北方宗一の軍事語り #20 最悪の事態を縛りプレイで再現した最強部隊 Red Cell
アグレッサーという部隊は知っているでしょうか?
敵の役をする部隊のことです。
日本で有名なのは航空自衛隊の航空戦術教導団傘下となった飛行教導群、陸上自衛隊の富士教導団、少し変わり種だと航空自衛隊の基地警備隊や海上自衛隊の基地警備を担う陸警隊に対しての陸上自衛隊普通科がそうでしょう。
このような物の中で最もすごい部隊がアメリカに存在しました。
それがOP-06D Red Cellと呼ばれる部隊です。
Red Cellとは英語で「赤い細胞」つまりは「赤血球」転じて「過激派」という意味です。
彼らはさまざまな警備の状況を検査するため基地、重要拠点に対し浸透する敵役をするアグレッサーです。
さらに普通のアグレッサ―訓練と違い、彼らは完全な抜き打ち。無論、警備側からすれば普通の不審者でしかなく、相手の目的が侵入である以上射殺も辞さ無い姿勢です。
さらに言えばRed Cellは抜き打ち検査対象の施設の職員を傷つけてはならないため圧倒的に不利な状況です。
しかし彼らは各地の大使館、軍事基地、原子力潜水艦を含む艦船、そして大統領専用機エアフォースワンまで掌握してのけました。
この強さはどこから来るのでしょうか?
1980年代中盤にRed Cellを編成したのはSEALs所属の特殊部隊員の中でも選抜された最強クラスの12人です。
編制指揮をしたのはチーム6を作ったマルシンコ中佐。たった12人で厳重な警備を掻い潜り、拠点を制圧してしまうこの部隊は完全極秘の最強部隊となりました。
武器の扱いだけでなく地形の読みや知識の応用、相手の行動の推測などに長けた特殊部隊の精鋭ですが、これがのちに波乱を呼びます。
警備が軽々突破され続けたために「やりすぎ」の声が上がりRed Cellは解隊されます。またRed Cellの会計が正式に計上されておらず、チーム6の予算を流用していたという話もあります。
それ以前に検査をする側受ける側双方が疲弊する地獄の抜き打ち検査は問題が多すぎるというのもあります。Red Cellは毎度死を覚悟せねばならず、検査を受けた側は自分の時によりにもよって制圧され奪われた事実に心身共に消耗します。戦略原潜や核弾頭を保管している基地、エアフォースワンともなると国家の一大事です。このことからこの無謀な検査はなくなったとされます。
しかし近年、懸念したような事態が起こっています。2012年7月テネシー州オークリッジにある高濃縮ウラン貯蔵施設Y‐12国家安全保障複合施設に三人の活動家が侵入し人間の血をまき散らした事件が発生しました。メンバーは単なる一般市民で、一人は82歳の修道女だったと言います。
警備の甘さが露呈したこの事件はRed Cellによる検査もあながち間違いではなかったように思えます。
テロの時代である以上、今後このようなアグレッサーが重要になあってくるのかもしれません。