事だぞ。
俺は花沢さんが好きだった。
花沢さんはいつもクラスで1人の俺に
優しく声をかけてくれた。
「次、移動教室だよ? 聞いてなかった?」
とか、
「もしかして連絡網まわってなかったの?
授業変更になったんだよ。私の教科書
貸してあげる。私は隣のクラスの友達から
借りるから気にしないで‼︎」
とか、
ひとつ注意して聞いてほしいが
今の花沢さんの会話を聞いて
俺がいじめられているのでは?
と思ったらそれは杞憂だ。
俺がいじめられるなどあり得ない。
認めなければいじめではないし、
事実、実害はない。ほとんどない。
とにかく花沢さんは俺に優しかった。
もう、好きになって当たり前だ。
もしかしたら俺のこと好きなんじゃないか
とさえ思った。
彼女に問うたことがある。
好きなタイプはどんな男性かという問いだ。
彼女は、
「人は見た目じゃなくて中身だと思うんだ。
イケメンがいいとか言う人いっぱいいるけど
そうじゃなくて、内面をもっとみることが
大切だと私は思うの」
そう言っていた。
まるで天使。いや、まるでなど
つける必要もない。天使だ。
俺にとって彼女は天使だった。
俺は意を決して告白した。
人生初めての告白だった。
だが、
世の中は残酷だ。
人は裏切る。
そんなもの初めから分かっていたのに。
俺はまだ、この世界に、他人に
期待していたのだ。なんと愚かしい。
情けないことだ。
しかし、あの時の俺はまだ
淡い期待を抱いていたのだ。
そんな期待は見事に砕け散った。
「好きです。付き合ってください」
「は? え、ちょ、無理。ごめんなさい」
即答だった。
考えるそぶりすらなかった。
なんにもなかった。
「そ、そっか。一応さ、
理由聞いてもいいかな?
やっぱりイケメンがいいとか?」
「は?あー、そうね。
顔ももちろん無理だけど、
なにより性格が無理」
世界は残酷だ。
理不尽だ。
俺のこと全部無理なんじゃねぇか。
全否定かよ。
これも辛い思い出だが、まだ
これだけなら割り切れた。
世界は俺に優しくないって。
だが、事件はこれで終わりじゃない。
本当に実感したね。
事件は会議室で起きてるんじゃないって。
事件というのは現場で起きているのだ。
彼女は言った。
顔だけではなく、内面が大切だと。
中身が大切だと言った。
だが、彼女は、
サッカー部のイケメン部長と
付き合いやがった。
サッカー部部長の比嘉は学校随一の
イケメンともてはやされている。
彼女はそんなイケメンと
付き合いやがった。
なんだよ。
結局顔じゃねぇか。
これをきっかけに
俺は嫌いな奴ができた。
そう。
サッカー部部長比嘉だ。
奴も俺と同じクラスメイトである。
正直、花沢にも復讐して
やりたいが止めておこう。
いや、別に怖いとかそんなこと
思ってないよ。
花沢はクラスの中心核で
花沢を敵に回したら
クラスの女子全員敵に回して
恐ろしいことになるとか
考えてないよ。
相手は女の子だしね。
俺は男だから女の子には優しくするのさ。
俺の敵は比嘉だ。
俺の女(になる予定だった)花沢を
寝取りやがって。ゆるさねぇ。
それよりもなぜ花沢は
気づかなかったのだろうか。
俺も十分イケメンだと言うことを。
ハリウッドスターでいうなら
ジョニーデップにそっくりだよ?
身長とか。
俺の身長は178センチとジョニーデップと
同じなのだ。
ハリウッドスターにそっくりな俺と
ただのイケメンの比嘉なら
普通ジョニーデップと付き合うよな。
花沢は無能だ。そんな頭ゆるゆる
股もゆるゆるな女となんか
付き合うのはこっちから願い下げだ。
とにかく、
奴にどうやって復讐をするか。
俺が今悩んでいることはそれだ。
さて。
どんな地獄を見せてやろうか。
絶望というなの奈落に突き落としてやる。
読んでいただけたらこれほど嬉しいことは
ありません。
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幸いです。