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サバゲーテイル・トラジック  作者: 一条由吏
ソロプレイ編
4/13

第3話 アップデートの仕組み

お読み頂きましてありがとうございます。


 しばらく彼女を抱き上げたまま、歩き続けた。流石に山道を人1人抱き上げたままで登るのは、大変神経を使う。あまり振動を与えて彼女が悲鳴を挙げれば、折角の隠蔽状態が解除されてしまうからだ。


 しかも、大きく揺れると彼女のしがみつく力が強まって、彼女の身体のあちこちが俺の身体に接触する。思わず、限界ギリギリまで揺れる方法で移動してしまった。


 俺は、いったい何をやっているんだ。と反省しつつも、幸せな時間が過ぎていった。


「あっ!あれ!」


 彼女が隠蔽が解除されない程度の声で、俺の耳元で囁く。後方になにかがあるようだ。


 俺が後ろを振り向くと、そこには、想像を絶する光景が展開していた。遥か遠くだったが、後方からモザイクの塊が、大地を削り、樹木を倒し、建物を破壊し、ゆっくりと進んでくるのだ。飲み込まれたあとには、何も無い空間が漂っていた。


 おそらく、あれは妖精国をアップデートするために全ての情報を初期化するゼロ書きするツールが動いているのだろう。あれに巻き込まれたら、即座にデスペナルティを喰らうか、アカウント削除もありえるかもしれない。VR安全装置だろうから大丈夫だと思うが最悪リアルの身体の意識混濁などの副作用が発生する可能性も否定できない。NPCの彼女にとっては、消滅を意味するのかもしれない。


 つまり、時間制限があるということだ。あのモザイクの塊に接触しないうちに妖精国を出なければならないのだろう。おそらく、別サーバーで構築済みのデータを上書きする時間を残したアップデート完了時刻の前には、あのモザイクが妖精国全土を覆いつくすことだろう。


 このゲームのアップデート時間は1時間という脅威的なスピードを誇るがVR世界では、12時間に当たる。すでにアップデートが開始されてから4時間が経過していることから、ゼロ書き半分、上書き半分とすると少なくとも4時間以内、安全を考えると2時間以内には、妖精国を出る必要があるようだ。


「まだ、大丈夫だ!」


 俺は、恐怖に震える彼女を元気付け、始まりの街に向けてヒタ走った。


 妖精国を端から端まで歩いたわけではないが、妖精国の拡張アップデート直後に始まりの街から妖精国の中央付近まで歩いた経験を加味すると、もう既に妖精国の中央を過ぎたあたりだったが、歩いていたのでは間に合わない計算だ。


 走る物音で運営プレイヤーに気付かれる可能性があったが、そこは割り切って進むことにしたのだ。


 しばらく走ると気配察知スキルで、前方にNPCの集団と運営プレイヤーの集団が固まっているところを察知した。しかも、周囲には、モンスターが蔓延っており、どの方向に進んでもモンスターに遭遇してしまうのが確実だった。これだけのモンスター相手に戦闘を行う時間は残されていない。


 仕方なく、NPCと運営プレイヤーの集団に対して、隠蔽スキルを発揮して、近くを通りすぎることにした。もし発見されても、逃げ切れるように盗賊スキルも取得してMAXレベルにしてある。さらに戦闘になっても、直ぐに切り抜けられるように暗殺スキルも取得してMAXレベルに上げた。


 本来、スキルポイントは、非常にレベルが上げにくい生産系の器用さとかを取るつもりだったのが台無しである。いったいこれから、俺はどんな方向へスキル設計をしていけば、いいのだろうか?


 まあ、今はこの危機を乗り越えるのが先決だ。この危機を乗り越えてから考えればいいさと考え直し、邪念を振り払った。


・・・・・・・


「いやー!おとうさん!おかあさん!」


 またもや、目の前の光景に釘付けだ。今日得た衝撃は、このゲームで今までに得た衝撃の数倍にも登るだろう。いったい、どうやって心の整理をしていけばいいんだ。


 そこは、想定通り妖精国の王都があった。隠蔽で慎重に進んでいった先にその光景は、あった。


 目の前では、アイドルの親であるNPC夫婦が運営プレイヤーに襲われていたのである。


 その場に居た2人の運営プレイヤーは、その楽しそうだった顔を豹変させ、真面目な顔付きになり、アイコンタクトを取り合ったと思うとそのNPC夫婦をあっという間に光の粒子に変えてしまった。


 やはり、なんらかの手段でNPCを光の粒子にできるようだ。


 その光景にアイドルの彼女は、呆然と立ち尽くすだけだ。ヤバイ、2人の運営プレイヤーがこちらに近づいてくる。先ほどの彼女の悲鳴で、隠蔽が解除されてしまったようだ。


 さあどうする。とりあえず、弓使いである俺は、今持っている弓にスキルポイントをつぎ込みホーミング機能を強化し、2本の矢を運営プレイヤーに対して放った。


「ま、まて!私は運営だ。攻撃するな!」


 運営プレイヤーは、そう悲痛な声を叫ぶが、2本の矢が両プレイヤーに当たった。


「「ぎゃ!」」


 その2人の運営プレイヤーは叫び声を挙げて崩れ落ちた。この矢は、あるイベントでGETした貴重な矢で、当たった対象に対して、高確率でランダムに状態異常を付与するのだ。


 近くまで行って運営プレイヤーを鑑定すると片方は、麻痺、もう片方は毒の状態異常が発生しているようだ。俺は、近くに落ちていた矢を回収し、両手に持ち両プレイヤーに何度も突き刺す。致死ダメージを与えることは、できなかったが複数の状態異常が発生しており、ピクピクと生きる屍状態になっている。


 当分これで近くの運営プレイヤーに連絡することもできないに違いない。


・・・・・・・


 さらに隠蔽スキルを掛け直し、魂が抜けた状態の彼女を抱きあげ進んだ先で、さらに衝撃的な光景を目にすることとなった。


その衝撃的な光景とは・・・。


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