本当の後日談
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くそ、また何もかも失ってしまった。あのアップデートの裏側を知った俺が、トッププレイヤーの座に着き、俺に付き従ってくれる仲間を率いて作った戦闘専門ギルド『黄昏の騎士団』を立ち上げ、瞬く間にトップギルドに育て上げたまでは、よかったのだが・・・。
各国が戦争準備を始めるという行動を起したため、物資が高騰、戦闘専門のギルドであったことが祟り、一気に下位ギルドに抜かれた。
必要の無いプライドに凝り固まった俺達は、当時から頻繁にあった拡張アップデートに目をつけ、無償で資源を取り出せるアップデート中の略奪という手段で、再びトップギルドにのし上がったのだ。その後に始った戦争では、目覚しい功績を残した。
しかし、物資の値段が下がったときには、他の正式な手段での物資調達方法は、バカバカしくなり、本来、非常手段だった、アップデート中の略奪という方法が慣例化していった。
それで、今回の事故である。俺は盗賊スキルを持っていたため、真っ先にデストラップを解除しようとしたのだが、今回の件が運営の意向なのか?俺達の略奪行為に憤ったプレイヤーの仕業なのか・・・と、考え事に夢中になっているうちに解除に失敗し、死に戻った。
他のギルドプレイヤーには、アカウント削除されるからあのモザイクには、絶対触れるなと言いつけてあったはずなのに後で聞いた話だと全員がその場で首を掻っ切るなどの選択をせず、デストラップに飛び込むことを選択したため、ゴブリンの巣へのトラップにひっかかり、ゴブリンの巣の迷路を抜け出る間もなく、モザイクの襲来、アカウント削除されたらしい。
また、仲間だった鍛冶ギルド『和製スミス』の面々は、半分が死に戻り。それを見たプレイヤーが小屋に引き返してしまい。モザイクにより、アカウント削除されたらしい。
ギルドメンバーには、リアルの友達がいたが、今回の件で攻め立てられている。そりゃそうだ。何年の掛けて育ててきたキャラが、無くなってしまったわけだから・・・。
もう俺も引退する。いままで築きあげてきたもので、引き渡せるものは、全て鍛冶ギルド『和製スミス』へ差し入れた。一部引き渡せないプレイヤー固有の装備だけだ。
そんなとき、俺の引退を聞きつけてきたのだろう。このゲームのサービス開始当初からの友人がやってきた。
「すまない!まさか、君たちのようなトッププレイヤーが俺のような中堅プレイヤーの作ったトラップに引っ掛かるとは思わなかったんだ。」
彼があのトラップを作ったのだという。その理由を聞いた俺は、憤りも感じなかった。彼の言う通りだったからだ。さらに、引退もするなと引きとめられた。彼が言うには、後進を育てていくことも大切だというのだ。
だが、俺には何も残っていない。まさか、もう一度トッププレイヤーに返り咲けるだけの気力もない。そう、俺が言うと鍛冶ギルドから全てを取り戻した上で、運営のバックアップも保証してくれるという。
・・・・・・・
「貴様か、あそこにデストラップを置いたバカは。」
「そうですとも、略奪だけならまだしも使わない資材を独占状態で保管しておき、資材の足らない際に高く売りつける。そんな行為は、生産職から抹殺されるべき存在でしょう。だから、デストラップを仕掛けましたが・・・。いったい、どのような弁明をしていただけるのでしょうか?」
「どこにそんな証拠がある?言ってみろよ。」
「そうですね。これなんかどうです。」
おそらく、彼がギルドの代表者に送りつけた資料が、俺にも送られてくる。ギルドの倉庫利用状況だ。アップデートの度、鉱石と材木がハネ上がるようにグラフ化されており、さらに市場価格まで付加されている。
「いったい、お前、これを何処で?まさか・・・。」
「ええ、運営に手伝って頂きました。さらに、こんな映像もありますよ。」
その映像を見た瞬間、目を背ける。そこには、先日のアップデートの略奪行為の一部始終の動画だったからだ。まさに、自分がNPCといえ、なにも悪くない人に手に掛けている映像なのだ、気持ちよいはずがない。
まさに狂気に満ちた目をしている。映像は続き、鍛冶ギルドメンバーが鉱山から略奪を行い、その結果により、成果に不服なメンバーが木を切り出している映像がバッチリと移っていたのだ。
「な、何がほしい。なんでもやろう。金か、地位か、なんなら新素材の優先権でもいい。」
「なにもいりません。ただ、彼に全てを返してあげて、もうこんなことはしないと誓って頂けるだけでかまいません。」
「そんなことでいいのか?もちろん誓う、誓います。」
「ちなみに貴方と貴方の仲間が別のギルドに移っても、アップデート中のその足跡を監視するツールを運営に作って頂きましたので、もう一度、アップデート中にログイン状態だったことがあれば、公表させていただきますので、よろしくお願いします。」
「待ってくれ!アップデート対象外のエリアもダメなのか?」
「そうです。それくらいの罰で済んでよかったでしょう?協力してくれた運営は、即刻公表したうえで、アカウント削除だと憤っていましたけど。貴方達もプレイヤーでしょう。このゲームを楽しんでください。略奪なんて酷いことを行わないで・・・。」
「甘いな。はっ、辞めてやる。こんなゲームとは、おさらばだ。世の中には、VRゲームなんて、ごまんとあるんだぜ。そんな制限が掛かったゲームなんて、こちらからおことわりだぜ。」
「そうですか。残念です。では、これ以降あなたのDNA情報は、VR社のホストコンピュータから抹消させて頂き、ブラックリストに載せていただきます。以降、一切のVRへの接続が拒否されます。また、自動的にVR世界における貴方の資産は、抹消させていただきます。まあ、一部は、『黄昏の騎士団』に戻りますがね。」
「待って・・・・」
目の前から、『和製スミス』のギルドマスターだった人間が消えた。世の中のVRは、すべてVR社のホストコンピュータでDNAを管理されている。
彼は、これから一切のVRの利用を拒絶される。VRは、一部の企業でも一時的な就業時間の延長手段として使われていると聞く、ゲームのVRどころか、そういったVRにも接続できなくなるのだ。
「全くこれから、『和製スミス』のメンバーに繰り返し会わなくてはいけなくなりました。付き合っていただけますか?」
彼が悲しげな目をして、こちらを向いた。
目の前の彼が、純粋にこのゲームを愛していることは、解かっていた。今、俺が、『和製スミス』のギルドマスターように抹消されないのはなぜなのか?まあ、拒否するはずもない。
原因である俺が責任を取らなければ、ますます、彼が傷つく。
・・・・・・・
俺は、このあと後進を育てるに当たって、必ず始めに説明することがある。
それは、俺が初めて出遭った拡張アップデートにおいて、どのような困難を乗り越え、どんな犠牲を払ったかである。決して、拡張アップデートで利益を得ることではない。その顛末には、不幸な結果しか残っていないのだから。
この『黄昏の騎士団』のギルドマスターが主人公の物語が第2節となります。
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