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北方宗一の警察語り #23 これぞ対テロの草分け GSG‐9

さて、今回は歴史的部隊の話。

世界中の警察や憲兵隊、内務省軍に特殊部隊が存在します。

これら通称警察系特殊部隊の設立は戦前からの歴史があります。

禁酒法時代のアメリカにおけるマフィアや強盗対策の専従班や日本の警視庁の特別警備隊や警官突撃隊がそうです。これらの装備は当時の一般的な警察官と比べ物にならない重装備となっていました。しかし、どちらも現代の水準とはかけ離れた存在で、戦前の警視庁の特殊部隊に至っては防弾服と拳銃を装備しているという点だけで特殊部隊となっていました。

現代の警察特殊部隊のルーツは、とある苦い経験から生まれたドイツの特殊部隊GSG‐9です。


GSG‐9が設立されたのは1972年。

GSG‐9という名前は第9国境警備群という意味になります。

設立当時のドイツは冷戦期から現在の日本と同じように敗戦病とでもいうべき軍、警察組織に対するアレルギーが存在しました。特に特殊部隊はナチス時代の親衛隊を想起するという理由もあり設立ができませんでした。

しかし、現実の問題として日本と同じく赤色テロが横行し、、1972年にはミュンヘンオリンピックのさなかにパレスチナ過激派「黒い九月」がイスラエル代表選手団を人質にとり西ドイツ警察は何も出来ぬまま人質全員死亡という結果をもたらしてしまいます。

軍を自由に動かせるようにすべきではない、警察の装備品に強力なものを持たせるべきではないという価値観が蔓延する中、第三局として国境警備隊は東ドイツと真っ先に対抗することになるのもあって警察としての特性と軍の装備品を両立させうる機関でした。

西ドイツ政府はここで国境警備隊にGSG‐9を設立することを決めます。

世界の警察系特殊部隊の始祖が生まれたのです。


1977年10月13日、ダッカ日航機ハイジャック事件の半月ほど後、ルフトハンザ航空181便が西ドイツ赤軍の支援を受けたパレスチナ解放人民戦線の男女二人ずつのグループによってハイジャックされました。

乗員乗客を人質にして収監中の西ドイツ赤軍メンバーの釈放を要求しキプロスのラルナカ、バーレーン、ドバイ、オマーンのサラーラと中東を転々としましたが着陸を拒否され、南イエメンのアデンに針路を変更しここで燃料切れを理由に緊急着陸。この際機長がランディングギアの不調を確認するのと同時に現地当局に機内のセムテックス配置を通報し機へ戻るのが遅かったことを理由に離陸後乗客の目の前で射殺されます。

その後ソマリアのモガディシュ国際空港に着陸した機内でテロリストは釈放期限まで乗客に酒を飲ませて待っていました。

この時、西ドイツ政府ははテロリストに対し囚人をモガディシュに移送中としていましたが、実際にはGSG‐9を移動させていました。ソマリア政府の許可とイギリス陸軍のSASの作戦立案や機材の協力を受け『火炎魔法(フォイアツォバァ)』作戦が決行されます。

10月17日23時05分、SASの二人が新型閃光弾を投げ入れ、胴体下と主翼上の非常脱出口からMP5装備のGSG‐9隊員が突入しテロリスト三人を射殺、女一人を逮捕しました。

これがGSG‐9の華々しいデビュー戦です。


この事件がその後の世界中の特殊部隊にまったく新しい潮流を生みます。閃光弾は今ではフラッシュ・バンやスタン・グレネードと呼ばれる装備として世界中に普及し、MP5短機関銃は世界中の特殊部隊が購入しストックとハンドガード付きのクローズドボルト式短機関銃で拳銃弾を単発で撃つことで得られる精密射撃特性を存分に生かした既存の短機関銃とは全く違う運用が世界中で浸透しました。


さて、GSG‐9はモガディシュの奇跡とも言われる成功を見せたものの、その後は西ドイツ国内での対テロ作戦に従事します。多数のテロリストの逮捕を成功させました。彼らは基本的に警察であり国外派遣はまずありえませんでした。

しかし、大使館などの在外公館の警備はGSG‐9の仕事です。2004年にはイラク在外公館警備の任務で2名が殉職しています。


現在、国境警備隊は解隊され連邦警察に改組されました。しかし、GSG‐9は改名されませんでした。GSG‐9は誇りある名前として存続したのです。


GSG‐9の編成は7人編成の分隊5~6個で編成される35~42人の強襲部隊が4個、支援・情報・装備研究・補給・訓練を担当する部隊がサポートしています。

各分隊には狙撃・通信・監視・突入で分担しています。

装備品はMP5シリーズはもちろんG36K/CやHK416・417、SG551を装備しています。

また、軽機関銃も装備しています。

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